忍べ霞よ、睨む銀天


忍べ霞よ、睨む銀天




「さぁさぁ、次もライオン陣営に勝つために練習だっ!!!!!!!!!!!!」


森を統べる王の咆哮に私達は駆けた。

いつからだったか、このボールとやらを蹴る日々が始まったのは。


ここまで私は脳みそに考えを書き連ねて、可愛さの欠片も無いことに気付いた。

すでに私の性格と言うのはパークで知られているのだが、いかんせんギロリと睨まれてしまえば泣く子も黙ってまた泣くだろう。


図書館で以前、

泣いた赤鬼

なる絵本を読んで、共感の想いと鬼のあんまりな別れに耐えきれず部屋の隅で涙を流し、長のふたりに心配され、挙げ句その様子を見ていた他のフレンズになんて顔しているんだと引かれるなどという快挙を成し遂げたのだ。もう良い。ほっといて。


とはいえ私の同種族なかまは少ない。

それ故にいろんなフレンズと仲良し小好しなエブリデイを過ごしたい。

ヘラジカ様率いるヘラジカ軍の戦いは至って脳筋。それはの教えを取り入れた今でも根底にはある。ぱわーいずじゃすてぃす、攻撃は最大の防御。根性をたたき直せ!

本で読んだが、コレを『ぶらっくきぎょう』

とかいうのではないか。


一方ライオンさんが率いるライオン陣営は、

群れで生き群れを愛し群れを練る。

The pen is stronger than the sword…

ええと、ざぺぇーんいずすとろんがーざんざそーど…だったかな?

とにかくとにかく頭を使って戦うのだ。

私は頭がいいほうらしい…長のふたりはそう言う。


私はハシビロコウ、

ホントはもっとお友達が欲しい。


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忍べ霞よ、睨む銀天







霞む自分の体を見つめて、

なんだかよく分からない感覚を持った。


さっきまで腕だったのに、いまは石や草が生えた地面なのだ。


私は忍。私は霞む森の奥。



「多少は格好いいでござろうか」


透けて行く自分の手のひらの先には、曇り空が泣きそうな声で歌っていた。



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忍べ霞よ、睨む銀天





ソレは急に私に訪れた霞だった。


こころに靄がかかるような気分だ。


緑色の熱帯雨林のようなシノビは、気まぐれな色を付ける、でもどうせすぐに忘れるだろう。


性格なのだろう。より繊細な想いが見える。

彼女、本来は戦いなんて向いていないのでは無いだろうか。いつか目が痺れるほど彼女を凝視していた。

よくよく考えたら彼女は…

いや、シノビのお手製マキビシに目を潰されたくない。彼女がか弱い事など言ってはいけない。




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忍べ霞よ、睨む銀天



ソレは急に拙者に訪れた霞。


ココロは曇り空、

体の色まで黒く染まって行くような気がする。


クールな曇り空のような彼女は黄色い目を稲妻の駆けた空のように光らせて、拙者のココロまで貫いていく。


性格なのだろう。結局、頑張り屋さんなんだろう。彼女は彼女から変われない。曇り空は晴れても、彼女の雷鳴は天の与えた美しい美しい宝石なのだ。いつの間にやら透明な拙者の頬は熱くモエハジメた。

彼女は…いや。

あの華麗で流れゆく槍さばきに、拙者の心は物理的に貫かれたらぱんと弾けてしまう。

彼女がすでにかわいい奴だとみんな知っているのにしゅんとしてヘコむ所が見たくて怖いと茶化すなんて、彼女が知ったらどう思うのだろう。




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忍べ霞よ、睨む銀天

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