第46話 邪魔
バチィッ
俺は宙を舞う。助ける為に伸ばしたこの手は赤い光に阻まれ俺を弾き飛ばした。
地面に倒れた俺は、そのまま呆然とした。
届かなかった。助けられなかった。薬は今の衝撃で割れ、中身が溢れてしまった。もう、助けることは出来ない…
「か…と。海斗!聞いてんのか海斗!」
ハッとした。絶叫に近い声を上げながら俺を呼ぶ、メイアねぇさんの声に止まった思考が動き出す。
「あ…メイアねぇさん、どうしたの?」
「いつまで下向いてんだ!?空を見ろ!」
言われるがまま空を見る。
そして理解した。
空には魔法陣が現れていたのだ。
しまった!あの魔法陣はまさかーー
「精霊…召喚…」
魔法陣は空に昇る赤い光の柱から描かれていっているようだ。赤い光の柱は一定の間隔離れた所で立ち昇り、その数は見たところ10存在した。それが意味するのは、やはり精霊召喚の魔法に他ならない。
そして俺の目の前にもその赤い光の柱は立ち昇っている。炎のレッタのいる場所だ。
「海斗、彼女はもう死んだ。今はあれを何とかしなくちゃなんねぇ。分かってんだろ?」
あぁ、そうだ、そうだよ!分かってんだよ!でも俺がせめて気絶させていれば、炎のレッタは死なずに済んだかもしれない!精霊召喚が発動しなかったかもしれない!
俺は後悔した。俺の甘い考えが今の事態を招いたから。
「海斗、海斗。こっち向きなよ海斗。」
「翔…太?」
翔太が俺の肩を叩き、声をかけて来る。あまり関わって欲しくなかったが翔太の方を向きーー
バキィ!
…は?な、殴られた?
俺は殴られた、結構な強さだった。
「海斗、いつまでウジウジとしてんだよ?現実はそんなに甘くない、今だって精霊召喚の魔法陣が完成しそうだよ。
悩むのは後にしろよ!僕等はあの魔法を止めるためにここに来てんだ!お前ならここで悩み続けるのとあれをなんとかするの、どちらが正解か分かってんだろ!」
「翔太…。そうだな。ありがとうよ。」
あぁ、そうだ。今はあれを何とかしなくちゃなんねぇよな。
俺は立ち上がる。そしてマジックハンドを発動した。
「まずは炎のレッタの赤い光の柱を壊してみよう。それで無理だったら空の魔法陣を。」
「了解。」
「任せろ!」
「私も手伝うわよ?」
「ん。私も。」
いつのまにか来ていたらしい火野さんとサーラも手伝ってくれるらしい。
「よし!まずは俺が行く!」
震脚を使い、炎のレッタの光の柱へと跳ぶ。
俺は右手を引きしぼり、直撃に合わせて殴ろうとーー
「海斗!避けろ!」
そこでメイアねぇさんの声が聞こえた。
ドスゥッ
そして俺は、空へと弾き飛ばされた。
「海斗!!」
地面に魔法陣が現れ、俺の突撃したタイミングに合わせて俺を突き上げたのだ。
だが俺は大したダメージを受けてはいない。攻撃に気づき、流衝で衝撃を流したからだ。
「
落ちる前に翔太が作ったネットに落下する。俺の身体はフワリと受け止められた。
「翔太、助かった!」
「大丈夫、それよりもあいつら!」
翔太達は2人のエルフを睨みつける。先程のエルフ至上主義のエルフ、こいつらがやったのだ。他のエルフは別の光の柱の対処に行ったのか、居なくなっていた。
「お前ら!突然何しやがる!?」
「嫌だなぁ。我等はただ援護をしようとしただけですよ?」
こいつら…
少しも詫びれる気のないその姿に苛立つ。いや、最初から狙っていたのだろう。
とにかく今はあんな奴らに構っている場合じゃない。
俺は地面に降り、もう一度突っ込んだ。
だが、またしても地面に魔法陣が現れ、そこから現れた樹木が俺を突き上げようと伸びて来る。俺はその樹木をマジックハンドで殴った。
バキバキッ!
樹木は粉砕された。俺は更に前に進もうとして、足を止めた。
地面からまだいくつもの魔法陣が現れ、そこから伸びて来た樹木が俺の道を塞いで行く。
「お前らぁぁぁぁぁ!!今がどういう状況か分かってんのか!?」
「黙れ人間、これは我等が止めるのだ。見ていろ、これが至高の力!
馬鹿エルフの魔法が発動し、地面から樹の槍が伸びて赤い光の柱に突き刺さる。
前に粉々に砕けていった。
「な!?なんだあの光は!?我等の樹木槍が破壊されただと!?」
赤い光の柱には妙な力でも働いているのか近づいたものが砕け散るようだ。
くそっ!これじゃあ俺も近づけば砕かれるかもしんねぇ…
だが不安に思ったその時、メイアねぇさんの声が聞こえた。
「海斗!安心しろ!いける!」
「おう!」
メイアねぇさんが言うんなら大丈夫だ。あの人の直感が外れる事はねぇ!
俺は目の前の樹木を粉砕し続ける。
「くそっ!止まれ人間!あれは我等がーー」
「発衝!」
馬鹿エルフがまたしても俺の邪魔をしようとしたその時、メイアねぇさんがそいつに発衝を叩き込んだ。
そのエルフは吹き飛び、気絶する。
「な!?貴様よくも!」
「僕等の邪魔しないでよ。」
ビィィィ
もう1人のエルフがメイアねぇさんを攻撃しようとしたその時、追いついた翔太が首元に短剣を当てる。
「海斗、やれ!」
「任せろぉぉぉぉ!」
バキィッ!バキィッ!バキバキィッ!
邪魔が入らなくなった所で次々と樹木を粉砕し、ようやく破壊し尽くした。
「これで!止まれぇぇぇ!」
遂に見えた光の柱へとマジックハンドを発動した拳を叩きつける。
だが俺の拳は、宙を切った。
「………………は?」
なんだ?なんで当たらなかった?そういえば光の柱はどこに…
そこでようやく気づく、俺が殴ろうとしていた赤い光の柱が無いことに。
地面には炎のレッタが倒れている。だが彼女には赤い光が無い。
俺は上を見上げた。
「…………………あ。」
空の巨大な魔法陣は、完成していた。
俺たちは間に合わなかったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます