愛は恋より出でて恋より熱し。




「恋」


というのは不思議な物である。



それが私の心中を抉る屈強な武器であることを、私は知っている。だって、ちょうど今抉られている真っ最中なのだから。


「…聞いてる?大丈夫かジェーン」


「え、あ、はい、大丈夫ですよ!はい」


またコレだ。

心の傷が抉られていくこの感覚はきっと大きなダメージに違いないのに、マゾだと罵られても反論のしようの無い笑みが顔に浮かんでしまう。

私はどうしたんだろう、謎だ。

どんな本にもどんな言葉にも、


「恋」

という不思議な言葉で一つ片付けられている


恋は痛いものなの?

恋は楽しい物なの?

恋は悲しい物なの?

恋は破れる物なの?


自問自答に自問自答を重ね哲学的な思想に至り、極論の最後に続く道はやはり恋は不思議なのだという話で終わってしまう。

気持ちは誰にも推し量れない。

だけど、答えを出してほしい。

私に答えを教えて欲しい。



____________________






お前とは話が合うだけのグループのメンバーで、仕事仲間で、大きな家族でいたかった。

姉妹みたいな関係で居たかった。



でもオレは、

お前をどうやら好きになっちまったらしい。


慌てふためいたり、可愛い顔を見ていると癒されるし、ココロが跳びはねるようだ。

オレはお前の綺麗なココロの形を見る度に、ときめきが止まない。


「そういうイワビーさんも大丈夫ですか?ココロここにあらず、という感じですが。」


「えっ?んなこたねーよ大丈夫。」



駄目だ、愛が止まってくれない。

愛おしい、抱き付いてやりたい気持ちがいっぱいで、まともな思考は出てこない。

でもコレで良いのだろうか。



この感覚は抑えるべき?

この感情は感じて良い?

この愛情は破れるべき?

この名前は知って良い?



自問自答に自問自答を繰り返す。それは哲学的な思想に至り極論の最後に続く道は愛の告白は思いの募るときだからとココロの中にキリキリ染みていく。駄目だ、これ。

気持ちは誰にも推し量れない。

だけど、答えを出してほしい。

オレに答えを教えて欲しい。





___________________





「オレ、最近おかしいんだ…」


オレはプリンセスに聞いた。

フルルはジャパリマンを食べていた。

この思いをこのままになぞしていたくは無いのだが、と。


「思いに気付いてるなら、正直になれば良いじゃ無い。悪いことは無いハズよ?お似合いだし。」


お似合いだし、か。

そう見えているなら、オレは伝えても良いかもしれない。

だが、彼女の意思は知り得ない。



___________________




「私、どうしちゃったんでしょうか…」


私はコウテイさんに聞いてみた。

フルルさんはステージで座って遠くを見ていた。

この思いをこのままにしたくないのですが、と聞いてみる。


「思いに気付いてるなら、伝えても良いんじゃないか?実際、二人とも仲が良いし、透明なガラスみたいにキラキラして見える。」


キラキラ…ですか。

そう見えているなら、良いのかもしれません

ですが、彼女の意思は計り知れない。


____________________





「とか言って…!あー面白い!」



ライブの打ち上げでアルコールをキメたメンバーは、昔懐かしい話をして盛り上がっていた。


「言わないでって言ったじゃないですか!」


「良いじゃねーかよジェーン!オレらの仲なんだから今更だぜ!大好きなのにゃ変わらないだろっ!?」


「あーもうっ!少しは恥じて下さい!」


揺れるオレンジ色の光が

うらうらと顔を照らした。


ある者は、少しだけ離れて静かに笑う。

ある者は、お酒をくいっと飲んで笑う。

ある者は、大声で心の愛を叫んで笑う。

ある者は、顔を赤く染めながらも笑う。

ある者は、お箸を片手にぼんやり笑う。

ある者は、赤い興奮を抑えられず笑う。


「イワビーさんがその気なら、私だって沢山色々してあげますよ!ぎゅーですぎゅー!」


「おわっ!?お前はスキンシップ多過ぎだろっ!ぎゅーぎゅーするな!痛い痛い!」


お前らの結婚式はいつだと赤く染めたフキンをたたみ、カメラを彼女たちに向けた。


写ったのは、ふたりの燦めく笑顔だった。


愛は恋より出でて恋より熱し。

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