第12話 未だ一行は森の中
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
俺は走っていた。森の中、木々の間を通り抜け、後ろから迫る脅威から逃げていた。
バキバキバキッ!!
脅威が木々をなぎ倒し、その姿を現した。
『ブゴォォォォォ!!』
猪だ、地球では見た事がない、体は真っ黒で目は赤く光っている。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
追いつかれたら殺される。強靭な牙で貫かれるかもしれない。車に轢かれるように吹き飛ばされるかもしれない。生きたまま丸呑みにされるかもしれない。そんな想像が頭をよぎる。
「誰かぁ!ハァーハァー、助げでくれぇぇぇゔぇっほ!」
もう息が切れてきて、咳き込んでしまう。やべぇ、足が動かなくなってきた…
『ブゴォォォォォ!!』
「飛閃!」
『ブギィ!?』
ドォォォォン!!
横から飛んできた光の刃が黒猪を切った。
健二が助けに来てくれたらしい。
「はぁー、何やってんだよ海斗…」
「ゼーゼー、た…助がった…ゼーハァー、死ぬかど思っだ…ハァーハァー。ありがとう…。」
何とか乱れた息を整える。疲れたので横になった。
「で?一体何がどうなってこうなってんだ?」
「ハァーハァー、ハァーーー、ふう、いやさ、この黒猪が倒れてたからさ、食料にしようと思ったんだけど、まさか寝ていただけとは…」
「いや、先ずは死んでるかどうか確認しようぜ…」
まぁ確かにその通りだ、何も言い返せない。
取り敢えずこの場は黒猪を引きずって帰ることにした。
俺たちは食料班担当だ。森に入ってからいくつかの班に分けた。
1つ目は料理班、その名の通り料理を作る担当だ。
2つ目は探索班、周囲を探索し、危険がないかを調べる。
3つ目は俺たち食料班、食べられるものを見つけ、それを持って帰ってくる。俺は料理を作らなく、探索なんて出来ないので食料班に来た。
だが結果、今のザマである。
「次は気をつけろよな…」
「りょーかい、おっ!あれ見ろよ!デケェ亀だ!鍋にして食おう!」
「おい!馬鹿待て!」
健二の声が聞こえたが、亀に注意する必要はないと、亀の下まで行く。
「亀ちゃーん、大人しく鍋になってねー」
俺は自分でもどうかという気持ち悪い声を出し、亀を掴んだ。亀は暴れ、鳴き声をあげる。と、そこでーー
ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
「な!?何だ!?」
地面が…揺れている!?地震か!
あまりの揺れに立って居られない。そして突如地面が盛り上がった。
俺は盛り上がった地面を転がり落ちていく。
痛てて…何だってんだ、一体。
盛り上がった地面を見る。
そこには周りの木々に匹敵する様な高い亀が居た。
『アァァァァァァァ!!」
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」
亀と俺が同時に叫んだ。
冗談だろ!?まさかあの亀、この大亀の子供かなんかか!?
亀が逃げた俺を追って来たので、取り敢えず健二に助けを求める。
「健二ぃぃぃぃ!!助けてぇぇぇぇ!!」
プライドも何も無く、無様に助けを乞う。
「はぁー、ほんっとうに次は気をつけろよ?」
「分かった!今度は下手に近づかない!だから助けぇぇぇ!!」
「亀には悪いがっ!飛閃!食料になってもらうよ。」
健二が飛閃を飛ばし、亀に迫る。飛閃は亀に直撃し…僅かな傷をつけただけで弾かれた。
「………………………………」
「………………………………」
「………………………………え?」
「………………………………逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
健二が叫ぶ。
俺たちはしばし止めていた足を全力で回し、走った。
「クッソ!何なんだよ、あの大亀はぁ!」
「知るか!お前が呼び起こしたんだから何とかしろ!」
「お前助けてくれるんじゃねぇのかよ!」
「あんなもん無理だ!飛閃が効かねぇもん!どうしろって言うんだ!?」
押し問答を続けているうちに大亀が距離を詰めてくる。
「ハァーハァー、海斗ぉ!覚悟決めて戦うってお前速えな!?」
「アハーハッハ、火事場の馬鹿力だ!ハァーハァー、健二、掴まれ!」
戦う覚悟を決めた健二だったが、俺が一気に速度を上げたので驚く。
速度を上げた俺は健二の手を掴み、さらに速度上げた。
〜〜〜〜〜〜
「ゼーハァー、ゔぇっ、ゴホッゴホッ!ハァーハァー、な…何とか、助かったな…」
「ハァーハァー、危ながっだ…ハァー、流石に死ぬ…ちょっと休憩…」
あの大亀から何とか逃げ切った俺たちは木の陰で休んでいた。
「しっかし、何だったんだろうな?あの大亀?」
「あれじゃない?災害級魔物とかいうの。」
「ばっか、あれが災害級だったら俺たち死んでるっつうの。」
「確かにな、そうすっと超級とか?」
「かもな」
「そしたらレーゼさんはどんくらいだろ?」
「大亀が超級だとしたらレーゼは多分倒せると思う。」
おそらくレーゼならいけるだろう。あの小太陽で一発だ。
「……レーゼさんってもしかして強かった?」
「……かもな。」
そう考えて見るとよく生きているなぁ。やっぱり異能ってかなり強い能力なんじゃ…
異能の価値について考えさせられる俺だった。
〜〜〜〜〜〜
あれから1時間ほど、俺たちは黒猪を拾ってから、キャンプ地に戻ってきた。
「あ、健二くん!どこ行ってたの?」
受蔵さんが健二に気づき、駆け寄ってきた。
「あぁ、海斗がさ、こいつに追われてたんだよ。」
そう言って引っ張って来た黒猪を指差す。
「海斗くん…何やってんのよ。」
「いやぁ、次は気をつけます。」
苦笑し、頭を軽く下げ反省の意を示す。
「はぁ、佐々木くん、海斗くん、その猪厨房に持って行ってよね。」
「りょーかい、海斗、行くぞー。」
「ヘーい。」
そう返事をして黒猪を運ぶ。
「なぁ、健二〜、一つ聞いていい?」
「ん?何?」
運んでいる途中でさっき気づいた事を聞く。
「お前さ、受蔵さんと付き合ってんの?」
「………は?」
「いやさ、受蔵さんのあの態度、明らかにお前に惚れている態度だったじゃん。だから付き合ってんのかなぁって。」
「………はぁ、お前なぁ。何でそんなんなんだか…。まぁ取り敢えず付き合ってないよ。」
「本当かよ?あー、何でお前はモテて俺はモテねぇんだよ!ちくしょう!」
「お前…嘘だろ…っと、ここだ。」
話しているうちに厨房に着く。
「おーい、宮本。こいつ頼むわ。」
そう言って厨房にいる
「ほーい、
宮本の能力は世界の本、知りたい事柄があった時、現存している本を元に本を作成し読むことが出来る。
この能力のお陰で俺たちは危ない食材などを食べずに済んでいるのだ。
「お!この黒猪、美味いらしいよ。それじゃ、調理本作成っと。みんなー、作るよー。」
そう言って、調理班で黒猪を調理した。
この日の食事は美味かった。
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