第3話

ワタシもアイツも一言も発しない、気が重い帰り道になってしまった。

ワタシは、アイツと歩きなが考えた。

「ワタシ、コイツとどうなりたかっんだろう?」

ワタシは今、アイツの事を他人から聞かれたら、何故か友達と言えない気がした。そもそもワタシは、何故コイツに話し掛けたんだろう。同じ歳頃の子が、新聞配達をしているのが、ただ珍しかっただけなんだろうか。本当は、直感的に友達になれると思ったから、声を掛けたんだろか。ワタシはワタシの中に、どうしてを量産をし続けたが、コイツの突然の呼び掛けで、それが止まった。

「おい、着いたぞ!」

気がつくとそこは、ワタシの家の前の坂道だった。ワタシは、コイツにお礼を言って別れようとしたが、コイツの突然の問い掛けが、そうさせなかった。

「オマエ、明日は居るのか?」

ワタシは、コイツの簡単な問い掛けの意味をつい考えてしまい、口の動きをあたふたさせてしまった。それを誤魔化す為、ついコイツに八つ当たりをしてしまった。

「突然、変な質問するな!」

「はぁ!?」

ワタシの唐突な台詞にアイツは、怒りの感情を引きずり出すような返事をした。さすがにワタシも失敗したと思い、すぐに謝った。

「ご免なさい。考え事をしていて、つい…」

「そんな言い訳が、通用するか!」

アイツは、怒り心頭を込めた口調で、ワタシを非難しだした。

「初めて会った時から思っていたけど、本当高飛車だよな、オマエ。いくらお客でも、そんな態度が許されると思っているのか!」

「だから、こうして謝って…」

「そんな台詞を吐く時点で、高飛車なんだよ、このアバズレ!」

「何よ、アバズレって?」

「親父が、『色々ダメな女のこと』と言ってたよ。」

「!」

ワタシはその時、頭の中に掛かっていた色々な力が、スッと抜けた感覚を実感した。その後、溢れんばかり怒りの感情が体中に満ち満ちて、それはアイツを殴るという行動で表現された。殴られたアイツも鬱積していたワタシへの感情を、殴り返すという行動で吐き出した。

それからはワタシもアイツも、互いを襲い合っていた。殴る、蹴る、引っ掻く、噛み付く、踏みつける。お互い言葉になっていない言葉で罵り合いながら、それぞれ持っていたお互いへの感情を、相手にぶつけた。他の事は、何も頭に無かった。ただ目の前の相手を自分の気に入る姿形にしたい気持ちだけが、お互いの今の行動の原動力となり、互いに襲い合っていた。

やがてワタシとアイツの周りに何人かの大人が取囲み、喰い込み合っている手を無理矢理引き剥がされ、取り抑えられてしまった。

「何をやっているんだ!」

その声でワタシは、ハッとした。ワタシを取り抑えて声を掛けたのが、ワタシの父だったからだ。そしてアイツの方を見てみると、よく家で父と会って話している人だと気付いた。その人に抑えられているアイツは、いきなり知らない大人に動きを封じられて驚いていたが、それでもワタシに襲い掛かろうと、懸命に蠢いていた。

「オッサン、離せ!」

しかし子供と大人の力差だけでなく、その人がアイツを抑え込む姿は、素人目で見ても完璧だった。

「無理だよ。彼は柔道三段で、抑え込みが得意だから。」

父にそう言われてもアイツは、まだ抗っていた。抗い続けるアイツを見ながら、父は溜め息混じりで言った。

「これは、巨頭会議だな。」

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