第11話 決議


 人型のデウスギアは、一人…外と閉ざした領地の関所へ向かう。

 関所には多くの兵士達が構え、槍をデウスギアに向けている。

 その隊長であるラデットが来る。

 ラデットがアーティファクトの剣を向けて

「本人なのだろうな…」

 デウスギアは、人型を解除してあの巨大な多腕の機神の体を顕わにする。


 ラデットが兵士達に

「鎖を掛けろ」

と、多くの兵士達がデウスギアの巨体に大量の鎖を引っかけて拘束した。

 多くの鎖に絡め取られたデウスギアを、兵士達が引っ張って行く。

 それにデウスギアは続く。


 その様子を遠くから見ているバエルとダイダロスにミカヅチは、今すぐに飛び出したい衝動と激怒に襲われていたが、デウスギアの意志を分かっているので踏みとどまっているが…。


 リグレットは、別の安全な人知の簡易車両の中で、祈っていた。

 夫デウスギアの無事を…。



 デウスギアの上には、不可視にした特別な監視ロボットが浮かび、デウスギアが運ばれる様子を監視している。

 それは、エデンズ・アークに伝わり、自宅小城にいるミラエルとルシスも、その立体画面を凝視していた。



 鎖に捕縛されて連れられるデウスギアは、まだ…彼らと何とか話し合いの余地があると思っていた。

 だが…それは見事に撃ち砕かれた。


 領地内に入り、夜の街を進むと、檻に入れられた市民達と、それを管理する…ならず者達が跋扈していた。

 人を奴隷にしていた。

 それで分かった。ここの領主は人を自分の所有物程度にしか思っていなかったのだ。


 人の解放、つまり、民の発展は、自分の所有物が奪われる程度の価値観しかない。

 誇りある貴族ではない。タダの奴隷商人と同レベルの思考なのだ。


 デウスギアは打ち拉がれて進むと、とらわれの住民が

「デウスギア様! 助けてください!」

と、助けを求める。

 そこへ、ならず者が

「ウルサい! 黙れ!」

と、助けを求めた女性を槍で刺した。

 女性は、崩れてそこに子供が来て

「母さん!」

 

 デウスギアは、引っ張る兵士達を引き摺り、刺された女性の元へ来ると、腕の一つを伸ばし…そこから、治療用のナノマシン液を流して、女性の刺された胸を治療ナノマシン液で包んだ。

 子供がデウスギアを見上げて

「大丈夫、何とか、これで助かるから…」

と、デウスギアは微笑むと、子供が

「ありがとう」

 デウスギアが微笑み頷くと、引っ張られた兵士が

「早く来い!」

と、デウスギアを引っ張る。


 デウスギアは再び、兵士達に引っ張られて領主の城へ来る。

 そこには、多くの武装したならず者達と、兵士達がいた。

 目の前には、ならず者と兵士達に守られる領主の男がいて

「ようこそ、邪神デウスギアよ」


 デウスギアは捕縛する鎖に引っ張られて巨体を伏せられ

「領主よ。まだ…間に合う。こんな暴挙は止めてくれ」


 領主が嘲笑いを向け

「おい」

 声をかけると領主の目の前に、子供達が並んで跪かせて、その後ろに剣を持った、ならず者が突き刺す構えをする。

 デウスギアは青ざめ

「何をするつもりだ…」

 領主は嘲笑で

「決まっている。お前への人質だ。お前がおかしな事をすれば、子供達を殺す」

 デウスギアが怒りで体を起こして

「それが! 領主のやることかーーーーーー」


 デウスギアの周囲にいる兵士達が、デウスギアを絡める鎖を引いて伏せさせようとするも、デウスギアが強すぎるので全く歯が立たない。


「動くな!」と領主は怒声を張り「動くと、殺すぞ」


 デウスギアは、再び自ら伏せた。


 人を捨てた領主がデウスギアに告げる。

「キサマさえ、来なければ…全ては上手く行ったのだ。何が民に新たな世界を…未来を!

