イフ
尾巻屋
もしも
もしも、僕が今よりもっとかっこよかったら
君は胸を張って外を歩けるのかな
もしも、僕が今より話し上手だったら
君は今より可愛い顔で寝ていられるのかな
もしも、僕がなんてそう思っちゃうからさ
星空、見えない、都会の空
初めて出会ったときのこと覚えてるかな
僕ら本当に小さくて無垢だったけな
自分の背より高い景色は空想で描いてさ
けらけらと笑って、それでよかったんだ
ああ、時は過ぎ
色彩をくすませて
埃っぽい 現実が
世界を塗り替えてしまうよ
もしも、僕が今より容量よかったらさ
君はもっと焦らずに生きていけるのかな
もしも、僕が今より絵が上手だったらさ
君は置き手紙を読んで笑ってくれるかな
くすくす
平日の朝、舌打ちで目覚める音
いつからだろう朝日が嫌いになった
自分の背はあまりにも低過ぎて
頭のつく空に押しつぶされてるんだ
ああ、電車がくる
人を詰めに詰めて
電子音にまみれた
線路を走る断末魔
もしも、僕が今より強い人ならさ
君はいちいち苦しまずにいられるのかな
もしも、僕が今より優しいやつだったらさ
君はもっと僕を好きになってくれたのかな
なぁ 答えてよ
なぁ 教えろよ
巡る季節 夏の通学路 冬景色 木々を包む霜
秋に落ちた紅の夢 春が来たら全部忘れちゃって
誰にも言えない好きのこと
自分勝手の生んだ独り言
何もかもに意味がなくなって
散ってゆく君は何者か
なぁ、なんでさ なぁ、なんでなんだよ
なぁ なぁ
何が悪かったんだ
もしも、僕が今より努力をするのなら
君は文句を言いつつも隣にいてくれたかな
もしも、僕が今より勇気があったなら
君のその笑顔をいつまでも見続けていられたのかな
にこにこ
イフ 尾巻屋 @ruthless_novel
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