12th

今週から舞台に向けての稽古が始まり。スクール内には普通のように緊張が張り詰めていた。

 「サユリ!もっと声出して!」

 ここ数日、サユリへの怒号がやけに多かった。先生は能力を伸ばそうとアドバイスしているが、サユリ自身精神的に来ているらしかった。言葉に出さずとも顔に滲み出ていた。今見るととても痛々しかった。

 周りの皆はそれなりに出来ていて先生は何も言わないけどサユリに対して嫌味が溢れつつあった。少しむかついたが、皆に悟られぬよう静かに抑えた。

 自分は先生に頼まれた通り、サユリが悩んでいるときはバックアップに回った。これだけは、今回何が何でも必死にやろうと決めた。何よりサユリを救う為に。


 あれから一週間もの月日が流れた。

 この一週間で様々なことをサユリに伝えた。過去に言えなかったこと。今回見ていて気付いたこと。全てをサユリに伝えた。

 だが、言っていたことは少しずつ出来るようになったが、また新たな壁に当たっていた。

 「こういう風にしたらさ、感情が出やすいと思うけれど。」

 そうサユリに言ってもサユリの笑顔は見れることは無かった。何がいけなかったのだろうか。わからない。

 だが、わかるのはサユリを一番追い詰めていたかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る