第15話 俺…異世界に来て

「すっげぇ!」


まさか霧を抜けた先にこんな遺跡があろうとは…


「どうする?取り敢えず中に入ってみるか?」

「勿論、入る!」

「海斗…目がキラッキラしてんなぁ…」


遺跡!何があるんだろう?太古のお宝?それとも特殊な魔道具?とにかく行こう!今すぐに!


「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「あ!おい!海斗待て!先に行くな!」

「フハハハハ!我が混沌の運命が我をここに連れてきたか!良いだろう!その運命をねじ伏せてやろう!」

「建野!?お前もか!」


俺と建野が先行して遺跡に入っていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

健二視点


「全くあいつらは…」


そういえば海斗は厨二病だった。建野に至っては何言ってんのかわかんねぇし…


「取り敢えず行こう。」


俺たちは先に行った2人の後に続いて遺跡へと入って行った。




「あれ?2人とも何してんの?」


2人が入ってしばらくの所で立ち止まっている。


「………………………」

「………………………」


返事が無い。


「返事が無い、ただの屍のようだ。」

「翔太!言いそうだと思ってたけど言うなよ!縁起でも無い。」

「そりゃあ悪…い…」


翔太が先に進みながら謝っているのだが、突然言葉が止まる。

海斗達が立ち止まっている所で止まった。


「おい!どうした!?何がっ!」


3人に駆け寄りそして見た。


「すっげ…」


そこには、まさしくファンタジーの世界が広がっていた。


空に浮かぶ石の地面、発光し浮かぶ小さな球体、壁を走る不思議な模様。


神秘的だった。それこそ言葉を失ってしまうほどに…


みんなが立ち止まる、この神秘的な光景に目を奪われている。


海斗に至っては、泣いていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

海斗視点


すげぇ、すげぇよ。

俺は別に異世界になんて行きたくはなかった。飯は味薄いし、トイレはすごい不便だし、力が無ければ奪われるだけだし、でも、今この時だけは…


「俺、異世界に来て良かった…」


そう、思える。




〜〜〜〜〜〜




このまま動かないでいては何も始まらないので行動を開始する。


「取り敢えず進もうぜ。」

「あぁ、そうだな。」

「海斗泣いてんのかよ?草ww」

「はぁ?泣いてねぇし!これはただのヨダレだし!」

「ヨダレって汚いなおい!」


健二が頷き、翔太が茶化す。いつも通りだ。

調子を取り戻した俺は浮かぶ石に飛び乗った。


お!そうだ!こういう時は…


「さぁ、みんな!冒険の始まりだ!」


そして俺は次の石へと足を踏み出し、




落ちた。


「ぎゃぁぁぁぁ!?」




ドスン!




「…大丈夫か?海斗?」

「な…何とか…」


危なかった…まさか石が落ちるとは…

下に他の浮遊石があって良かった…


「ブッ!クフフッフフ」 「あははは!あっはっは!」 「あ!ヤベッお腹痛い!ウヒッヒヒハハハ」 「ダッセー!海斗メッチャダセェ!」


上から笑い声が聞こえてくる…


もうやだ…死にたくなって来た…何だよ、キメ顔した後でこのザマは酷い…


俺は泣いた…密かに、そして静かに泣いた…





かくして、俺たちの遺跡攻略は開始した。

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