 ふざけるな! 領地にいる民は、全て私の所有物だ! 私が生かし殺し、搾取して何が悪い。それが貴族という者だ! 下賤な市井とは違うのだよ。領地にある全ては、私が絶対なのだ。それ以外は、地面に生える草木と同じだ」


 その映像が、デウスギアの上で不可視となっている円盤ロボットからレールピア大陸の全土に伝わる。

 それを見ていたデウスギアを受け入れて民の為に発展を願っている、真っ当な貴族達が項垂れた。何という恥さらしか…。同じ貴族として申し訳がなかった。


 王達もそれを見て、唖然としていた。これが…今まで待っていた残りの者達の正体か…と思うと、どうでも良くなった。


 それは民達も同じだった。

 人を人と思わない者に、人としての価値はない。

 あれは…もう、人ではないのだ。人以下の畜生なのだ。


 それが知らされているのも知らずに、デウスギアを前にする堕ちた領主が

「さあ、シックス・アンチの皆さん」

 と、周囲の者達から6人が出現する。

 それは、このならず者を支配する、レールピア大陸で悪名高き、シックス・アンチだ。


 全身黒鎧の男が

「瞬間斬のレイデット」

 闘牛士の男が

「薔薇棘のシャリデス」

 人から魔術の改造によって異形になった男

「不死者のバグデット」

 周囲に念力の刃を浮遊させる男

「多斬弾のグシャラ」

 鋼の魔法の細い糸を指から放つ妖艶な女性

「絶断のシャルネア」

 そして、二メータの巨漢で大型の鎧を纏う破戒僧

「そして、シックス・アンチのまとめ役、絶望の壁ドラング」


 彼ら、レールピア大陸の主要犯罪組織のトップ達がそこにいた。

 犯罪組織をまとめる力は暴力だ。故に彼らは強者である。


 ドラングが

「デウスギアよ。お前のお陰で我らは苦渋を舐められてきた。ここでお返しをさせて貰う」


 シャルネアが両手に繋がる魔法鋼糸でデウスギアを包み

「これで、キサマは指一つ動かすだけで、ズタズタになる」


 シャリデスがレイピア剣を抜いて

「さて、存分に嬲り殺しといこうじゃないか…」


 バグデットが

「遺体は、私の研究材料として活用してやる」


 そして、領主が人質にしている子供達に

「もう、用はない。殺せ」

と、命じた。


 子供達を狙う刃が、子供達の命を奪おうとする。

 子供達は目を閉じた。脳裏に過ぎったのは、家族の事だった。

 だが、跪き拘束されるデウスギアの腕の一つが動き、そこからホーミング・レーザーが照射され、子供達を殺そうとするならず者の上半身を消した。


 シャルネアが青ざめ

「そんなバカな、アタシの鋼糸を…千切るなんて」


 子供達は助かった。

 

