第36話 取引中
まずはこの黒マントをどうするか…
黒マントは綺麗な物と血濡れたもので合計11枚あった。
「だけど一体なんで11枚あるんだ?」
疑問だ。村長エルフが言うには殺されたエルフには共通点が無かった。なのに殺されたという事は無差別の可能性が高い。だがそれにしてはこの11枚という数の中途半端さが分からない。
「………取り敢えず村長エルフのとこに持ってくか…」
俺は全てのマントを持ち去り、小屋を去った。
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翔太視点
うっは〜、薄暗いなぁ…
僕は今、人気ならぬエルフ気のない所を巡っている。犯人が潜伏しているかも知れないからだ。
「……るな!…が……て!」
「だと…す…は、テメェ……ね!」
なんだ?誰かが言い争っている?
僕は声の聞こえた方へ向かう。もちろん透明化は発動したままだ。
近づくにつれ、だんだんと声がよく聞こえてくる。
「テメェ、いい加減にしろよ!金のねぇ奴に渡す訳ねぇだろうが!」
「お願いします…それが無いと、落ち着かないんです…」
男と女、聞こえてくる声はこの2人だけだ。
隠れる必要はないが、影からこっそり覗く。
そこには男のエルフが手に持った袋を女のエルフが必死に取ろうとしている光景が見えた。
これは…麻薬の取引か何かかな?
「やぁやぁ、君たちぃ。こんな所で何してんのかな?」
奥の通路から間延びした声が聞こえてくる。誰だ?
「なんだテメェは?」
「ワイですかい?ワイはただの警備兵でさぁ。」
「嘘っ!?警備兵がなんでこんな所に!?」
警備兵、この村の警察みたいな役割かな?
「さーて、お二人さん。麻薬の取引に見えるんだけど、話を聞かせて貰おうかなぁ?」
「んだとぉ!ぶっ殺ーー」
男のエルフが手を前に出し、魔法陣を作り出した瞬間に、警備兵のエルフは即座に近づき男のエルフの腹に手に持った槍を叩き込む。
「ぐっ!?ガハッ!」
そのまま続けて槍を首に叩きつけ、昏倒させた。
「そこなお嬢ちゃん。ワイと一緒に警備所に来てもらうで。」
「ヒッ!?」
女のエルフは男のエルフを一瞬で気絶させた警備兵エルフが近づいて来て、腰を抜かす。
「酷いなぁ、ワイは別に乱暴にしようとか思ってへんよ。」
「さっきの見たら誰でも怖がると思うけど?」
「そうかい?せやかて他に方法が分からんかったし…って誰や!?」
ノリがいいのか今更になって気づいたのか、警備兵のエルフが驚く。
「僕は柊 翔太、最近この村に来た人間の旅人だよ。」
「…人間の旅人?そういやぁ最近人間が4人この村に来たって聞いたなぁ。」
「僕はその1人だね。」
「ほんまに?」
「うん。」
なんとも胡散臭気に見てくるものだ。まぁ僕でも突然人が現れたらびっくりすると思うけど…
「まぁええ、そんで人間のお前さんがなんでこんなエルフ気のない所に?」
「いやぁ、実は黒マントってのを探してるんだ。もしかしたらこういった所にいるかも知れないしね。」
「黒マントを!?やけどワイ等警備兵が探し回っても手掛かり一つ見つからんかったんやで?」
「うん、それでも何か見つからないかなぁとね。それよりもそこの女エルフ、逃げ出そうとしてるけどいいの?」
「へ?しもた!お嬢ちゃん逃げへんでや!」
警備兵エルフはすぐさま女のエルフに追いつき、逃げられないようにした。
だがその姿は襲いかかっているようにしか見えない。
「わー、大変だー。女性に襲いかかっているエルフがいるー。」
「冗談でもやめい!シャレにならんわ!」
「いやぁ、つい。」
「つい、で済ますなや!下手したらワイ使ってたかも知れんからな!」
とてもノリの良いエルフだ、からかうのが楽しい。
「そう言えばあんた名前なんて言うの?」
「ん?言っとらんかったか…、ワイはユーティウスっちゅーもんやで。」
「呼びづらい、めんどくさいからユーって呼ぶ。」
「そんなに早く略称つけられるとは思わんかったわ…」
「草生えるww。」
「あ、あの…逃げませんから一度離して下さい…」
しまった、すっかり女のエルフの事を忘れていた。
だがまぁ、離す筈が無いだろう。何せ信用が出来ない。
「しゃあないなぁ、逃げへんでくれーー」
「すいません!ありがとうございます!」
タッタッタッタ!
嘘でしょ…離すか普通…
「しもた!?騙された!」
「馬鹿でしょ?笑えないんだけど。とにかく今は追いかけるよ。」
今は怒っている場合じゃない。あの女エルフ逃げ出す時にあの袋を持って行った。どんな物が入ってんのか知らないけど直ぐにでも取り返さないとろくな事にならないだろう。
「いた!こっちや!」
ユーがどうやら逃げた女エルフを見つけたようだ。
居た。このままなら追いつける。
だがそう思った瞬間、女エルフはこちらを少し振り向き、両手を向けて来た。
なんだ?
女エルフの手に魔法陣が現れる。
「まさかあの女エルフ、僕等を攻撃するつもりか!?」
「翔太!ワイの後ろへ!」
僕はすぐさま方向転換し、ユーの後ろへと飛んだ。
攻撃が、来る!
「
「種火!デュアル!」
ユーは盾を作ろうとしたようだが、女エルフは両手に種火を発動し、ブーストの要領で僕等から逃げた。
「やられた…まさか炎のレッタやったか…」
「炎のレッタ?あの女エルフの事?」
「そや、炎のレッタはエルフだっちゃうんに樹木魔法が使えへんらしい。代わりに炎の魔法が天才的らしいけどな?」
「ふ〜ん。」
炎のレッタ、一応後で海斗に伝えとこうかな。
今は取り敢えず、見つけ出そう。
だがしかし、その後僕等はあの女エルフを見つける事が出来なかった。
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海斗視点
俺は村長エルフの所に来ていた。
「で、村長さん。これがその黒マントです。」
今日の捜査の結果を報告しに来たのだ。
「あぁ、ありがとう。まさか1日で手掛かりを発見するとは…助かったよ。後で案内して貰えるか?」
「えぇ、分かりました。」
「……………もう一つ、頼まれてくれるか?」
「なんです?」
この村長エルフが頼み事とは…一体どんな厄介ごとだ?
「明日は捜査はしなくていい、ただ我が娘の相手をしてやってくれないか?」
「まぁ、それくらいなら…でも村長さんの娘ってどんな子なのですか?」
「お前はもう会っている。」
「会っている?あ!サーラちゃんですか!?」
「そうだ、ただサーラちゃんと呼んでいるようだが、あれはお前より歳上だぞ。」
「マジですか…」
そんなこんなで、明日はサーラちゃん、もといサーラさんの相手をする事になった。
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