第44話 激突!炎のレッタ!

 さて、炎のレッタが俺から離れたとはいえ、その距離はそこまで遠くはない。火野さんのお陰で魔法発動より早く攻撃出来る位置まで接近した為だ。


 だが問題はどのようにして彼女を説得するかだ。


「炎のレッタ!あんたはどうして精霊召喚を行おうとしている!?」

「どうでもいいでしょ!?知りたいのなら私を止めてみなさいよ!」


 駄目だ…興奮しているのか話が聞けない…仕方がない、何とかして拘束してから話を聞こう。


「だけどどうする?俺は基本打撃主体だし…どうやって拘束すれば良い?」

「海斗、僕なら彼女を拘束できるよ?」

「本当か?なら頼む。」


 どうすれば彼女を拘束できるかボソボソと呟きながら考えていた時に、それが聞こえたのか翔太が拘束できると言う。

 俺はすぐさま頼んだ。


「ただちょっと時間がかかる。その間彼女の相手をしてほしい。出来る?」

「上等!メイアねぇさん!」

「任せろ!」


 翔太は透明化で消えた。

 俺たちは彼女に突っ込んで行く。少しでも隙があればまたさっきの大量の火球が来るかもしれないからだ。


 火野さんはさっきの魔法で魔力が減ったせいか疲れている。そう何発も打てるとは考えない方がいいだろう。


「近づかせるわけないでしょう!火炎陣!」

「またさっきのか!マジックハンド!」

「おい海斗待て!」


 炎のレッタはさっきと同じ様に自分の周囲に炎の柱を出す。俺も同じ様にマジックハンドでぶち抜いた。


「火球!」


 だがその瞬間、目の前に火球が迫っていた。俺がぶち抜くのを見越して放っていたのだろう。


「しまった!ぐぅ!?」


 即座にマジックハンドで防いだものの、体勢が崩れていた為に容易に押し負けた。

 俺は火炎陣の外へと弾き飛ばされる。そして体勢を立て直し、火球を上空へ弾き飛ばした。


「大丈夫か!?」


 メイアねぇさんが出てきた俺を心配する。


「問題ない。でも、どうやってあれを抜けるか…」


 俺自身は問題無かった。だが、あの炎の柱を突破するにはどうすればいいか分からなくなってしまった。


「取り敢えず横からぶち抜いてみたらどうだ?」

「メイアねぇさんの直感は行けるって?」

「…いや、難しそうだ。」


 他に方法は?……取り敢えず横から行ってみるか?


 メイアねぇさんの超直感は無理らしいが、取り敢えず試してみるしかない。


「瞬身!からのマジックハンド!」


 瞬身で炎の柱の側面に跳び、そのままマジックハンドで突っ込む。


 ボゥッ


 だが抜けた瞬間、火球が飛んできた。

 先程と同じ様に弾き飛ばされる。


「くそ!やっぱ駄目か!」


 どうする?どうすれば良い?どうすればあの炎を…


「私が道を作る。乗って!樹空道ジ・ドーラ!」


 突破する方法が分からず、悩んでいたその時に、サーラがやってきた。

 サーラが魔法を使った途端、俺たちの足元に魔法陣が現れる。そこから樹が伸びて、俺たちを上空へと突き上げた。


「サーラめ!無茶苦茶しやがってぇぇぇぇ!」


 俺たちは10メートルもの炎の柱を飛び越える。そのまま炎のレッタの元へと飛び込んで行った。


「な!?上から!?っ火球!デュアル!」


 それに気づいた炎のレッタは、その両手に魔法陣を形成。俺たちに火球を放った。


「メイアねぇさん!俺が対処する!だからあの技を!」

「分かった!頼んだぜ!」


 俺はマジックハンドで2つの火球を掴んだ。そしてその瞬間に一瞬の拮抗状態が生まれる。そのまま空中で一回転。俺の後ろにいたメイアねぇさんにぶつからない様に回避したのだ。


 メイアねぇさんはそのまま突っ込む。そしてーー


揺震ゆしん!」


 軽く炎のレッタの体を


「あぐっぅ!?」


 すると炎のレッタが作り出していた炎の柱が消滅する。


 揺震は衝操流の技の1つで、衝撃を体の中へと流し留める事で、一時的に相手の体を麻痺に近い状態へと変える技だ。

 これを受けた炎のレッタは、体が動かず、集中が途切れた為に、魔法が消えてしまったのだ。


 俺は2つの火球を上空に跳ね上げ、地面へと降りた。


「く…そ…、食らえ火ーー」


 それと同時に、炎のレッタは魔法陣を作り出す。それはメイアねぇさんに向いており、そこから火球がーー


 ギィィィィィ


「な!?」


 打ち出される前に、妙な音と共に炎のレッタの体が引っ張られ、空中に固定された。


「残念だけど、それはやらせないよ。」


 それを成したのは、翔太だ。

 翔太は普段短剣を使い戦うが、その短剣には細い糸が付いており、今の様に張り巡らせて、罠として使うのだ。


「このっ!火ーー」


 ギィッ


「ぐっ!?」


 またしても魔法陣を作り、火球を放とうとした炎のレッタだが、その瞬間に翔太が手元の短剣を引く。すると炎のレッタを拘束している糸が動き、関節を曲げる。それによって集中が途切れ、魔法陣が霧散した。


「炎のレッタ、これであんたを止めた。約束通り何をする気か話して貰うぞ。」

「…まさか、本当に傷つけずに拘束されるなんてね…良いわ、話してあげる。」


 そう言って炎のレッタはポツポツと話し始めた。

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