第10話 死に際に
「えーっと………ま、まぁ、勝ったんだし良いよね別に…」
「まてぇぇぇ!!良くねぇよ!どうすんだよコレェ!?」
健二がやかましく言ってくる。だがそんな事を言われたって今となってはどうしようもない。
「そ…それよりも、王都向かおう!今ならきっと追って来ないよ!」
「アホか!?王都は大混乱だよ!何せ国の象徴が吹っ飛んだんだからな!」
「まぁまて、一旦落ち着け。これはレーゼが打ってきて、俺はそれを打ち返した結果王城が吹き飛んだ。つまり正当防衛だ。レーゼが悪い!俺は何も悪くない!」
「いや、お前も悪いよ!?」
「なんだとぉう!健二ぃ!テメェ友達を売るっぎぃ!?」
なんだ!?身体がすげぇ痛い、それになんだか力も抜ける…
身体が横に倒れる。
健二たちがビックリした顔をした。
「海斗?どうした?ってお前!なんつー怪我だ!」
どうやら俺の状態に気づいたらしい。
今の俺の身体は腕が燃え、上半身の服は前が燃え尽きている。胴と顔は酷い火傷を負っていて、目が見えない。失明したようだ。
今までは後ろを振り返っていたのだが、倒れた影響で身体正面が見え、上半身の服も衝撃で飛んだらしい。
ちくしょうっ!痛ぇ!身体がっ、痛ぇ!し…死ぬ…死んじまう。
だんだん目の前が真っ暗になっていく。
「おい!海斗!?返事しろよ!海斗!おい!…い…のか……いと!……」
声が遠くに聞こえる。
もう、限界か…
死が近づいてきて逆に冷静になった思考がそう判断する。
「…に……く…ね…ぁ…」
「なんだっ!も……言え!お……海斗!」
「死に…たく…ね…ぇな…。ま…だ…別れの…言…葉、言え…てねぇ奴、いっぱ…い…居んのになぁ…」
「お…、……な………!…か…!……って…さ…!」
駄目だ…何言ってんのかわかんねぇや。
母さん、ごめん勝手に死んで…父さん、悪い親孝行できそうにねぇや、あ、まて異世界来た時点でほぼ親孝行は難しいな。怒られちまう。
それに姉さん、約束守れなかった、ごめん…みんな本当にごめん…
そう、自分の心の中で謝る。
こんな所で死ぬつもりは無かった。だが実際には死ぬ。…悔しいなぁ、ちくしょう…
そうして、俺の意識は薄れていった。
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健二視点
「おい!おい海斗!目ぇ開けろ!おいっ!」
ヤバイ!海斗が目をさまさねぇ、このままじゃあ海斗が死んじまう!
どこかで聞いた事がある話だが、全身の火傷が7〜8割に達すると死ぬらしい。
海斗の身体はその基準に達していた。
「くそっ!なんで回復魔法が有るか聞かなかった!覚えておけば助けられたかもしれないのに!」
「ちょっとどいて、邪魔。」
「火野さん!?」
そう言って
「不死鳥の魂!」
叫ぶと同時、海斗の身体が炎に包まれた。
「なっ!?お前、なんて事を!」
こいつ!海斗を死んだと判断して燃やす気か!?
「騒がないで、うるさい。私の異能は不死鳥の魂。回復できる異能よ、まだ死んでいないのなら治せるはず。」
「本当か!?頼む!海斗を助けてくれ!」
「うん、絶対に助ける。私が何としてでも!」
火野さんははっきりと断言した。
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海斗視点
目が…覚めた…
「生き…てる?」
手を見ると、燃えていた。
「!??!?ぎぁぁぁぁぁ!あづぃぃぃぃ!!死ぬっ死んじまうぅぅぅぅ!!」
あづぃぃぃぃ!!まだ死んで無いから助かったと思ったのに死にかけたまんまだったなんて!?
「煩い。また死にかけたいの?」
唐突に横から声が聞こえた。誰だ!?そんな事より俺の炎を消さなくては!
「誰だ!?この炎を消してくれ!このままじゃ死ぬ!」
「死ぬわけ無いわよ、私の異能だし。」
「くそう!もはやここま…え?」
「だから私の異能、不死鳥の魂で回復してんの。燃えてるのはそのせい、分かる?そもそも熱くないでしょ?」
そういえば別に熱くない…助かったのか?火野さんのお陰か…
「あ、あぁ本当だ、熱くない。火野さんが助けてくれたのか?」
「まぁね、海斗君が燃えてなかったら死んでたかもだけど。」
「ええ!?どういう事?」
「不死鳥の魂は不死鳥のように熱を使って回復するの、だから熱量が足りなければ治せないわ。」
あっぶねー!燃えてて良かったぁ。いや、それはそれで良くないけど…
俺は取り敢えず火野さんに感謝を伝える。
「何にせよ助けてくれてありがとう、火野さん。」
「べっ別にお礼なんて要らないわ!私達も助けられたのだし。」
「そっか、みんな助けられたんだな。良かった…」
良かった、本当に。っと、そうだ!
「そうだ!竜吾と足谷は!?」
「二人とも無事、笹原は軽傷だったし、足谷は焼けてたかんね。運が良かったわね。」
「そうか〜、良かった…」
「一番重症はアンタ、危なかったんだから安静にしてなさいよ。」
「りょーかい、なんか思ってたより優しいな、火野さんって。」
「っ!う、煩い!目、覚めた様だし私もう行くね!」
そう言って火野さんは部屋を出て行った。
「……………ちょっと可愛かったな、火野さん…」
俺の呟きは誰にも聞かれる事なく消えて行った。
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