第49話 顕現!炎魔人!〜3
サーラ視点
「それってつまりあの場所に行ける方法があるって事ですか?」
そう言って海斗は魔法陣から出てきている
「あぁ、行ける。いや、行けるようにすると言った方が正しいか。」
「それってどういう…」
「まぁ見ていろ。特にサーラ、お前もこれが出来るようになれ。」
お母さんは両手を広げる。
「伸びよ空の遥か彼方に、我が願いに応えて伸びよ。」
そして言葉を紡ぎ出した。
「嘘っ!?まさかあれって!」
美香が声を上げる。
「絡まり芽吹く命の芽。命吹き込みし木々よ今ここに動き出さん。」
お母さんの言葉に合わせて魔法陣が描かれていく。
私はそれを食い入るように見つめている。
だって、あれはーー
「大地の力を持ってして、星の守護者を顕現させん!」
ズゴゴゴゴゴゴゴ…
大地から木々が伸びてくる。それは絡まりつつも伸びていき、そして一体の巨人が完成した。
「
あれはーー詠唱魔法。
一流の魔法使いが使う魔法の到達点。
「凄い…」
知らず、声が漏れていた。それ程の魔法だった。
「だろう?お前も目指すのだ。サーラ。」
お母さんは振り向き、ニヤリと笑って言った。
「さて、私の魔力が尽きる前に小僧を飛ばす。」
そして真面目な表情に戻って海斗を見た。
海斗は呆けた表情で巨人を見つめている。
「おい小僧!聞いているのか!?」
「あ!す、すいません!それでどうやってあの高さまで?」
「こうする。」
お母さんは指を振る。途端、巨人が動き出した。
巨人は手を広げる。
「ん?なんでこっちに手を?…ま…さかーー」
そしてムンズッと青ざめた海斗を掴み、空を見上げた。
「さぁ行ってこい。小僧!!!」
ブゥン!
そのまま海斗を投げ飛ばした。
「あああぁぁぁぁぁぁぁぁ……………」
海斗は飛んで行った。炎魔人に当たること無く、魔法陣を突き抜けて、更に上空へと。
「お、お母さん…?」
「………………物を投げるというのは難しいものだな。」
「お母さぁぁぁぁん!」
もう海斗は空の魔法陣の上に行き姿が見えなくなった。
私達は最悪の事態に陥ってしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
海斗視点
「あああぁぁぁぁぁ!!?」
余りの風圧に前が見えなくなり、口を開けば唇がめくれ上がって上手く喋れない。更に急な気圧の変化が耳鳴りを起こして音が何も聞こえない。
ようやく耳鳴りが消え、目が開けるようになった頃、気づけば俺は、空にいた。
あれ?前にもこんな事無かったっけ?
市原海斗、人生二度目のスカイダイビングである。
俺の体は落下を開始した。
「くぅ!?仕方ねぇ!このまま炎魔人をーー」
そして気づく、今の場所では炎魔人に届かない。
「………………ワォ。」
思わず英語が出てしまうくらいには、俺は動揺していた。
しかし動揺してばかりなんて居られない。何とかしてあそこまで行かねぇと…
考える。いつものように、このピンチをチャンスに変える為。
そして考えついたのことがーー
泳ぐ事だった。
具体的にいうと平泳ぎだ。空気を掻き分けて進むしかないと、俺の灰色の脳はそれしか考えられなかった。
「ふん!ふん!ふん!ふん!」
必死に手足を動かす。だがもちろんこのままでは届かない。
「くっそぉ!くそったれがぁぁぁぁ!!」
ダメだ…届かない…。ちくしょぉ、漫画みてぇに空気を蹴って空を飛べたら…
だが俺の体はそこまで凄くない。この世界に来てからどういうわけか高くなった身体能力も空気を蹴れるほどでは無いのだ。
意味も無く足を動かす。空気を蹴るようにして足を踏み出す。
スス…
え?
その瞬間、俺は自分の体が進んだ事を知覚した。
なんで?どうして動けたんだ?
もう一度足を踏み出す。だが今度は動かない。
なんでだ!?進めよ!漫画みてぇに空気を蹴って進ーー
ススス…
またしても動いた。ここに来て、俺は気づいた。
似ているのだ。感覚が、衝操流に。その中でも特に震脚に。
勘違いをしていた。俺の場合空気を踏むんじゃ無い、衝撃を放てば良いんだ。
俺は足を曲げる。そして足を踏み出すタイミングで衝撃を放ち、空気を蹴った。
体が一気に進む。俺は俺の予想が間違っていない事を理解した。
行ける!行けるぞ!これなら!
「衝操流、空脚!」
繰り返す。直線を描き、落下していた俺の体はここにきて曲線を描き出した。
そして炎魔人に突っ込んでいく。
炎魔人は既に出てきた口から今にも炎を吐き出そうとしていた。
「させるかよ!!」
空脚で加速した俺の体は魔法陣を突き抜ける。
俺はマジックハンドを発動させた。
「おおぉぉぉぉぉ!!食らいやがれ!」
急速に近づいてくる炎魔人の頭に、俺はーー
「
ズドンッ!!、
その拳を叩きつけた。
『ルォォォォォォォ!!?』
絶叫と共に、炎魔人の顔は吹き飛んだ。
「よ。よっしゃあ!これでーー」
カッ!!!
そして、吐き出そうとしていた炎と残った身体が爆発する。
爆発は近くにいる俺を呑み込んだ。
俺の視界は、真っ白に染まった。
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