第10話 後退者
デウスギアは、エデンズ・アークの中央の王座で、とあるデータを見て眉間を寄せていた。
デウスギアが座る王座の隣には、バエルが立ち開示しているデータの説明をしている。
「と、このようにサマリア王国があるレールピア大陸の国々ですが…地方は、我々の提供する力を柔軟に受け入れていますが…」
デウスギアは額を掻き
「都市部や、一部の大きな領土の貴族達が…」
バエルは渋い顔で
「強固に受け入れを拒否しています」
デウスギアは多腕の一つを組み
「我々の目的は、征服ではない。我々の技術や力を受け入れて貰い、生活を向上させて、ゆくゆくは、我々と共に新たな宇宙民の創出が目的なのに…」
バエルは眼鏡を持ち上げ
「財産の没収や、強硬な手段はとっていないのですが…。どうも理解されません」
デウスギアが別のデータを開示して
「サマリア王家もそうだが、フラドル王家や、リュシュル大公家、イングリン王家、ライゼン侯爵家、レタリア王家、といった王家は我々を受け入れているようだな」
バエルは肯き
「はい。フランドルのルイ王の後押しが効いていますから…。ルイ王は国民の為に自分の金品やモノを売る清貧の賢王とされる方、その手腕はレールピア大陸に響いています。他にも教会を味方にしたのが大きいかと…」
デウスギアは、深く王座に腰掛け
「ヨハンナ教皇の力も侮れないと…」
バエルは肯き
「はい。このレベルの世界では宗教というのは大きな力を持っていますので…」
デウスギアは、地球の事を思い出す。
ヨーロッパでも、機械やコンピューターが誕生して様々な情報を得られるようになっても、宗教を主軸とする者達は多くいた。
何を信じようと個人の自由だが…宗教という都合の良い言い訳によって間違った歴史を歩んだ事が多々あった。
人とは度し難いようで、それを信じてしまう程に素直というか…複雑だ。
デウスギアが考えているとバエルが
「デウスギア様…」
デウスギアは思考の海から帰還して
「なんだ?」
バエルが鋭い目で
「いっそうの事…受け入れない者達を…排除しましょう」
デウスギアは首を横に振り
「それはダメだ。力による排除は、後々に大きな問題を孕む」
バエルが眼鏡を押さえて真剣な顔で
「受け入れた方が楽なのに、自分の面子という下らない見栄の為に破滅に進み、それによって周囲が損害を受けるのは合理的とは思えません。事実、受けれていない領地では、大量の排出者を出して、我らの力を受け入れて発展している地区達が受け皿となっています。許容値として問題ありませんが…。自らの愚かさで自滅している連中が、我々が原因として戦争を起こすかもしれません。それはレールピア大陸にとって大きな内戦になるはず」
デウスギアが
「分かっている。だが…強引な事をすれば…我々も同じとレールピアの民達に見られてしまう。それでは従来の愚かな支配者達と同じだ」
バエルが
「自国の王家に従ってしない事、自体が反乱と同じなのでは?」
デウスギアが優しげに
「バエル。お前達は私が作り出した最高傑作ゆえに、高い知性がある。残念だが人は知性的ではない。感情的なのだ。それを理解してくれ」
バエルが
「わたくしは、この世界の者達と語り合った時に、知性的な者達の方が多いと思いますよ。我々がどうして、それを行ったか…理解してくれると信じています」
デウスギアが
「それでもだ。時期を待て」
バエルがフッと笑み
「わたくしは、デウスギア様のそのように甘い所を好いています。十分に理解できるご慈悲ですから…。ですが、最悪の想定はさせて貰います」
デウスギアが目を閉じて
「最悪、我らと共にある地区へ、愚かな出兵があった場合は…致し方ない…防衛せよ」
バエルは頭を下げ
「承知しました」
デウスギアが
「ミカヅチ達、雷神達と共に、怪しい動きがないか…監視は続けよ」
「は!」とバエルは了承した。
◇◆◇◆◇◆◇
デウスギアは、エデンズ・アーク内にある自宅へ帰る。エデンズ・アークの千キロ級コロニー内に浮かぶ、デウスギアの自宅小城に、デウスギアが帰ると
「おかえりさない」
とミラエルと
「あ、おかえりなさいまし」
