第45話 さようなら、優しい人
「精霊召喚で呼び出そうとしているのは
炎魔人、それは大精霊などの一角として、様々な作品に登場する。話によるとその体は燃え盛り、高い戦闘能力を有している。
だが問題はそこじゃない。
「炎魔人を召喚して何をする気なんだ?」
「分からないの?私は差別されているっていうのは知ってるでしょ?だからーー」
そこまで言って炎のレッタはその瞳を見開いて、憎しみに染まった目でこちらを、いや、後ろのエルフ達を睨みつけた。
「お前らの!居場所を無くしてやる!」
それは恐ろしいまでの憎しみ。俺たちには理解できないような強い強い憎しみ。
「お前らのせいで、母が死んだ!お前らが人間と結婚して子供を産んだ母を、父を愛していた母を!お前らが迫害さえしなければ!母は自殺なんてしようとは思わなかった!」
「だったらなんだと言うんだ!そもそも人間と結婚しただと?我らエルフの恥晒しではないか!」
さっきの奴とはまた別のエルフが声を張り上げた。
最低だ。自分達を志向の存在とでも思っているのだろうか?
その時そのエルフに近くにいたエルフが声をかける。
「おい!何言ってんだ馬鹿!エルフ至上主義だなんて古い考えを持ってんじゃねぇ!」
「古い考えだと!?正しき考えだ!今まで見た他の種族で我らよりも優れた種はいなかっただろう!」
「そっそれは…」
「皆だって分かっているだろう?我らこそが至高の存在だと!現に人族は我らより短命で実力も無く特別な目も持っていないでは無いか!」
そのエルフは否定されない事に調子づいたのか更に声を張り上げる。
その上、少しずつではあるが賛同の声が増えてきた。
「そうだ!我らは至高の存在だろう!そもそもあの異世界人も何故我らと対等に接しているのだ!?首輪でもつけーー」
ドゴォ!!
そのエルフがこちらに話の矛先を向けようとしたその時、顔面を槍が打ち飛ばした。
やったのは村長エルフに指揮を預かっていた隊長エルフだ。
「この若造どもが!外の世界を見てないというのによくもまぁそこまでの大口が叩けたなぁ!」
その威圧感に先程まで調子づいていたエルフ達が黙る。
「ふ、ふふふ。そうよね、その通りよ。」
その瞬間、炎のレッタが喋り出した。
俺たちの注意は彼女に向く。
「隊長さん。貴方の言っていることは何も間違っていないわ。そこの馬鹿共はこの平和な村でぬくぬくと育ったせいでそこまで増長した…だから、私が!外の世界を教えてあげる!」
なんだ?彼女は一体何を言ってーー
そこまで考えた時、炎のレッタが何かを噛み砕く動作をした。
ゴフッ! ベチャベチャ…
そしてその口から大量の血を吐いた。
俺は何をしたか理解した。彼女は、毒を飲んだんだ。
「あんた一体何をして!?毒を飲んで死ぬ気か!?」
「いいえ…ゴフッ! 完成させる…のよ。魔法を。言ったでしょう?精霊召喚は…10の生贄が必要…だって。そしてここまで
「
「えぇ、そうよ…犯人は元は3人いた。だけど1人はバレそうにゴフッ…なった時に生贄になったわ。そしてもう一箇所であいつも…ゴホッ。ここまで言ったら分かるでしょう?ゴフッゴホッゴホッ!私が最後の…生贄よ。」
ビチャビチャと血を吐きながら炎のレッタは事件の真相を話す。
思ったよりも今の状況はまずい…
「火野さん!火野さんの異能で炎のレッタの毒を治してやってくれ!」
「分かったわ!不死鳥の魂!」
炎のレッタが炎に包まれる。これでーー
ゴフッ!ゴホッ!ベチャベチャ
「そんな!?治せない…」
だが毒は治らない。止まることのない血反吐に俺は焦る。
どうすれば…
「人間!解毒薬だ!そいつに飲ましてやれ!」
一人のエルフが俺に向かって瓶を投げ渡す。どうやら念のため持っていたらしい。
「翔太!糸を!」
「了解。」
ビィィ
受け取った俺はすぐさま翔太に糸の拘束を外させた。あったままでは近くのに時間がかかるからだ。
張り巡らされた糸が無くなるのを見てすぐさま震脚を使おうとする。
この薬で助けられる!
俺が助けられると思った時、炎のレッタは立ち上がり、俺に目線を向ける。
「もう、間に合わないわ。さようなら、優しい人…そして……ティ……ス…さん……」
足に全力で力を込める。衝撃を操り、足から放つ。俺は震脚を使って跳んだ。
「間に…合えぇぇぇぇぇ!!」
だが俺の手が届くよりも早く、炎のレッタは崩れ落ち赤い光に包まれた。
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