第13話 森を抜けたその先で
あれから3日、遂に俺たちは森を抜けた。
「よっしゃぁー!遂に森を抜けたぞー!」
長かった…あれからまたしても黒猪に襲われた。あの野郎…三頭で俺を追いかけやがってぇ!健二がいなきゃ死んでたぞ!
お陰でその日の昼食と夕食は満足だったが、本当に酷い目にあったものだ…
「海斗、あれ見ろ!」
健二が指差した方向へ視線を向けた。そこには村があった。
「やった!村だ!」 「ちゃんとした食べ物食べたいわねー。」 「情報を得たいな。」
口々にクラスメートが希望を言う。
だが、俺たちには重大な問題があった。
「分かってないのもいるみたいだから言うけど、俺たち金ないぜ。」
静まり返った。それでも疑問があるのだろう。宮本が聞いてくる。
「今ある食料を売れば分けて貰えるんじゃないか?」
「その可能性もあるけど、俺たち、すっげぇ怪しいぜ。」
「いや、買って貰える可能性も…」
「ないよ。俺たちは30人もいるんだ。ラノベなんかじゃ、盗賊に襲われた、だとかスリに盗まれただとかが常套句だけど、まさか30人全員が盗まれたって言うのはおかしいし、襲われたにしても黒猪なんかを狩れる奴等だ、何にもしないで資金だけ差し出すなんて真似をする筈がない。
あるとしたら、俺たちこそが盗賊、又はスリの集団に間違われる事だと思う。」
そう、問題は俺達が30人もいる事だ。1人ならまだしも30人も居ると何が起こるか分からない。
ならば出来ることは…
「翔太、透明化を使って俺について来てくれ。」
「りょーかい。でも海斗が行くの?健二とかが行った方が良くない?なんかあった時のために…」
「それも考えたんだけど、もし魔力の量が分かる道具とか人とかがいたら魔法を発動出来るくらいの魔力を持っているって知ったら警戒されるかもしれないし、何より奴隷の首輪があった場合が怖い。」
「奴隷の首輪?」
「うん、ラノベなんかじゃ主人公が美少女の奴隷を手に入れる際にどういうわけか絶対服従だとか逃げようとしたら爆発するだとか、そういう効果の首輪を美少女奴隷が自らつけたり、購入した時に奴隷商につけられたりするんだけど、そういうものがあんの。」
「はぁ!?やばいじゃん!どうすんの!?」
「まぁ、恐らく無いとは思うけど…最悪マジックハンドで干渉出来ると思うし、操られてお前等を攻撃しに行っても無傷で動きを止めてくれると思うしね。」
「なんで無いと思うのさ?」
「まず第一に、そんな物があったら好き放題する輩で溢れかえるだろうし。何よりも、奴隷の首輪は大抵高価だ。あまり大きくも無いこの村にあるとは思えない。だけどなんかあった時のために翔太にはついてきてもらいたい。」
「成る程、分かったよ。」
そうして、俺たちは村の入り口まで行った。
「む!?なんだお前達は?」
「どうも、旅のものです。実は金銭をスられてしまい…どうかこれを買って貰えないでしょうか?」
そう言って森で狩った、黒猪の毛皮を渡す。
「う〜ん、ちょっと中入れ。」
門番の男は少し悩んだ後、そう言って俺を村へ入れてくれた。
「村長!旅のもんが黒猪の毛皮を買ってくれないかって〜!」
「なんじゃと!?旅のお方、少しお待ちくだされ。」
何かの準備でもしていたのだろう。結構なじーさんが一軒の家から出て来た。
「して、旅のお方、黒猪の毛皮を買って欲しいと?」
「えぇ、スリにあってしまい、現在無一文なのですよ。」
「それは災難でしたな、しかし黒猪の毛皮なんて高い物を買うお金など私の家も、村も無いのです…」
「そうですか…これは失礼しました。」
「お詫びと言っては何ですが、一晩泊まっていってはいかがでしょう?」
「よろしいので!?いやぁ、本当に有難い。」
何と一晩泊めてくれるという。何て優しい人なのだろうか…
俺はお言葉に甘える事にした。
〜〜〜〜〜〜
月の核二時にて
「言われた通り、みんなに伝えて来たよ。」
「ありがと、翔太。あー、ベッドも食事もクラスメートといた方が快適だったっていうね…」
そうなのだ、色々やってもらって何様のつもりだという感じだが、建野の部屋創造のベッドの方が寝心地がいいし、料理本で見たせいか、食事もあちらの方が美味かった。
「翔太、お前ベットで寝る?」
「嫌だ、ゴワゴワして寝辛そう。僕みんなのとこで寝る。っていうかその服どしたの?」
「これか?村長さんに借りたんだよ。流石にいつまでも上半身裸は嫌だしね。
そんじゃ俺は寝るわ、お休み〜。」
「りょ。また明日、お休み。」
翔太の姿が消える。
コンコン!
とそこで部屋の扉が叩かれた。
誰だ?村長さんだろうか?取り敢えず入室の許可を出す。
「どうぞー」
「失礼致します。」
そう言って入って来たのは、素朴な感じで結構可愛いく、体に布を巻いた、俺と同じくらいかちょっと下くらいの1人の女子だった。
「どうも、夜分遅くに失礼致します。村長、おじいちゃんの孫のアーリアです。今夜はよろしくお願いします。」
「………………………はい?」
勿論、俺の方から出たのはそんな言葉だけだった。
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