とルシスが
二人は大きくなって来たお腹を抱えていた。
デウスギアは微笑み
「ただいま、ジャンヌは?」
ミラエルとルシスは微笑み、ミラエルが
「アナタと同じ飛行の翼が生えたので、ダイダロスと共に訓練していますよ」
ルシスが
「新たに現れるデウスシリーズの力が楽しみのようですわ」
デウスギアは肯き
「そうか…今度、付き合ってあげようか…」
ミラエルが
「驚かせたいから、嫌がるかも」
デウスギアはフッと笑み
「そうか…それなら待つか…」
そこへ、玄関門から「ただいま…」とリグレットが帰って来た。リグレットの背中にはデウスギアと同じ金属の飛行翼が生えている。そう、リグレットもデウスギアからデウスシリーズを受け取った。
リグレットが落ち込んでいる姿を見て
「どうした?」
と、デウスギアが尋ねると、リグレットが
「また、説得に失敗して…」
リグレットは、エデンズ・アークの力の受け入れを拒否している貴族達の説得をしている。
デウスギアがリグレットの傍に来て
「気にするな。人間、そう早くに切り替える事は出来ないさ」
リグレットが
「良くなると、分かっているのに…。本当に、貴族の矜持とか、貴族の伝統とか、その為に民達が苦しんでいるのに…」
デウスギアが近付きリグレットの前にとあるデータの映像を開示させ
「これが現在、我々の技術と力を受け入れた地区達に流れている移民達の数だ」
リグレットが映るデータの数字とグラフを見て
「そんな日に数千万人って」
デウスギアがリグレットの隣に来て肩を抱き
「これ程の移民を受け入れても、我々の技術と力を持っている地区達には、なんら問題はない。直ぐに新しい機能都市が作られて、適合、調節、調和されてしまう。だが、出立者を出している領地の者達は面白くないだろう。そうなれば…」
リグレットは複雑な顔をして
「最悪、内戦が勃発を…」
デウスギアは肯くも
「だが、そうなる事がならないように努力はしている。焦らず行動しよう」
「はい」とリグレットは夫デウスギアに寄りかかる。大きなデウスギアの体がに寄りかかると安心感がある。
デウスギアは、自宅小城で家族と共に食事する。
デウスギアの大きなサイズに合わせて作られた小城は、デウスギアにとって過ごし易く。ゆっくりと家族との時間を楽しむデウスギアは、夜のとある時間に
「なぁ…ちょっと、変装して拒否している領地達の具合を見て行こうと思う」
ミラエルとルシスにリグレットは、静かに見詰める。
デウスギアは、膝の上で寝ているジャンヌを多腕の一つで優しく撫でながら
「少し、家を離れるが…良いかなぁ?」
ミラエルが
「問題ありませんわ」
ルシスも
「ええ…今後の為にその方が良いと思いますわ」
リグレットが
「どこへ行きます?」
デウスギアが
「サマリアの隣国、フラドルのパリス領地にある都市部へだ」
ミラエルが
「リグ、付き添いにお願い。私とルシスは子供の事で動けないから」
リグレットは肯き
「はい、任せてください」
デウスギアが
「護衛にミカヅチ達、雷神族を…それと…」
と、傍にお世話で立っている女執事シュトーリと機神族のメイド…アルメネを見て
んん…アルネメは…機神族だから目立つな。なら…
「シュトーリ」
と、デウスギアが呼ぶと
「は!」とシュトーリは胸を張る。
「シュトーリが必要とする最強の装備を持って、リグレットの護衛と世話について欲しい」
シュトーリが
「つけ!と勅令してください。全力でリグレット様の護衛とお世話をさせて頂きます」
デウスギアは微笑み
「そうか。武装は多めにして置け、何があるか…分からないからな」
シュトーリは胸に手を置き
「お任せを。宇宙戦争になってもお守り出来る武装で望みます」
デウスギアが戸惑いつつ
「ああ…うん。よろしく」
まさか…宇宙戦艦でも持ち出すんじゃあ…と不安がこみ上げた。
そして、出発当日。
デウスギアは、人サイズになり、顔の電子回路模様が取れないので、服装と合体した簡易的な鎧の姿にする。
となりには、見事に人族に化けたミカヅチと、シュトーリがいる。
シュトーリはアタッシュケースを片手に持っている。