 シックス・アンチは、一瞬で上半身が消えた者達の下半身を見ていると、ズンと地面に亀裂が広がる。

 ホーミング・レーザーを発射した巨腕で地面を叩き付けたデウスギアが

「お前等…覚悟は、出来ているんだろうなぁ…」


 シャルネアの鋼糸を糸も簡単に引き千切ってデウスギアが立ち上がった。

 その放たれる殺気、尋常ではない。まるで巨大な怪物、爆発する火山を目の前にしているようだ。 

 レイデットが動いたが、それより早くデウスギアの巨腕がレイデットを虫が潰すように叩き潰した。


 デウスギアが怒りで、白い息を吐き出す。

「クソーーー」

と、シャリデスが叫んで突進で一歩踏み出した瞬間、瞬く間にシャリデス、グシャラ、バグデットが叩き潰された。

 その間も、シャルネアが鋼糸を伸ばすも、全くの無意味、糸くずのように引き千切られ、そして、デウスギアはシャルネアの両腕を垂直に巨腕を下ろして叩き千切った。

「ぎああああああああ」

と、シャルネアが悲鳴を上げる。


 あっという間にシックス・アンチの四人を殺して、一人を行動不能にした。

 ドラングが

「おのれーーーー」

 自身の纏う鎧のアーティファクトを最大にして、デウスギアに強烈な一撃を叩き込むが、デウスギアがそれに合わせて軽く腕の一つを振った。

 ドラングの全力より、デウスギアの軽い一撃の方が遙かに威力を上回り、ドラングの全力を跳ね返して、更にドラングを粉々に殴り潰した。


 周辺にいた兵士とならず者達は一斉に逃げ出し、領主は腰を抜かしてその場に尻餅を付いている。

 ズンズンと激昂する火山のデウスギアが領主に近付き

「た、助けて…くれ…」

 デウスギアは冷たい目で

「お前は言ったよな。人は自分の所有物だと、なら、お前も物と同じという事だ。不要品は捨てるに限る」

 一撃だった。領主はゴミ虫が潰されるように叩き潰された。


 デウスギアが苦しい顔で

「バエル。ダイダロス。ミカヅチ。作戦を開始せよ」


 反乱を起こした各領地の制圧が始まった。


 デウスギアに注目していたので、忍び込んだ雷神族と、悪魔族によって全てのならず者と関係した兵士達に貴族達が捕縛された。その数、300万人。

 結局の所、反乱した愚かな彼らは、一時間という短時間で、制圧されてしまった。

 エデンズ・アークの力ではない。

 デウスギアが本気になったと分かった瞬間、兵士達や、ならず者達が裏切って瓦解、そこを捕まえるというお粗末になり、問題の貴族達も我先にと逃げだし、そこを掴まったのだ。

 争いという争いさえ、無かったのだ。



 ◇◆◇◆◇◆◇


 それから二週間後、レールピア大陸は急速に変貌していった。

 中世時代の建物もあるが…それは歴史を重んじるという事で残された文化公園で、その隣には、コロニー都市群が並んでいた。

 中世の様式だったレールピアは、一気に23世紀に近い未来都市世界となった。

 人が余裕で暮らせるアーコロジー式ビルが並び、その周囲には整備された緑地公園が等間隔で設置、学校や病院、公共サービスを提供する中央システムビル。

 犯罪を抑止、監視、予備軍を見つけて保護する統治機能。

 その都市を支える潤沢な食料を生み出す機能農園のコロニー。

 人々の職業は、主にシステム管理や、システム製造、ナノシステムによる生産製造。

 人々には無償教育と、無償医療、無償住居、社会保障が提供されて、人力が主の中世とは別世界になった。


 人々の生活が劇的に向上して、デウスギア達が望む宇宙民計画へのステップを着実に歩んでいる。


 国家という枠組みも変貌した。

 国境というモノは消失、国同士が連邦を組み、レールピアのエデンズ・アークのシステムがある場所では、どの国でも均一のサービスを享受できるようになった。

 国の間隔は、正に日本で言う都道府県のようになった。


 無論、21世紀の世界のように繋がっているも、その繋がりによる破滅的波及は起こらない。


 個々の機能都市達が独立して、自らの事を賄いつつ、余剰を循環させるという、ネットワークのような連邦を形成したので、一箇所が不全を起こしても、周囲の機能都市達が物資を送って復旧を手伝うようになっている。


