046 完全なる世界 間章3
私の姉妹はいなくなった。
ある日、こつ然と煙のように消えたのだ。
なぜ? そう思っても私には理由は分からなかった。私の能力は他人の記憶を改竄、あるいは消去するだけのもので、他人の記憶を読むことはできないのだ。
私は独りぼっちになった。
けれど私は寂しくなかった。私には私の趣味があった。それは殺人だ。そして、他人の記憶をいじくり回すこと。彼女がいなくなってから、私の趣味はより一層熱が入った。すると私を追う者が出てきた。
私はその鬱陶しい人間を殺した。そうすると、また、また……終わりのない追いかけっこが始まった。私はそれで住処を転々とさせた。そのたびに、その場を私の住みやすい環境に変えていった。
そして私は今、この腑卵町に住んでいる。
ここは良い。空気が濁っていて。でもこんな町にも鬱陶しい人間はいる。あの退魔師だ。あいつさえ居なくなれば……。あの男はこの町の守護装置らしい。この町に入った異物を排除する。ならば私は明らかにその異物だ。
私は退魔師の存在を知り、やつに近づいた。
退魔師といえど所詮は人。私が少し優しくすればデレデレして。なさけない。こいつは殺す勝ちもないかもしれない。そう思っていた矢先だった……。
退魔師と一緒に、あの人がいた。
私の大切な姉妹。私の愛する人。私のたった一人の友人。
どうしてあの人があそこに?
どうして……。
欲しいものは全て手に入れてきた。私にはそれをするだけの権利があると思っていた。けれどあの人だけは私のものにはならなかった。私が唯一取り逃がした人。もしかしたら私はあの人の代用品として、ほかの全てを手に入れてきたのかもしれない。
完璧な世界。
あの人がいない限り、そんなものは存在しない。だから私は……。
私はどうあっても退魔師を殺す。そう決めた。そしてもう一度、あの人を……。
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