そのアタッシュケースは特別だ。200メートルクラスの宇宙戦艦が幾つも余裕で収納できる特別な空間湾曲ボックスなのだ。
デウスギアは、確かに最強の武装をしろと言ったが、まさか、戦艦を収納しようとは…ちょっと引いていた。
リグレットも身支度を終えて、こうしてデウスギア達は出発をした。
◇◆◇◆◇◆◇
到着というより、近くの地区、フラドル王国の王都…と呼ぶには未来化した機能都市から、受け入れていない領地パリスへ、馬車ではなく、地面から僅かに浮いて動く浮遊式車両に乗って王都隣の領地へ向かう。
その道中、機能都市化したフラドルの王都へ向かおうとする者達がいた。
領地から逃れて来た移民達だ。
その格好は薄汚れていて…必死の形相だ。
それ程までに機能都市化していない地域は困窮しているのだ。
フラドル王都には、次々と来る移民へ、エデンズ・アークから緊急の物資を載せた宇宙戦艦が絶えず到着している。
デウスギアは、あまりも多すぎる移民達に、デットライン…バエルと相談していた暴走による相手の出兵暴挙の予想を過ぎらせる。
ミカヅチが
「これは、バエルと主様が予見していた事が近い内にありそうですな」
人型になったデウスギアの隣にいるリグレットが
「ええ…本当に最悪な事が起こるかもしれません」
リグレットの左にいる護衛 兼 アシストのシュトーリが
「どうして、理解しないでのしょうか…。その方が圧倒的に楽な筈です」
ミカヅチが
「それが人のサガ…いや、この世界に生きる知性体の性質なのだろう。ここの世界に生きる竜人やエルフ、獣人、魔族といった他の種族でも似たような形質を、我ら雷神達は観測している。全てが永劫に続くと思っている。残念だが、全ては永劫に続かない。絶えず変化して進歩する。己が変われるというのを認めないのだ」
デウスギアが
「人は…いや、知性がある者は、自分の行動に一貫性を持たせようとする。だが、それは…変化するという生命の本質ではない。人の意識はそれを受け入れる程、強く高くないのだ」
シュトーリが
「まだまだ、知性が低いという事ですね」
ミカヅチが皮肉な笑みで
「そういう事だ。知性が低い故に、全てが変わらないと勘違いして苦しんでいる。知性が高いという事は、様々な事を受け入れて自分を変化させるのさ」
デウスギアが微笑み
「だからこそ、お前達も、自分の道を見つけたら変化しなさい。ミカヅチ達やシュトーリ達なら、きっと素晴らしい明日を作れるはずだ」
ミカヅチも微笑み
「デウスギア様、その場所にも貴方様が共にいる。我々は…貴方様にとって家族なのですから…」
シュトーリが微笑み
「我らの大いなる父を捨てて、前になんて行きませんから」
デウスギアが肩を竦めて笑み
「全く、お前達は…優しいすぎる」
デウスギア達を載せた浮遊車は、パリス領地に差し掛かると、その入口の山間にある関所で止められた。いや、関所なんてなかった筈だ。同じ国内ゆえに、関所がある意味が無い。だが、そこは多くの兵士達が鎧に身を固めて、人の往来を制限しているのだ。
「どういう事だ?」
デウスギアは、浮遊式車両の窓から、鎧兜が被る顔を出す。
その関所の前には、領内へ行こうとする浮遊式車両達が溜まり、下りた人々が関所の兵に説明を求めている。
「どういう事ですか?」
その言葉に兵士が
「これは領主様の命令だ! 勝手に出入りする事はできない」
それに車両から降りた者達が困惑して
「聞いてないぞ! 昨日は、通れた筈だ! それに関所なんて無かったぞ!」
兵士が槍を構えて
「うるさい! とにかく、入れなくなったのだ! 反抗するなら! 攻撃する」
と、兵士達が抗議した者達に、槍を向けようとしたそこへ
「待ちなさい!」
デウスギアと共に下りたリグレットが声を張る。
リグレットは、人型の夫デウスギアと共に
「どういう事ですか?」
と、兵士に説明を求める。
兵士が
「キサマも反抗するのか!」
リグレットが懐からサマリア王家の紋章を取り出し
「わたくしは、サマリア王家第三王女リグレット・ラーナ・サマリア・デウスギアである事情の説明を求める」
兵士達が困惑していると、そこに隊長が現れて
