第48話 顕現!炎魔人!〜2
「「「
俺たちの足元に展開していた魔法陣が強く輝く。
そこから樹木が出現する。樹木は俺たちを凄まじい勢いで押し上げた。
ズドドドドドドドッ!!
ぐぅっ!?なんつーGだ!?
想像以上のGが俺たちを襲った。
俺たちは上へ上へと登って行く。
「ぐぅぅぅぅぅぅぅ!」
「あぐぅぅぅぅぅぅ!」
「くぅぅぅぅぅぅぅ!」
ドドドドドドドドドォォォ
しばらく樹木は伸び続ける。だが突然、樹木は停止した。高さの限界に達したのだ。
その結果上に乗っていた俺たちは宙へと投げ出される。
今だ!
「火野さぁぁぁぁぁぁん!!」
まだ炎魔人へは距離がある。だから2つ目のブーストを頼んだ。
「頼んだわよ!2人とも!
作戦の第2段階、火野さんの魔法によるブーストだ。
メイアねぇさんはその籠手を巨大化し、俺と自らを乗せる。
瞬間、魔法が炸裂した。
ドォォォォォォ………
音すらも置き去りに、またしても襲いくる強烈なGに耐えながら俺たちは更に上空へと飛んで行った。
そして遂に、炎魔人まであと少しのところまで辿り着いた。だがここで急速に減速しだす。
このままならば届かずに終わるだろう、しかし俺にはまだ手段があった。
「メイアねぇさん!思いっきり頼む!」
作戦の第3段階、エルフ3人組の第1ブーストから火野さんの炎魔法による第2ブースト、そこから繋げるメイアねぇさんの拳による第3ブーストだ。
「おう!ぶっ飛べぇぇぇぇ!!」
ブゥン
巨大化した籠手が振り抜かれる。
俺はその籠手が伸びきるタイミングに合わせて震脚を使った。
俺の体は宙へと投げ出され、それでも勢い良く飛んで行く。炎魔人の元まで飛んで行く。
届く!届くぞ!
右手を振り抜く、そこにマジックハンドを集中させた。
エルフ達の樹木魔法で空へと飛ばし、そこから火野さんの炎魔法を使う。メイアねぇさんの籠手を盾がわりとして使い、その爆風を持ってイフリートの元まで一直線。それでも尚届かなかったらメイアねぇさんの拳で殴り飛ばしてもらい、俺が炎魔人をぶん殴る!
それが作戦名ーー
「
俺の拳が炎魔人の手に当たる。
っ!?硬ぇ!?
炎魔人は予想よりも遥かに固く、容易にはぶち抜けない。どころか段々と体にかかるGが少なくなっていく。それはつまり拳の威力も少なくなっていくことと同義だ。
ここまで…なのか…?サーラに、村長エルフに、隊長エルフ、翔太に、火野さんに、メイアねぇさん。みんなが協力してくれた。なのに、どうする事も出来ないのか?
俺の体にかかるGが急速に無くなっていく。
まだだ!考えろ!考えるんだ!このままだと落ちるぞ、何とかして見せろ俺!
「う、おおおおぉぉぉぉ!!」
曲げていた腕を伸ばす。伝わった力が僅かに炎魔人の硬さを超えて押し込み出す。
だが、そこでフッとGは無くなり、俺の体は落下を始めた。こうなってはどうする事も出来なかった。
俺は、失敗した。
くそっ!くそがぁ!
「くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ーーーーーーーーー
サーラ視点
彼は飛んでいく。何も関係が無いのにこの村を守る為に飛んでいく。そして炎魔人の元へと辿り着いた。
彼の提案した作戦は成功したみたいだ。
「お母さん、上手くいったね。」
お母さんに話しかける。
だけど、お母さんは険しい顔をして口を開いた。
「サーラ、避難しろ。」
「え?海斗は辿り着いたよ?」
「よく見ろ、威力が弱すぎる。」
ハッとした。確かに彼は炎魔人の元に辿り着いた。だけどそれ以上進んでいない、威力が足りないんだ。
「そんな…この村を、捨てるしか無いの…?」
私は俯く。
「
ビィィィッ
海斗の仲間の1人、翔太が網を張り、2人目の墜落者を受け止めた。木々に巻きつけた糸の擦れる音が聞こえる。
「っ!?海斗!」
2人目の墜落者のメイアが上を見上げて叫んだ。
釣られて私も上を見る。上空では威力が足りなかったのか海斗が落ちていた。
あぁ、やっぱり無理なんだ…
流石にこれは無理だろう、私は諦めてーー
「美香!もう一発打てねぇか!?」
「ごめんなさい…もう、魔力が…」
なんで…?なんでメイアはまだやる気なの?
疑問に思った私は思い切ってメイアに聞く。
「ねぇ、もう無理でしょ?なんでまだやろうとしてーー」
「海斗がっ!海斗が諦めてねぇんだぞ!?オレたちが先に諦めんのか!?」
言われて上を見た。
「っ!」
海斗はまだ手を伸ばしていた。落ちながら、それでも尚、手を伸ばしていた。
ふと、海斗の言葉が思い出される。
『仲間が守りたいって言ってんだ。俺が逃げる訳ねぇだろ?』
まさか、海斗はその為にこのプレッシャーの中、まだ諦めていないっていうの?
視界がぼやける。彼の姿が上手く見えないや。
「私…だって…」
「サーラ、小僧の力になりたいか?」
「なり…たい……、でもっ!」
お母さんが聞いてきたが分かっている、今の私に出来ることなんてないって事は。
「あぁ、今のお前では力にはなれないだろうな。だから、よく見ておけ。今回は我がやる。」
「っ!?それってーー」
私は驚いてお母さんを見た。
「いいかサーラ。いつか、お前はここまで来い。楽しみにしているぞ?」
お母さんは歩き出す。その足は軽やかに、それでも力強く、海斗の落下地点まで歩いて行く。
「糸蜘蛛の巣!」
ビィィィィィ
「うおっ!?すまん翔太、助かった!」
丁度その時、海斗が落ちてきた。
「っと!そうだ!火野さん!もう一発ーー」
「その必要は無い。我に任せよ。」
海斗の言葉を遮り、お母さんが言う。
「我が、より強く飛ばしてやる。」
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