第41話 犯人は…
向こうから人が、いやこの場合はエルフが歩いてくる。
そいつは何を食っているのか分からないがエルフにしては大分ガタイが良かった。
徐々に近づいてきてそのガタイの良さが分かる。
うわっデケェ!190はあるんじゃねぇかこれ?
ガタイの良いエルフは額に汗を浮かべながら俺の前に立った。
必然、俺は見上げる形になる。
「おぉ!何という力だ!一目で分かったぞ!君が化け物ーー」
「やめて下さい!海斗君は化け物じゃありません。海斗君は海斗君です。」
久しぶりに化け物と呼ばれかけたのだが、冷たい目をした火野さんがそれを止めた。っていうかこのエルフ声デカッ!むしろうるせぇ!
「っ!?す、すまない!それで海斗君、君達は付いて来てくれ!隊長の私が先導する!」
「はい。よろしくお願いします。」
村長エルフは兵を付けてくれると言っていたが、正確には俺たちが付いていく形になるだろう。
何せ俺たちはエルフの村をよく知らないのだから。
「……………。化け物と呼んですまなかった。」
「ど、どうしたんです?突然?」
「いや何、随分と礼儀正しいのだな、とな。」
成る程、どうやら俺の態度を見て俺を力だけで恐れ、中身は見ていなかった事に気付いたらしい。
隊長エルフは律儀にも謝ってきた。好感度アップである。
「おーい!おーい!」
ん?誰かが叫びながらこっちに向かってくる。誰だ?
「おーい!翔太〜!ワイやで〜!」
「っ!ユー!?」
翔太がそいつの元に向かう。どうやら知り合いの様だ。
「そうか。ユーもこっちの配属なんだ。」
「そや、翔太と一緒に行動できて嬉しいで。っと、そちらさんは?」
「あぁ、こいつは昨日話した僕の友達の海斗。」
「なんと!?兄ちゃんが翔太がゆうとった男の敵って奴やな。にしてもおっそろしい程の力やなぁ…」
翔太の知り合いらしいユーと言われた警備兵らしきエルフは、やはり俺の力の大きさに驚いた。
というかこいつ今なんつった?翔太が言っていた男の敵?
「翔太。男の敵ってどうゆう意味が教えてもらっていい?」
「………………だってハーレムじゃね?」
翔太は小さな声で何かを言い残し、透明化を使って消えた。
あ、あいつぅぅぅぅ!!見つけたらどういう意味が聞き出してやる!
「ほいでこっちの杖持ってんのが火野っちゅう子やな?
は〜、聞いてた通りツンデレって感じやな。」
「はぁ!?私がツンデレ!?ちょっと柊君!どこ行ったの!?」
火野さんも不本意な説明だったらしい。
まぁ俺個人としてはあまり間違ってはいないと思う。
「ちゅうことはそこのねぇちゃんはメイアって子やね?成る程、姉御って感じや。」
「お、おう。そうか。まぁそうだな!確かにオレは姉御だな!」
メイアねぇさんの評価は本人の不満が無いようだった。
「その反面、押されると酷く弱く、その様は面白いって聞いとる。ちょっと見てみたいなぁ。」
「あの野郎!どこ行きやがった!」
と思いきや、やはりそういう評価が下された。
メイアねぇさんは真っ赤になって怒り狂った。
「んで、お嬢ちゃんは?ワイはお嬢ちゃんの事聞いとらへん。」
「ん、それは仕方がない。私はサーラ、村長の娘。」
「へぇぇぇ。村長の娘……村長の娘!?こ、これは申し訳ない…せやけどなんでここに?」
「私も行くから。」
「それはアカンです!今回の件は危険や!子供が首を突っ込んでえぇもんじゃあらへん。」
「私は子供じゃない。」
「ワイからしたら子供なんや!」
「じゃあ海斗達は?なんで海斗達は良いの?」
「そ、それは…」
ユーという男はチラチラとこちらに視線を向けてくるが、俺は行かないという選択肢は無いという思いを目線で知らせる。
ユーという男はしばらくこちらを縋るように見ていたが、俺の目が変わらないのを見ると諦めたように嘆息した。最も実際に諦めたのだろう。
「…………ふー、しゃあない。隊長も止める気があらへんようやし、ワイからは何も言わへんよ。ただ気をつけぇな、生き物なんて簡単に死ぬ。」
「うん。気遣ってくれてありがとう。」
「えぇ、ユーさん?こちらでも気をつけます。」
「ならえぇ。ワイの事はユーでええよ。翔太ー、この件が終わった時、生きて会おうな?」
ユーさんは虚空を見つめて話しかける。
何してんだ?
その理由はすぐに分かった。虚空から翔太が現れたのだ。
「そうだね、生きて会おう。でもなんで僕の居場所が?」
「エルフには翡翠眼っちゅう魔眼があるんやで。力を見る事が出来るんや。それ、異能やろ?エルフには丸見えやから気をつけぇ。」
「…マジか。嫌になるね。」
そうか、翔太はあの時居なかったから翡翠眼について知らないのか。
しかし翔太の異能がエルフ相手だと無力とかヤバイな…
ただそれも大変な事だが、それよりも今姿を現したのはもっと大変だ。
ガシッ
「ようやく現れたね?柊君。」
「なぁ翔太、色々話を聞かせてくれよ?」
「オレの事がなんだって?えぇ?」
今、翔太は絶対絶命の危機に陥った。
「しまった…ユー、お前なんて事をしてくれたんだ…」
「ま、自業自得やな?ほな、また会おう!」
ユーさんはそのまま立ち去り、多くのエルフの中に消えてしまった。
「ま、待って!マズイって!このままじゃ僕殺される!」
「よ〜く、話を聞かせて貰おうかな?」
「ひぃ!? あ!あんな所にドラゴンが!」
「「な!何!?」」
バッと俺とメイアねぇさんが後ろを振り向く。だかドラゴンの姿はどこにも無い。
その隙に翔太は事情聴取の為の手をはたき飛ばす、火野さんの手は体を回して外し、透明化して逃げ去った。
騙された!?くそっ!今度はぜってぇ逃さねぇ。
「君たち、準備は出来たかな?」
「えぇ、準備出来ました。」
「よし!これより出発する!」
俺たちはこの事件を止めるため、次のエルフが殺されると予想された場所へ急いだ。
〜〜〜〜〜
「ここか?」
俺たちは目的の場所に辿り着いた。
「確かにここの筈だが…誰も居ないな?」
「た、隊長!あれを!」
兵の1人が指差す方向を向くと、そこには1人の人影があった。
その人影に俺たちは近づいて行く。
「っ!?海斗!危ねぇ!」
だがその瞬間に聞こえたメイアねぇさんの声に反射的に従い横に跳ぶ。
ドスッ
そしてさっきまで俺の立っていたところに一本の矢が突き刺さった。
「ちぃ!まさか避けられるなんてね…」
どういう事だ!?何故後ろから?
「隊長!これは人影ではありません!黒い布を被せた人形です!」
そういう事か!危なかった…メイアねぇさんがいなきゃ死んでたな…
「何者だ!?」
「まさかこんなに来るとはね…まぁ1人でも殺せればそれで良いわ!」
俺に矢を放ってきたその人物は、その姿を現した。
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