002 不協和音①Ⅱ
「そう言えば、
首を捻って顔を後ろに向けると、欠伸をしながら
しかし、なんで毎週買わされるのか。自分で買えばいいのにと思っていた。
「なんで
「知らないよ。颯ちゃん、
「面倒くさい人だな。あの人は……」
「だって、大学では今、バイオリンしているくらいだからネ」
「そうそう、実際はピアノの方がうまいのに全てを極めないと気が済まないとか。訳分からないよ。バイオリンの次は指揮者だっけ? 結局、あの人は何がしたいんでしょうね。頭の中を一度でもいいから解剖してみたいですよ」
本当にどうしようもない人だ。
鈴は、棚に置いてあった飴玉に手を伸ばす。
「それ、この前、私が言ったら子供は知らなくてもいいって言っていたヨ。子供は子供らしく
「ま、その体型からしたら誰がどう見ても子供にしか見えないけどね……」
「何か言ったアルか?」
「いや、何も言ってません……」
「じゃあ、そんな
と言って、人を見下すような目をしながら、鈴は
そして、優翔は対抗して言い返す。
「それよりも鈴ちゃん。女の子が童貞とか言っちゃいけないですよ。もう少し言葉を選んでください。だから、学校でも変人とか言われるんですよ。子供、子供、子供、用事体型の子供がぁあああああ‼」
「ふざけるなぁああああ! 私は好きでこの体型になっているわけじゃないネ! 後五年、いや三年もすればダイナマイトボディになる予定アルヨ」
「そう言って、もう三年くらいたちますけど? この三年間でどれくらい成長したというんですか? ほら行ってみ?」
優翔は、意地悪そうに言いながら鈴をおちょくる。三年間、そのほとんどが何もかも成長すらしていないのが現状。
「優翔。他に言いたいことはないアルか? じゃあ、私の番でいいアルか?」
「ないね。結局のところ本当のこと言われてムキになって……。あーあ、恥ずかしい!」
「お前はもう死んでいるネ。この十秒後、世界がひっくり返るヨ」
「やれるもんならやってみろ!」
と言った瞬間、すぐに
「ぐはっ!」
鈴はその後、脛を蹴り、腹を何度も殴ってから押さえ技に入る関節は折れない程度に力を制限してあるが、優翔にとってはもう限界まで来ていた。
「ギブ、ギブぅううううう!」
叫ぶが、鈴は絶対にその手を緩めたりはしなかった。思えば、この三年間で一度も彼女に勝ったことが無いのである。
「ま、まさか……新たな技を覚えていたとは……」
「ふっふっふぅ……。私に掛かれば一日でマスターできるアルヨ! 目指せ、世界最強!」
「なんか、ポ〇モンマスターみたいな言い方しているような……」
毎回、繰り出す技が新作であり、それの試し打ちをされている。いや、サンドバッグ状態にされている。凡人の優翔にとっては、最後に大量の絆創膏と青い痣が出来ている。
私立
鈴はスポーツ科の特待生であり、テニスのトップ選手である。だが、他にもやりたいことがあり、様々なスポーツを全てやりつくしているのだ。格闘技から体操、球技までの技術を持っている。
ある意味、学校の有名人であるのは間違いない。と言うよりも憧れの的だろう。ファンクラブに何十人いてもおかしくない。
「鈴ちゃんは、試合とか出なくていいんですか? ここ最近、優勝とかしてないですよね」
優翔の素直な意見に対して、鈴は締め技を辞める。立ち上がって、ベットの上に飛び乗ると横になる。
「そんなのどうでもいいヨ。私の勝手アルネ。あんなのいくらとっても結局は何も意味ないヨ。例えば、四大大会のジュニア大会なら別だけどネ……。でも、今はそんな気なんかさらさらないヨ。ま、優翔には関係ないけどネ」
鈴が言っていることが、本当に正しいのか。答えは出せなかった。
「ま、俺には関係ないんですけどね」
「それよりも早く飯くれアルヨ! 台所でも行くネ」
立ち上がって鈴が背伸びをする。そして、
トワライ荘の台所はリビングと共通の部屋になっている。和を取り入れた造りになっており、台所を除いて、ほとんどが床に畳が置いてある。皆で食卓を囲むように大きな円のちゃぶ台が置いてあり、目の前には大型の液晶テレビが置いてある。
「それで、今日の昼飯は何人分作るんですか?」
「さあ、知らないアルヨ。取り合えず、二人分でいいんじゃないアルか?」
「三人分よ!」
台所で食材を用意している優翔と鈴の目の前に姿を見せたのは、短いポニーテールに、背丈の高い綺麗なワンピースを着こなしている大学一年生の
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