第22話 ギャップ萌え

「知らない天井だ…」

「それ言う必要あった?」

「ああ、翔太。居たのか。」

「ちょ!?その言い方止めろよ!僕本気で傷つくかんな!」


 目が覚めてから横に居た翔太を早速からかう。


「さてと、ノア師匠のとこに行こうかな?」

「ほっほ、その必要はないの。」

「ノア師匠!」


 まさかノア師匠が来てくれるとは…


「あ〜、僕はお師匠のとこに行ってくるから、じゃ。」


 海斗は俺が起きるのを待っていたのか師匠のところに行くという。

 …………………師匠!?


「しょ、翔太!師匠ってどういう事だ!?」

「海斗が気絶している間にノア爺さんから紹介して貰ったんだよ。」


 そうだったのか…


 そして翔太は部屋を出て行った。

 俺はノア師匠に向き直る。


「すいません。宣言したのに一発も当てられませんでした…」

「何、当たらなくて良かったくらいじゃよ。」

「へ?それはどういう…」


 当たらなくて良かった?意味がわからない。そう言えばノア師匠はあの時、なんで俺の拳を流したんだ?


 俺はふと先程の戦いを思い出した。

 あの時ノア師匠は俺の拳を受けたところで痛くないだろうに何故か流したのだ。


「もしも当たっていればついうっかり海斗を殺してしまっていたわい。」

「はっはは、ご冗談を。」

「ほっほ、冗談じゃ無いがの。海斗があんな手を使ってくるとは思わなかったからびっくりしたわい。ほっほっほっほ。」


 そう言ってノア師匠は笑っていたが俺は全く笑えない。もしも当たっていればついうっかりで殺されるって酷すぎる…


「しかし、どうして当たっていたら俺が死ぬので?」

「ふむ、それにはまず衝操流がどう言うものかを説明せねばならんの。」


 そしてノア師匠は衝操流という武術を説明し始めた。


「そもそも衝操流とは何かというとな、その名の通り衝撃を操ることにある。」

「衝撃を、操る?そんな事が出来るんですか?」

「うむ、現に儂がやっとるだろう?」


 確かに…でなければ説明出来ない。


 ノア師匠の説明は続く。


「そして問題だったのは儂が撃掌を打ち込んでいた時に海斗が攻撃してきたのが問題だったのじゃ。」

「それは一体……」

「よいか?撃掌は当てた相手と自分自身の衝撃を集め、掌底に合わせる技じゃ。つまり…」

「ああ!俺の拳の衝撃も俺に返ってくると!」

「うむ。そうなれば海斗が死んでしまう可能性があったからの。」

「そうでしたか…それはすいません。」


 いやぁ、危なかった。もしノア師匠が流してくれなかったら死んでいたかも…


「何、海斗が頑張った結果じゃの。修行は天の核3時からじゃ。今は飯を食うぞい。」

「了解です。あ!そう言えば、火野さんと翔太は?」

「儂の信頼できる知り合いに頼んだわい。その道の人間じゃから師匠としては問題ないの。」


 そうか。あの2人も師匠が出来たのか…

 よし!あの2人に負けねぇように強くなんなきゃな!


「ノア師匠!俺!頑張ります!」

「うむ。じゃが、腹が減っては力が入らん。飯を食ってからじゃ。」


 そうして俺たちはリビングに向かう。

 ふと俺は一つの疑問が浮かんだ。


「あれ?そういえばノア師匠。ご飯は俺が作るんですよね?あんまり自信無いっすよ。」

「な訳が無かろう。最初から料理ができるとは思っとらんよ。」

「え?じゃあ一体誰が…」

「オレだよ!お前にその内、料理の仕方教えてやっから覚えろよ。」


 は!?ま、まさか!


「メイア!?」

「メイアねぇさんと呼べ!弟弟子!」

「ノア師匠!メイアは…メイアねぇさんは料理が出来るんですか!?」

「あぁ!?どういう意味だテメェ!飯作ってやんねぇぞ!」

「ほっほ、メイアの料理は美味いぞよ。」


 信じらんねぇ…如何にさはもガサツってタイプなのに…


「おいコラ!今なんか失礼な事考えたろ!もうお前は飯抜きだ!」

「え!?なんで分かって…じゃない!ま、待って!考えてないから!」


「本当かよ?」


 そう言って怪訝な顔でしばらく俺の顔を見つめてきた。

 流石に飯抜きにされるのは困るので苦笑いで返す。


「………………………」

「………………………」


 信じてもらえなくて飯抜きにされるのはキツイ…


 俺の頰に冷や汗が流れた。


「まぁいい、今回は信じてやる。」


 ようやく視線を逸らし。料理を机に置いた。


 意外にも料理は美味そうだ。


「食わねぇのか?」

「あ、いや、食う食う。頂きます!」

「おう。」


 まずは一口、見た目だけは良い可能性も考え少量を口に入れる。


「………美味い。」


 美味い、思っていたよりも凄く美味かった。


「だろ?そう言って貰えると作った甲斐があるよ。」


 そう言って浮かべた笑顔に俺は固まった。


「…………………」

「おい、どうした?」

「え!?いや、何でもない!」


 俺は止めていた手を動かして食べ進めた。








 ギャップ萌えって本当にあるんだなぁ。

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