 このシステムは、デウスギアが地球の事を顧みて作ったのだ。

 21世紀の地球は、政治やら大きな組織があれば、世界が一つになるという愚考だった。

 だが…それは、全くの無意味だった。


 人は自ら立ちつつも、人と繋がり合い、生きて行く。

 どこか一方が大きい事に任せれば上手く行くなんて、幻想なのだ。

 レールピア大陸は、これから発展するだろう。

 宇宙へ飛び出す程に。

 政治や、企業、組織では、世界を変える事は出来ない。

 人の力、叡智や技術を発展させなければ、世界は変えられないのだ。


 デウスギア達、エデンズ・アークはそれの叡智と技術を持っている。故に当然の結果なのだ。



 エデンズ・アークの王座では、デウスギアがバエルからもたらされるデータを見ていた。

 隣にはバエルが立ち

「このように、現在…機能都市化は90%を越えました。これにより、安定した治世と生産が広がり、3年後には宇宙民にする為の教育も始められるでしょう」

 デウスギアは肯き

「そうか…これからが正念場だな」

と、告げる声には何処か元気がない。


 バエルが

「デウスギア様、レールピアは安定期に入りました。ここで少し…休養でも、どうでしょう? 休む事も必要であると…進言します」


 デウスギアが

「バエル。私はミラエルとルシスにリグが妻で良かった。人の心を取り戻したようだ。さきのあの反乱の時に、人を殺めた時…怒りに任せたとはいえ、罪悪を感じる」


 バエルがフゥ…と息を出し

「あれは、仕方なかったと思います。デウスギアが行動してくれなければ…人質の子供達は殺されていた。領主も成敗した事も間違いではありません」


 デウスギアが悲しげに微笑み

「それでも、だとしても…他にあったのでは?と思ってしまう」


 バエルが頭を振り

「デウスギア様、今のデウスギア様に仕事は任せられません! 長期の休養を申し上げます」


 デウスギアが驚き笑みで

「キツい事を言うな…」


 バエルは得意げな笑みで

「自分の意志に従え、そう言ったのはデウスギア様ですよ」


 デウスギアが肯き

「分かった。じゃあ、その言葉に甘えさせて貰う」


 バエルは頭を下げ

「ゆっくり心の整理が付くまでご静養ください」


 デウスギアが王座から立ち上がり

「では、その前に…彼女の元へ行ってくる」


 

 ◇◆◇◆◇◆◇


 デウスギアが向かった場所は、エデンズ・アークの医療ビルだった。

 そこのとある隔離にしてある部屋に、デウスギアが来る。

「調子はどうだ?」

 その隔離している個室の病室にいるのは、シャルネアだ。

 シャルネアは鋭い視線を向けていると、デウスギアが部屋に入り

「再生した腕は…どうだ?」

と、デウスギアは尋ねる。


 叩き落として潰したシャルネアの腕は再生医療によって復活していた。

 

 シャルネアは隠し持っていたペンを出し、デウスギアに飛びかかるも、デウスギアの多腕の一つが伸びて、握るペンを弾いた。

 デウスギアが困り顔で

「そういう態度は、私だけにしてくれよ。他の医療スタッフや患者にはしないでね」


 シャルネアが鋭い視線で

「生かしてどうするつもりだ! 手込めにして辱めるのだな…」


 デウスギアが額を掻き

「どうして、そういう思考回路になる? まあ、話を聞け」

と、デウスギアはその場に腰を下ろす。

 シャルネアは警戒のままだ。


 デウスギアが多腕の一つを組み

「お前の身元は分かっている。特殊な武術を継承する家柄で、妹を人質にシックス・アンチに入っていた。そうだな…」


 シャルネアが俯き

「こうなってしまっては…妹はもう…」


 デウスギアが

「その妹な。我々が保護したぞ」


「え」とシャルネアが驚きを見せる。


 デウスギアが

「レールピアの隣にある大国、魔皇国マーロリスのとある娼館にいた。それを我々が…娼館ごと、手に入れて…妹を保護した」


 シャルネアが驚いたままだ。


 デウスギアが

「レールピア各地や組織の内情を調べて探したのだろうが…見つからなかった理由はそれにある。お前達、シックス・アンチが出張ったくれたお陰で、レールピアに蔓延っていた犯罪組織を一網打尽に出来たのは大きい。魔皇国まで根を張っていたが…。まあ、伝手があってな。とにかく…妹にあってみろ」


