第21話 衝操流

「あっぶね!?」

「ほれ、もう少し機敏に動きなさい。力が入り過ぎとるぞ。」


 俺は今、爺さんの攻撃を避け続けていた。


「動きが硬い!ほれそこじゃ!」

「グガハッ!?」


 自分で選んだ道だとはいえこれはちょっと、辛い…


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 時は遡る事20分前。


 爺さんに連れられ、着いた先は道場だった。


「お前さんには…ふむ?お前さん名前はなんというんじゃ?」

「今聞きますか…、俺は市原海斗。こっちは…」

「僕は柊翔太、覚えといてよ〜。」

「私は火野美香、よろしく。」

「成る程、海斗君と、美香ちゃんと、それと…え〜っと、すまんなんじゃったっけ?」


 翔太は崩れ落ちた。相当響いたようだ。


「僕は柊翔太…はっ、はは。どうせ僕なんて…」


 もう一度名乗ってから透明化を使ったようで見えなくなった。そんな事をしているから影が薄いって言われんのに…


「さて、ここに連れて来たのは他でも無い。儂の弟子とならんか?と、聞くためじゃ。」

「そういえば爺さん、あん時もそんな事を言ってたな?」

「そうじゃよ。海斗君はセンスがあると思ったからの。何より、お前さんは拳主体で戦うじゃろう?しかしその技術がない。儂なら教えられるぞ?」


 この爺さん、あの一瞬でそこまで分かったって言うのかよ…

 こいつは…受けるべきか…


「私はあなたの好きにすれば良いと思うわ。」

「火野さん…ありがとう。」

「別に!私が勝手に言ったんだからお礼なんて要らないわ!」


 まさか火野さんに背中を押されるとは…

 だがお陰で決心がついた。


「爺さん…いえ、ノア師匠!俺を弟子にして下さい!戦う技術を、生き残る術を教えて下さい!お願いします!」


 そう言って俺は頭を下げた。


「よかろう!その意気やよし!儂の技術、衝操流しょうそうりゅうを教えよう!」

「よろしくお願いします!」

「さて、早速修行と行きたいところじゃが…美香ちゃん、あ〜、翔太君。君達もどうじゃね?」


 2人も弟子にしてくれるようだ。有り難い。


「すいません、僕は短剣で戦いたいので。」

「私も魔法で戦いたいので遠慮しておきます。」


 だが、2人は俺の予想に反して弟子になるつもりは無いようだった。


「ほっほ、そうかそうか。2人は既に自分がどう戦うかを見据えているようじゃな。どれ、儂がその道のものに話をつけといてやろう。」

「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!」

「爺さん有難う。」


 マジか…ここまでやってくれるとは、この人相当いい人だな。


 俺が爺さん…いや、ノア師匠の人の良さに驚愕していると、ノア師匠が話しかけて来た。


「まずお前さんに教えとかなくてはならん奴がおる。」

「教えとかなくちゃならない奴?」

「そうじゃ、お前の姉弟子、そこのさっきお前さんに飛び蹴りをかました奴じゃよ。」


 そう言って指差した方向にはさっきの女がいる。


「ま…まさか…。」

「おう!そのまさかだ。よろしくな!弟弟子。」

「こんな危険な奴がぇ!?」

「オレ名前はメイアだ!口の利き方に気をつけろよ?お、と、う、と、で、し。」


 言葉を発すると同時に殴られた。


 痛って〜!やっぱこの女危険だ…。


「仲が良さそうで何より。さて、では早速修行を開始するかの。」

「え!?もうすか!?」

「もうじゃよ。最初はどんなもんか知る必要があるからの。実戦形式で行くぞい。」

「うぇ!?ちょ!待っーー」


 そうして冒頭に至る。


 くっそ!ノア師匠はえぇ!体力が…


「ほれ、動きが鈍ってきたぞよ。そこじゃ。」


 そしてノア師匠は掌底を繰り出してくる。瞬間、背筋に悪寒が走った。

 悪寒を感じると同時に全力で回避に移るが、ノア師匠の方が早かった。


撃掌げきしょう!」


 ドゴッ!


 ノア師匠の掌底は俺の体に当たり、その体からは考えられない威力で俺を吹き飛ばし壁に叩きつけた。


「ガハッ!?」


 くっそ!なんつー威力だ!何発も食らえねぇ!


「ほう?意識があるか。頑丈じゃの。ならばまだまだ行くぞい。」


 続けて繰り出してきたノア師匠の掌底を全力で転がり、避ける。


「ほっほ、反撃しなくてええのかの?」


 ノア師匠が挑発をしてくる。


「やってやりますよ…ここで諦めたら、俺は強くならねぇ!ぜってぇ一発、当ててやる!」

「その意気じゃ!行くぞ!撃掌!」


 まともにやってノア師匠に当てやれる気がしない。ならばまともにやらなければいい!


「うぉぉぉっぐがぁ!」


 またしても俺の体にノア師匠の掌底が当たる、だか同時に俺も拳を繰り出した。


 人は攻撃が決まれば油断する。今しかない!


「ぬおっ!?」


 だがノア師匠は反対の手で俺の拳をいなした。俺の渾身の一撃は通じなく、後は吹き飛ばされるだけだった。


 ドゴッ!


 またしても壁に叩きつけられた俺はもう一度立ち上がろうとするものの、倒れ伏し、意識を失った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る