第3話

「ここは異界?」と口に出した時急に「ふ」と重力が無くなった。

 「な」力が効いていない?

 ものすごい勢いでヨルは地上に落ちて行った。

 やばい。

 やばい。

 やばい。

 と思いながらも自分が今どういう状況なのかわからない。

 「く」辛うじて目を開けると死地が見えた。

 あれにぶつかって死ぬの?

 地面が近付いていく。

 と、その時気付いた。

 ヨルは目を開け箒にしがみ付きながら力を集中した。

 そうしているうちにもどんどんと地面は近づいていく。しかし彼女は瞬き一つせずに地面を見ていた。

 良く見ると何かの建物が見える。

 あと少し。

 あと少しだ。

 と言い聞かせる。

 そしてその時は来た。

 「ここですっ!!」と力を一気に解放した。

 と、ヨルの体が空間に張り付くように固定された。

 まるで。

 まるで今まで忘れていた魔法が力を思い出したように。

 そう。

 「・・・」眼下にはなにやら灯りが見える。

 町というには小さいが村というには灯りが強い気がする。

 そんなことはどうでもいいと頭を振って現状を確認する。

 「・・・」ここが。

 百メートルだ。

 地上から。

 私の能力ではまだ、体重の二倍分の重さを百メートルまでしか浮かべられない。

 つまり、さっき魔法が使えなかったのは。

 「百メートル以上上に出てったってことですか」

 はぁ、と溜息。

 何か知らないがあんな低い場所に異界の門があるなんてと思う。

 空を飛ぶ魔女たる私たちが異界に行くことは珍しくない。

 空とは異界である。

 空を飛ぶとはつまり異界を行き来することを指す。

 私たちは空を飛ぶと言うよりは界と界を渡る魔女なのだ。

 だからこういう時にどうすればいいかも知っている。

 来た道を戻ればいいのだ。

 だが・・・

 私は見上げる。

 結構あるな・・・というか目測では何処から落ちてきたのか分からない。

 これ以上飛べない。ということは。

 「帰れない・・・?」

 風が冷たく吹いていた。

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