「これはこれは、リグレット王女様。何用でしょうか?」
隊長は跪かない。
リグレットが隊長に
「ここはフラドル王国内であるぞ! 不当に関所を設けるなぞ、フラドル王家への反逆とみなされるぞ」
隊長がフッと笑み
「それはそれは、しかし…先に反逆したのは王家ではありませんか?」
リグレットが眉間を寄せて
「どういう事だ…」
隊長が
「デウスギアなる怪しい者を受け入れて、高貴なる王家を貶めた。そのような王家に大義なぞない! 我らはその怪しい者達から領民を守る為に関所を設けたのですぞ」
リグレットが驚きで
「汝は…民が不幸になる事が良いと思っているのか!」
隊長は
「民は、然るべき統治者によって幸福になるのが道理! それを壊すなぞ! 邪神の類いでしかない!」
リグレットが前に出て
「ふざけるな! 民の幸せを叶える為に、我らは」
隊長が剣のアーティファクトを抜き
「我らの王道を邪魔するなら、王女とて容赦はしませんぞ!」
リグレットに剣のアーティファクトを放った。
炎が迫るも、隣にいたデウスギアが右手を向け荷電粒子砲を放った。
炎を掻き消し、攻撃した隊長を吹き飛ばした。
隊長は数メートルも転がり、悶えている。
デウスギアは、リグレットの肩に手を置き
「戻るぞ、リグ」
リグレットは悔しそうな顔だ。
吹き飛ばされた隊長が起き上がり
「キサマ…邪神デウスギアだな…。お前が来たせいで…」
デウスギアが
「先に攻撃したのはそっちだ。それと…王道やらプライドやら、お前達には本当に呆れたよ。いいか、ホントの誇りってのはなぁ…誰かと共にあって、お互いが助け合って物事を為す事を誇りって言うんだ。お前等の王道やら昔からの伝統やら、結局は自分が偉いっていう考えは、傲慢っていうんだよ。憶えて置け」
隊長は、アーティファクトの剣を杖にしてデウスギアを睨み
「お前のせいで…私は、全てを失った」
デウスギアが、瞬間移動して隊長の前に来て隊長の頭を掴む。
「うぉ!」と隊長が驚いている間に、デウスギアは隊長の彼、ラデットの記憶をブレインスキャンすると、彼の妻は彼の子供達を連れて、親戚一同と共に、機能都市化した王都へ逃げてしまい、残されたのは彼一人だけだった。
家族に裏切られたラデット隊長は、デウスギアを憎んでいる。
ラデットは、暴れるとデウスギアは手を離し、ラデットはアーティファクトの剣をデウスギアに向ける。
デウスギアは、ラデットに
「私も、昔…全てを奪われた事がある。だが、それで誰かを憎んだ事は無い。全ての原因は…お前自身の中にあるんじゃあないのか?」
と、告げて後ろ、リグレットの元に瞬間移動してその場を後にした。
その後、関所の周りには派遣された機械化巨兵部隊が囲み、関所との緊張状態が続いた。
デウスギア達は、そこから数キロ離れた平原で、簡易ハウスを展開して宿にする。
その周囲にはダイダロス達、機神族と、バエル達、悪魔族がいた。
簡易ハウスの中でバエルがダイダロスを隣に、人型のデウスギアにリグレットへ
「昨日、一斉に…反感を持っていた領地達が、往来の通りに関所を儲けて人の出入りを制限しました」
デウスギアはそれを聞いて俯く。
ダイダロスが
「事態は…相当に、厄介な事になっています。このままでは…いずれ、武力衝突も…」
デウスギアが眉間を押さえて
「素手で向かってくる相手に、こちらは戦車か攻撃ヘリでの応戦なんだぞ。大虐殺になる」
バエルが
「これは完全に王国、ここを統治する国家に対する反逆です」
リグレットが
「他の王家は? 国は…?」
ダイダロスが
「なるべく、武力衝突での解決は回避したいと…」
デウスギアが額を抱え
「そうしたい。だが…」
バエルが鋭い目で
「最悪を想定しなければなりません」
そこへ稲光が走りミカヅチが来た。
「デウスギア様、最悪な事になりました」
デウスギアが厳しい顔でミカヅチに
「何が…起こった?」
ミカヅチが厳しい顔で
「先程の領地内を、我ら雷神族が調べた結果、残っている民達へ、犯罪組織共がスレイブ・チェーンという魔法アイテム…奴隷の首輪というモノを無理矢理に取り付けています」