 シャルネアが困惑する顔を見せる。


「こい」とデウスギアが立ち上がる。

 

 デウスギアが部屋から出ると、シャルネアは疑いつつもデウスギアに付いていく。


 そして、とある病室に来ると…ベッドで寝て特別な再生治療点滴を受ける妹のシュリリアがいた。


 シャルネアが近付くと

「シュリ…」


 シュリリアは眼を覚まして、姉のシャルネアを見て涙が溢れて

「姉さん…」

「シュリ!」

と、シャルネアとシュリリアは抱き合った。


 デウスギアは姉妹の再会を分かち合って欲しいとして、その場から去った。

 その後、シャルネアはシュリリアから話を聞いた。

 奴隷の首輪にて、娼館で客を取る商売をさせられていたが…ある日、その娼館の主が変わって、娼館が廃館となり、そこの女性達は、皆…レールピアで保護された。

 病気を患っていたシュリリアは、デウスギア達の治療の為にここにいて、後々、姉のシャルネアを探すつもりだったらしい。


 シャルネアは話を聞いて肯き、その後、デウスギアを探す。

 デウスギアが医療ビルから出ようとしたそこへ

「待ってくれ!」

 シャルネアが止めた。


 デウスギアは振り向き「なんだ?」と


 シャルネアが

「どうして、私を生かした? あの時…殺す事ができたはずだ」


 デウスギアは呆れ顔で

「あの時、お前は人質にされた子供達を見て顔を背けて苦しそうな顔をしていた。他のクソ野郎共は、へらへらと笑っていた。お前だけが苦悩していた。だから、それを見て…お前は従わされていると…。それだけだ」


