砂は何処までも続く




太陽が照りつける。


砂漠は何故こんなにも暑いのだろうか、

ここがふるさとというのも考え物だ。


まぁ、どうせ私の家は何処にも無い。


青い彼女は今日は居ない。今頃木組みの宿でまんじゅうを頬張りながら物を探るその手でえんぴつとかいう文字が書ける棒を握りしめてカリカリ何かを描いてる所だろう。


さて、この辺りだったかな。


「…おー、あったあった。覚えてるもんだね~意外と。荒らされた痕跡も無し、と。」


適当に掘り返して、

入り口を作って中に潜る。


流石に時の経過とともに砂が覆い被さっているが、中は良い感じだ。

砂漠で生きるには、寒暖の差に影響されにくい場所が必要だ。もう他のフレンズが使っているのかと思ったが、まわりに何も無い砂漠のど真ん中のちょっとした岩場だ。流石に誰も寄りつかないのだろう。


中にも砂が溜まっていたけれど、砂漠のど真ん中の狭い湧き水は、穴の中でこくこくと水を吐き出している。集めていたガラスの欠片や、綺麗な石、植えたら育ち始めた変な草が私のねぐらだったことを教えてくれる。


家など、そんな物は無い。

此処は気に入っていただけで、ただの岩場であることは変わりない。おしりに当たるザラザラ感が月日の流れを感じさせる。



さて、水をひと飲みしたらまた出発しよう。

私に帰る場所は無い。赤い日が続く道を歩くだけだ。



「自分探しの旅計画、ページ1。」

『とりあえず故郷に帰ろう。』


生まれたのも、最初の記憶も此処だった。

生命を殺す事だけを考えて作られた鬼の大地


砂は全てを拒み、太陽は命の糧を焼き、月は心までをも凍らせ、生き延びた緑は鬼の武器となり、生き延びた獣は鬼を宿して牙を剥く


どうせ、私以外こんな所に居ない。


「とも限りませんよ?」


「!?…す、スナネコかぁ。びっくりだよ」


「あなたが驚く所、初めて見ました。満足」


だから、

彼女のような能天気が気まぐれで居る。


「珍しいですね?ひとり。」


「そうかな?」


「はい、たぶんそうだと」


「ん~君は相変わらずだね~?」


「僕はいつもいつも通りです」


私は彼女の顔をしっかり見たことが無い。

物理的に見てないワケでは無い。


言うなれば、仮面の奥。


「相変わらずわかりにくいね~?」


「そっちこそ。

 何考えてるか僕には分かりません」


「スナネコの仮面の下はどうなってるの?」


「さぁ、僕も知りません。」


「私の仮面の奥はどう見える?」


「…見えません。」


見せる気は無いのだから、見えなくていい。


「ただ。」


「ただ?なにさ~気になるじゃないか」


「あなたはとってもやさしいフレンズです。僕は知ってます。あなたは僕が前砂嵐に巻き込まれたとき、砂漠のフレンズで唯一僕を助けようとしてくれました。あなたはたまたま通りかかったって言いました。嘘の癖に。ぐしょぬれのけがわをパタパタしながら。

どうせ今回の自分探しだって、相方のあの子に一緒に行くのだーっ!って言われたのを押しのけて、迷惑かけまいと探しにきたんでしょう?


仮面の奥なんて僕の知ったこっちゃありませんが、その胸の奥の光はしっかりと見えます。あの子は星に見えるってあなたは言います…ね…


あー…疲れた、満足。じゃぱりまんでも食べましょう?」



「もう、相変わらずだね~君は」



夜空は迷い子


なんて聴いた事がある。


太陽は迷い子を導く


とも聴いた事がある。



I like a rising star.


そうだ、

私の帰る場所はあの星を導ける

あの星の隣なんだ。




「あれ、スナネコ?もう行くの?」


「いや、お客様のお迎えをしたほうが良さそうだと思って。」



水平線のむこうに、煙の雲が見えた。


「もう、声、大きすぎだよ」









砂は何処までも続く。

私は、この砂に埋まった。

私を探しに来たんだ。

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