バエルが眼鏡を押さえて
「堕ちる所まで堕ちましたね」
領民を奴隷化し始めたのだ。外道極まる。
デウスギアは頭を抱えた。
これが権力を握った者の末路だ。受け入れない貴族達は自分の権力を守る為なら最悪な事を平然と行う。犯罪者達を入れて領民を奴隷として永遠に家畜とするつもりだ。
浅ましく醜い。
リグレットは、人を人と思わない所業に絶句しかない。
ミカヅチがデウスギアに跪き
「デウスギア様、命令を…このような外道を行う者達に鉄槌を!」
バエルも跪き
「デウスギア様、勅命を…落とせと、これはもう…どうにもなりません」
ダイダロスも跪き
「デウスギア様の命令一つで、明日の朝には、全ての愚行を行う領地の開放が終わります」
デウスギアは頭を抱えている。
リグレットは、命じない夫の気持ちが分かる。
なんとか、穏便に、犠牲者がなく、したいのだ。
リグレットがデウスギアの手を握り
「アナタ…アナタ一人に全てを背負わせません。私も一緒に背負って行きます」
バエル、ミカヅチ、ダイダロスが『我らもです』と共にあると誓ってくれる。
デウスギアは苦しい顔をする。
余計に出来ない。こんな素晴らしい者達に罪を背負わせたくない。
そこへノックがされて
「フラドル王家の近衛兵です」
バエル達が立ち上がり、バエルが
「どうぞ…」
近衛兵は、最近開発された特殊装甲スーツに身を包んでいて、懐からとある書簡を取り出し
「陛下より…」
フラドル王ルイのサインと、ロウの印が押された書簡をデウスギアは受け取り目を通す。
バエルが「何と…」
デウスギアは
「今し方、他の王国達でも同様の反乱を鑑みて、反逆者への制圧を王達が話し合って…その案を、システム民主で民達に一斉投票を実践した結果、九割を越える肯定を得られたと…。よって、反乱の制圧に関して助力を願うと共に相談もしたいと…」
バエルが
「大義は揃っています」
デウスギアが
「いや、まだ…だ」
ミカヅチが
「他に何があるのですか!」
デウスギアが
「私が一人、反逆者達の元へ行く」
リグレットが
「ダメ! 危険です。行ってはダメです!」
夫を守ろうとする妻の反応を。
ミカヅチが怒りの顔で
「デウスギア様! 説得できるとお思いか!」
デウスギアが首を横に振り
「ムリだろう」
バエルが必死に叫び
「なぜ! そのような無謀を!」
デウスギアは冷静な瞳で
「私が囮になる。その間…この反逆を起こした各領地の処遇を、レールピア全土に生中継させろ」
ダイダロスが
「最後まで民意の選択を…」
デウスギアが渋い顔で
「それもあるが、これは戒めだ。現状を見ない愚かな者達が、どういう愚行を行うか…。これはレールピア大陸が抱えるべき、戒めだと思う」
デウスギアは未来を見ている。
未来の為に、このような愚行があった事を残す為に。
リグレットが
「わたくしも…」
デウスギアは首を横に振り
「リグがここにいれば、どんな事があっても戻ろうと思う。だから、私が帰ってくる道標として…居てくれ」
リグレットはデウスギアの手を握りしめ
「分かりました。必ず帰って来てくださいね」
デウスギアは肯き
「必ず帰ってくる」
バエルは額を抱え
「全く、デウスギア様は…」
デウスギアはバエルに
「バエル、迷惑ついでだが…反逆の領地に部下を連れて忍び込み、協力している犯罪者達の情報と」
バエルが頷きつつ
「制圧の号令が放たれた場合に、一斉に検挙する為に…ですよね」
デウスギアは微笑み
「ああ…頼んだぞ」
バエルが腕を組み、厳しい顔で
「後で、ミラエルとルシスに怒鳴られますな」
デウスギアが微笑み
「そうならないように、言って置くから」
バエルがデウスギアを見詰めて
「必ず、帰って来てくださいね。デウスギア様以外、仕える気は毛頭もありませんから」
「分かった」とデウスギアが頷くとノックがされて別の近衛兵が入り
「反乱を起こしている目の前の領地から、デウスギア様だけで、領地に来るように…と」
デウスギアは肯き
「では、行ってくる」
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