 シャルネアはデウスギアの前に来て跪き

「デウスギア様…このシャルネア…貴方に忠誠を誓います」


 デウスギアが呆れ顔で

「分かった。なら、助かった妹と共に、幸せに暮らして年寄りになって笑って暮らせ。それが私に対する忠義だ」

 シャルネアが

「しかし、それでは…」

 デウスギアが

「もし、私の為を思うなら、私が道を間違った時に、遠慮無く諫言してくれ。それが私に対する忠誠だ」


 シャルネアは涙する。

 デウスギアは、まごうことなき、救世の王だった。


 デウスギアが手を上げ

「じゃあ、二人とも治療して良くなったら、必ず住居や生活の申請をしろよ! 絶対だぞ!」

と、告げて背を向けた。


 この時、シャルネアは決意した。次の職を何にするのかを…。



 ◇◆◇◆◇◆◇


 デウスギア達、エデンズ・アークがレールピア大陸を手中にしたと、世界中に広まった。

 レールピアの隣国の大国、魔皇国マーロリスでは、デウスギアの手腕に関しての報告を、マーロリス女帝マリアが王座に座って報告を兵士から聞いていた。


 マリアは渋い顔をしていると、隣にいる老宰相のジャカルが

「マリア様、ここは…一つこちらから仕掛けてみては?」

 マリアは首を横に振り

「今は、まだ…国力が整っていません。時期を待ちます」

 ジャカルが嫌みな顔で

「しかし、それでは我が国が取られてしまいますぞ」

 マリアは釘を刺すように

「時期を待ちます」

と、告げた。

 ジャカルは頭を下げるも…動かないなら、動かせる算段の計画を始める。



 魔皇国マーロリスの上、竜人族、エルフ族、オーク、ゴブリン、ドワーフ、神族といった多民族国家の連邦がある。

 そこの国々が接している中心部分には、多種族が共同で営んでいる都市があり、その都市にある中央議事堂で、六種族達の代表が話し合う。

 竜人王ドラクル。

 エルフ女王ファネータ。

 オーク王のドドス

 ゴブリン女王のブアダア

 ドワーフの王のシャッカ

 神族の女王のアテナ


 6人は円卓のテーブルに座り議題を始めた。

 アテナが

「まずは…レールピア大陸の事で…」

 シャッカが

「ウチ等、ドワーフは知っておるぞ」

 アブダアが

「流石、ドワーフ。何でも首を突っ込む」

 ドドスが

「静まれ、話が進まん」

 ドラクルが

「我らが先んじて使者を、デウスギアの空にある城へ送った」

 アテナが

「勝手な事をしないでください!」

 ドラクルが

「歩調を合わせては、調べる事も出来ない」

 ドドスが

「で、どれ程だったのだ? 空を覆うほどの巨城を持つ王とは?」

 ドラクルが

「使者の話では、感じられる気配、レベルは遙か彼方だと…。我らより遙かに強いそうだ」

 ドドスが笑み

「そうか…是非、戦ってみたい」

 アテナが頭を抱えつつ

「使者を無事に帰してくれたという事は…敵対は…」

 ドラクルが

「レールピアの発展に集中するので興味ないそうだ。だが…先んじて取り入ろうとする者がいる。なぁ…シャッカ」

 シャッカは笑み

「オウともよ。オレ等、ドワーフは技術の向上が生き甲斐、新たな技術の為なら…何でもするぜ」

 アテナは呆れつつ

「では、彼ら、デウスギア達の接触は、ドワーフのシャッカに任せてもいいですね」

 シャッカはガッツポーズをして

「任せろや!」

 アブダアが

「裏切ったら、キサマの国をゴブリンで蹂躙してやるからな」

 シャッカは冗談気味に

「おお…怖い」

 アテナは問題児達に頭を抱えた。



 東にある大陸の大国、大和国の皇帝の座で話し合いが始まっていた。

 漆喰に塗られた重厚な室内で、各地区の代表、獣人族、エルフ、魔族といった三種族の長達が話し合いをしていた。

 その最奥のすだれの向こうに大和国の帝、尊武王那賀壌がいる。

 話し合いをしている者達を静かに見詰める帝、そのすだれの右前には、エルフ族の妻と結ばれて生まれた息子のウルシスが座っている。

 ウルシスも黙って、会議を見詰める。


 会議の議題は、西の大陸を統治したデウスギア達に関してだ。

「早めに接触をしたを方が良いのでは?」

「しかし…それでは、相手の力に呑まれる可能性が」

「だが、あの生産力、侮れんぞ」

 会議が沈黙すると、帝が

「皆の者…デウスギアを招待して、真意を確かめるというのは…どうかな?」

 長達がすだれの向こうにいる帝に視線を集中させる。

 長の一人が

「来ますでしょうか…?」

 帝が

「なぁ…に伝手はある。なぁ…ウルシスよ」

 息子ウルシスは肯き

「はい…」


 長達は「おおお」と驚きを漏らす。

 流石、太古から存命の大いなる帝だと…。




 デウスギア、エデンズ・アークのコロニー内を浮かぶデウスギアの自宅小城で、デウスギアはジャンヌと一緒に遊んでいる。

 ジャンヌは、生えて来た結晶の翼で父デウスギアと共に空を飛び回る。

 それをルシス、ミラエルが自宅小城の高いテラスで見詰めて微笑む。二人のお腹は大分、大きくなってきた。


 デウスギアは娘ジャンヌと共に城へ戻ると、稲妻が走りミカヅチが出現する。

 ミカヅチが

「デウスギア様、東の大和国より、国賓としての招待が…」


 デウスギアがミカヅチに近付き

「大和の帝は…私の事を知っていると…」

 ミカヅチは肯き

「はい。如何いたしましょう?」

 デウスギアはフッと笑み

「休養ついでに会ってみるのも悪くないか…。行くと…」

 ミカヅチは肯き「では」と告げて稲妻になって消えた。


 デウスギアは遠くを見詰めて

「さて、遙か昔に世界を救った英雄の一人とはどのような人物なのだろうなぁ…」

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デウスギア 赤地 鎌 @akatikama

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