第5話 異能の力と新たな目標

「あー、クッソ、マジでクソ。だいたいなんで俺だけなんだ、他のみんなは魔力あるのによ!」


ぐちぐちと言っているとライトの魔法を覚えた健二と翔太がやってきた。


「ま、まぁ、何というか確かに残念だったが、まだ諦めるには早いだろ。なっ!翔太、お前もそう思うよな!」

「あ、あぁそうだな、異能だってあるんだ、もしかしたら異能がスッゲェ強えかもしれないし…」

「んだよ、翔太、今回は笑わねえのな…、それとも同情でもしてんのか?ッハ!やめてくれ、虚しくなってくる。」


慰めに来たらしい二人に気を使う余裕もなく、ついあたりが強くなってしまう。


「俺は魔法が使いたいんだ、火の玉を連射したり、雷を纏って戦ったりしたいんだ。まぁ、今となってはそんなもの夢のまた夢だかな…」

「なんかなりたいものが随分近代的な魔法使いだな…、それより落ち着けよ。もしかしたら異能で似たような事出来るかもしれないぞ。」

「っ!?そうか!その可能性があった!」


健二の言葉に希望を見出した俺は早速異能について話を聞きに行った。


しばらくたち、皆がようやく集まったので異能の説明が始められる。


「異能についてですが、姫様のお話では人それぞれあり、体の中に存在するそうです。皆さん、何か体に違和感などありませんか?」


レーゼさんにそう言われて自分の体に意識を向けてみる。すると手がジンジンと痺れるような感じがする事に気づく、ただ非常に弱々しいので今まで気づかなかった。


「うわっ!ホントだ!」 「何これ〜?変な感じがする〜」


クラスメート達も違和感を感じたようだ。


「では、それを体の外に出すようなイメージで力を入れてみて下さい。」


言われた通り、手の痺れを体の外に出すイメージをしてみる、すると手が光り出した。


「それが皆さんの異能です。どんなものかは使っていくうちに分かると思いますので色々試してみてください。」


俺はそんなレーゼさんの声を聞き終えると同時に周りを見渡し愕然とした。


俺の手が光っているだけの異能に対して、鱗と尻尾と翼が生えている奴や宙を歩いてる奴、手が黒い靄のような空間に入っているところから消えている奴もいた。


「海斗〜、どんな能力だった?」


呑気にも健二がこちらに向かってきて、能力を聞いてきた。


「俺は剣を出す程度の能力だったよ」

「 僕は透明化。マジでウケる」

「うお!?びっくりした!翔太!?いつの間に?めっちゃずりーなおい!」


何と翔太は透明化の能力のようだ。

どうやら服も適応されるらしく透明化して健二の横に現れた。


「それで?海斗はどんな異能だったん?」


健二が能力を聞いてくる。


「手が光る。」





「ん?何だって?」

「手が光るだけの能力だよ!なんか文句あっかこの野郎!?」

「………いや、えっと、その……ごめん。でもさ、レーゼさんも言ってたじゃん。異能は使っていけば分かるって、まだ諦めるには早いだろ!」


そう言って健二は俺を慰めたのだが、魔法の時も似たような展開だったのであまり期待しない方がいいだろう。


あぁ、本当に嫌になる。死にたくなって来た。だいたい魔法は使えず、異能もクソ。こんな人生一体なんの価値があるんだ…


俺が落ち込んでいるのに気付いたのか健二が声をかけて来た。


「ほら!練習しようぜ!」


そう言って、健二は素振りを始めた。


その瞬間振り下ろした剣から光が飛び、先にあった木を切り倒した。


「「わぉ…」」


これはさすがにビックリした。

落ち込んでいたことなど忘れて俺の灰色の脳細胞が閃く。


飛閃ひせん……その異能の名前は飛ぶ一閃、略して飛閃とかどうかだろう?」

「お!おお、飛閃か!いいな、流石は厨二病だ、それにしょう。」

「俺は厨二病じゃ無い!常識ある厨二病だ!」

「それ結局厨二病だろ、それよりお前の能力もこういった感じなんじゃ無いのか?」

「っ!!そうだ!そうかも知れないまだ希望はある、自殺はやめだ。」

「おまっ!自殺しようとしてたのかよ!?」


俺は新たに目標を立てた、とりあえず目標を達成するために生きていこう。


「なぁなぁ?俺の能力にも名前つけてくんね?」


翔太がせがんできたので、カッコいい名前を考える。


「うーん?もう普通に透明化インビジブルで良いんじゃね?」

「それは草!さすがは厨二の海斗、よし僕の異能はこれから透明化インビジブルと呼ぼう。」

「お……おう……それでいいのなら…って言うか俺は厨二病じゃない!」


二人と喋っているとレーゼさんが手を叩く。


「はいっ!皆さんそれぞれやってみたいことがあると思いますが、この場は一旦終わりです。」


話が終わり、レーゼさんはこの部屋を後にした。


よしっ!異能の名前も決まっていない、もう少し頑張ってみよう。


俺はようやく立ち直ったので、前を向いて歩き始めることにした。

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