第14話 かなしみーのー

「…………………………は?」


 駄目だ、理解が追いつかない。一体この娘は何を言っているのだろう…


「あ…あの、どうかしましたか?」

「いや、待って!どうかしてんのは俺なの!?」


 どうなってる!?この世界ではこういうのは普通なのか?


 取り敢えず、事情を説明して貰おうとする。


「えっと、アーリアちゃんはだっけ?は、なんでこんな事を?」

「それは勿論、貴方様にこの村に住んでほしいからです。」


 この村に住んでほしいから?まてよ、そう言えばラノベで強い人間に村娘をあてがって村に住んで貰うって感じの話があったな…

 つまり何か?俺が狩った訳でもない黒猪を見て、俺が狩れる程の強者だと思った訳か…








 不味い!非常に不味いぞ!俺はそんなに強くない!どちらかというと落ちこぼれだ。つまりここはやんわりと断るべき!


「えっと、すみませんね。お断りします。それにアーリアさんだって俺みたいなやつの妻にはなりたくないでしょう?」

「そうですけど、そういう訳にもいかないのです。なんだか最近、王都の方から魔物が多く出てくる様になって…それで魔物と戦える人が必要なのです!」


「………………………………」


 俺は青くなった。何せ最近になって魔物が多くなってきたというのは王城方面、つまりかなりの確率で俺たちのせいと、そういうことになる。


「えっ…と、本当に悪いんだけどごめんね。ほんと…色々と…。

 じゃ、じゃあね!」


「あっ!待って下さい!」


 扉の前に居座っているアーリアさんを軽く押し退け、村長宅を飛び出す。


 くそう!意外とタイプだったんだけどなぁー、アーリアちゃん。ただあの娘、俺のこと眼中に無いみたいだったし………………………チクショォォォォォ!!


 そうして、俺は全速力で村を出た。



 〜〜〜〜〜〜



「あれ!?海斗?どうしたんだよ、こんな夜中に…」

「あぁ、ごめん…しくじった…」


 取り敢えずクラスメートの元に戻ってきた俺はみんなに事情を話す。


「そうか…なら仕方がない。」


 健二が言う。


「はぁはぁ、僕を置いていかないでよ。」


 しまった、翔太を置いてきていた。


「なんて奴だよ全く、いくら貴方は好きじゃないけど仕方ないので夫になってもらいたいって言われたからってさ、普通友達置いてくか?」

「ぐふっ!」


 翔太の一言で俺の傷付いた心にトドメが刺された。


「お…おい、可哀想だろ…やめてやれよ。」

「うるせー!可哀想とか言うなよ!虚しくなってくんだろ!」

「あ…あぁ、ごめん。」


 これ以上続けると俺が立ち直れなくなりそうなので話を終わらせる。


「とにかく!もうこの村には立ち寄れない!だから次は村の後方、あの岩山を超える!また旅の始まりだ!」

「なんかヤケクソだな…

 ま、了解した。それじゃ、行こうか!」


 健二が了解し、俺たちは翌日の朝に岩山へと向かった。


 借りてた服どうしよう…借りパクしてきちまった…


 〜〜〜〜〜〜




 ガラッ


 足元の崖が若干崩れた。


「怖えぇぇぇ…」


 クラスメートの男子から声が聞こえる。

 確かにこれは怖い、落ちたらヤバそうだ。


「落ちるなよ、絶対に落ちるなよ。フリじゃないからな?」

「こんなとこ、落ちんのは海斗くらいだろ。」

「何おぅ!翔太テメェ、そりゃどういう意味だぎゃぁぁぁぁ!」

「海斗ぉぉぉぉ!!」


 後ろを向いて文句を言ったせいか足を滑らした。だが落ちる寸前で健二が手を掴んでくれた。


「助かった…ありがと。」

「お前はどうして普段はこんなにも馬鹿なんだ…」

「何だと!?健二ぃ!お前まで馬鹿にする気か!ぶん殴ってやる!」

「落とされたいのならどうぞ。」

「………ごめんなさい。」


 危なかった。健二に殺されるところだった…


 引き上げてもらって、また歩き出す。


「でさ、その時のエルフの王女はこう言った訳よ。「いついかなる時も、貴方が私を想ってくれるならば、私は貴方と共にに生きましょう。」ってさ!いやぁ、もう最高だよね!カッコかわいいよな!

 んでよ、そしたら主人公が、って…ん?なんだこの霧?」


 ラノベの話を健二と翔太に聞かせていると突如、霧が立ち込めてきた。


「みんな!取り敢えずいつでも戦えるようにしといて!」


 ただの霧にしては不自然だったので皆に注意を促す。

 俺もマジックハンドを発動させた。途端霧に触れるようになった。


「っ!みんな!これは魔法で作られた霧だ!一旦集まって!」


 この霧が魔法で作られたものだと気づいた俺はみんなを集める。

 そして、霧を退けていく。マジックハンドを発動させた手を振れば結構な量の霧が吹き飛んでいく。


 何だ?何も起こらない?


 警戒しながら俺たちは進み続けた。そして15分程が経った頃、突然霧が晴れた。



 そこには人工的だか、最近作られたものではない。つまり古代のものと思われる遺跡があったのだ。

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