第16話 ただ の 屍 の 様だ

俺たちは遺跡を進んで行く。

俺はあれからも何度か落下していた。どういうわけか他の人は落ちる気配がない。意味不明だ。


「………ふー、これは大丈夫そうだ…」


「海斗は何でそんなに落ちるのさ?」


「知るか!?俺だって落ちたくないわ!」


歩いて行くうちに、だんだんと落ちる石の法則性が分かってきた。

まず一つ、石は小さい事。

そして二つ、常に足裏が全て付いている事。

そして三つ、俺が乗る事だった。


何でだよ!?

何の嫌がらせだ!俺だけしか落ちないって!まぁ、この法則性が分かった以上、でかい浮遊石に乗れば良いだけだな。


大きめの浮遊石に足を乗せ、空の道を進む。

暫く進むとひとりでに動く浮遊石が大量にあった。しかしこれは…


「エスカレーター?」


そう。エスカレーターの様な動きをしているのだ、下へと向かって螺旋状に動いている。

驚きの光景だが、それよりも俺の意識は別の場所に向いていた。


あれ?動いてる浮遊石、小さくね?


不味い、非常に不味い事態だ。浮遊石が小さいという事は俺が乗れないという事だ。つまり俺は遺跡の下へと向かえない…


「そ…そんな…どうすれば…」


「あ〜、海斗…一つ、案がある。」


「え!?何?どんな?何でもするぜ!」


この時の発言を、俺は少し後に後悔した。




〜〜〜〜〜〜




今、俺はエスカレーターの浮遊石に乗っている、死んだ目で…


「お、おい。海斗?大丈夫か?」


「あぁ、すまん。お前も恥ずかしいだろうに…」


「まぁ、多少は恥ずかしいが…」


俺は健二の案のお陰でエスカレーターの浮遊石に乗れた。だが、その格好が問題だ。

健二の案は簡単な案だった。三つの条件を満たしたその方法は、誰かにおぶられる事だった。

その結果、俺は健二におぶられている。


恥ずかしい!他の奴らがこっちを見て笑っている気がする!


恥ずかしい思いをしながら、俺たちは下に降りて行った。



〜〜〜〜〜〜



暫くたって、下が見えてきた。


「おい!下見ろよ!めっちゃ綺麗だぜ!」


誰かが言ったので下を覗き込む。

そこには暗闇の中、目に痛くない程度の光が点々と輝いていた。


「凄い…星空みたい…」

「火野さんって意外とロマンチストなんだな?」


火野がロマンチックな事を言っていたのでついからかってしまう。

そして案の定…


「な!?何聞いてんの!?気持ち悪いんだけど!」


ドン!


「あ!」 「へ?」 「やば!」


俺は押された、そして俺をおぶっていた健二も反動で押される。


そのまま落下した。


「うぁぁぁぁぁぁ!!」

「またかぁぁぁぁ!!」


流石に学習していた俺は落ちる寸前で浮遊石を掴む。そして健二を足で掴み、ぶら下がった状態になった。


危なかった!流石に注意しといて良かった!てか、手が痛い!2人分の体重は流石にキツい…


「お…い!健二!何とか上に登れ!」


返事が無い。


あれ?嘘でしょ!?


健二は気絶していた。落ちた衝撃で意識が飛んだ様だ。


健二 の 返事 が ない ただの 屍 の ようだ。


「健二ぃぃぃぃぃぃぃ!!」





〜〜〜〜〜〜




俺たちはその後、段を降りてきた翔太と火野に助けられた…


「ご、ごめんなさい…こんな目に合わすつもりじゃなかったの…」

「あぁ、いや、俺が煽ったからこうなったんだし。気にすることは無いよ。」

「取り敢えず海斗、お前は俺に謝れ。」

「あ、健二。起きたんだ。ごめんごめん。」

「軽いな!?こっちは死にかけたんだけど!?…はぁ、まぁいいや。もう少しで下に着くから準備しとけ。」

「ほいよ。…あれ?健二、お前もしかしてチビッ――」

「海斗、それ以上言ったら、二度と覚めない眠りにつかすぞ?それとそんな事はなかったかんな?」


「……ご、ごめんなさい」


一瞬冗談かと思ったが目が笑ってなかったので素直に謝る。


結局、真相は分からなかった。



すぐ後、俺たちは下に到着した。

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