前日譚3:女王と女王
「このゴリラみたいな女がファラ?」
「はい。たまたまあの国にいたのを、無理やり連れてきたようです」
「ふ~ん」
ねじれた黒い角を持つ少女が、品定めをするようにファラを見る。
のっけからずいぶんと失礼な会話を側近と繰り広げているのは、社長候補の一人「プリンセス・フーダニット」――――ファラの一時的な主人となる相手である。
「あなた、言葉はわかるの?」
「わかる」
「まあいいわ、こんなのでもいないよりはましよ。いっとくけど、何の役にも立たないまま死んだら許さないから。最低3人は差し違える覚悟でいきなさい」
その態度はずいぶんとふてくされており、顔には失望の色が濃く表れている。おそらく、ほかの人々と同じく、野蛮な見た目のファラではあまり役に立たないだろうと思っているようだ。
ところが、ファラは彼女の態度に全く不快感を感じていないようだ。
むしろファラは、
(この子……凄い痩せてる。体も、心も、凄くボロボロ。こんな小さい子なのに、お母さんはどうしたんだろう)
「ねえ」
「うわっ!? な、なによっ!?」
突如、フーダニットの目線まで体を屈めて、グイっと顔を近づけたファラ。
自分の身体とほぼ同じ大きさの顔が迫ってきて、フーダニットは心臓が止まる思いだった。
周囲にいた警備兵も、慌ててファラを止めようとする。しかし、ファラはおもむろに胸を覆う毛皮の中をまさぐり、その爆乳の合間からバナナ10本の房を取り出した!
「これ、良かったら食べて」
「ちょっ!? どこから出したの、それ!?」
「それともこっちがいい?」
今度は胸元から干し肉の塊を取り出して見せた!
「お肉を食べると、元気になるよ」
「ファッ!? い、いや、だからそれが何で胸から……」
「子供は食べないと強くなれない」
ファラは、まるで手品のように次々と食べ物をフーダニットの前に差し出していく。最終的には、彼女の背丈とほぼ同じくらいの量の果物や穀物、肉などが山と積まれた。
これにはフーダニットのみならず、周囲にいた側近や警備兵も言葉を失った。
「大丈夫。私は、あなたの分まで頑張る。だから、安心して食べてね」
そう言って、ファラは立ち上がり、悠々と部屋を後にした。
「あ、ちょっと! だ、誰かあの女に「部屋」を案内してやりなさい! あんなのがうちの陣営にいると知られたら、色々な意味で危険だわ!」
我に返ったフーダニットは、慌てて警備兵の一人に、ファラの後を追わせた。
「まったく……とんでもないのが来たわね。しかし、これ……どうしよう?」
フーダニットは、積まれた食べ物の山を改めて見た。
「も、もしかして……これを食べれば、あの女みたいに……胸が四次元ポケットになるのかしら…………!」
そして、何かを盛大に勘違いしていた。
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