第7話

「アナタは、自分でも気づかない内に、彼に恋をしていたのよ。」

「?!」

ワタシは、病み上がりの上にアイツの変化とそれを促したアイツの状況を聞いて、かなり混乱していた。そこに母は、追い討ちを掛けるように、ワタシを驚かせる事を言ってきた。ワタシは、母にその台詞の真意を問い質した。

「何を言っているの?」

「だからアナタは、アナタの気づかない内に、あの子に恋をしていたのよ。」

「ふざけないで!それって、こんな時に言う事なの!!」

「こんな時だからよ。アナタが、一つ成長していた事に、親の私が気づいたこんな時だからよ。」

「!?」

また驚かされた。ワタシが自覚していない事をワタシ以外の人間に言われ、ワタシは、もう泣くしかなかった。そんなワタシを母は、暖かく抱き寄せ、優しく頭を撫でてくれた。抱かれ撫でられているワタシは、とても心地好くなり、先程までのパニックが、嘘のように消えていった。ワタシが落ち着いたのを観た母は、そのまま話しを続けた。

「この3年、端から見てもアナタの中心には、確かにあの子が居たわ。アナタは気づいていなかったけど、あの子の事を話すアナタは、とても活き活きしていたわよ。私があの子の事を話そうとしたら、アナタは過剰に反応もしていた。…明らかにアナタの本心は、あの子を意識していたわ。」

「…それは、アイツを憎んでいて…」

「初めは、アナタの言う通りだったかもしれない。けど私は、何時しかアナタがあの子に恋をしているように思えてきたの。そして今日、アナタの涙を観て、確信したわ。」

「…涙?」

「知ってる?涙にも幾つか種類があるのよ。そして、さっきアナタが流した涙は、恋に関する涙だった。」

「違う。あれは悔し涙。悔し涙だよ。」

「どうして、悔しいの?」

「…置いてきぼりにされたようだった。」

「どうして、そう思ったの?」

「…ワタシが知らない内に、アイツは、大人になっていた。」

「…あの子の成長したのが、悔しいの?」

「違う。ワタシが、成長していなかった事が、悔しかった。でなきゃ、ワタシはアイツと対等に成れない。釣り合いが合わない!」

「憎んでいる相手と釣り合い?勝っているんじゃなくて?」

「!」

ワタシは、ハッとした。どうして勝ちたいではなく、釣り合いたいと思っていたのか。そしてワタシは、段々と思い出してきた。その事をワタシは、母に告げた。

「…本当は、友達になりたかった。だけどワタシは、…照れ屋で…素直になれないから…」

「だから、喧嘩をした。」

「…本当は、ワタシが謝らないといけないのに、ワタシが素直じゃないから…」

ワタシは、段々と気分が落ち込んできた。

「…疲れてきたの?じゃあ、また少し眠りなさい。何かあったら、また呼んでね。」

母はワタシに睡眠を勧め、優しくワタシをベッドに寝かせた。そして母は、そのまま部屋を出ていった。横になったワタシは、布団を頭から被った。そして、声を上げて泣いた。

「うぇぇぇぇーん………うぇぇぇぇーん…」

ただただ、悲しかった。さっきと違い、何も思わずに涙を流し、大声で泣き叫び続けた。

こうしてワタシの初恋は、終わった。

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