4th
ヒジキ君に追いつけない。
そう思うと、私のほうが長いことやっているのに、というしょうもないプライドが心から表情へとむき出しになる。このプライドが邪魔して上手いこと演技に集中できない。どうしてもヒジキ君が頭から離れない。どうやっても。
このままの環境で自分の能力が伸びるとは到底思えない。
よし、決めた。少しヒジキ君から距離を置いてみよう。そうしたら、頭を少しぐらい冷ませるかもしれない。そして、自分のことを冷静に分析できるかもしれない。
「こういう風にしたらさ、感情が出やすいと思うけど。」
ヒジキ君は気を使って、私にアドバイスをしてくれる。あまり自分のことを悲観的にとらえるのではなく、自分の弱点を克服するという気持ちで話を聞いた。そのため、今まで、返したことの無いような冷たい返事をしてしまっている。
遠くで先生が心配そうな目で私を見ていた。
帰り道、ヒジキ君がアイスを奢ってくれた。
「大丈夫?」心配する声でヒジキ君が覗き込んだ。
「う…うん…大丈夫。ヒジキ君とか先生の言ってたこと思い出して自分で考えてみる。」
私は当たり障りのないように返した。あ、そう…とヒジキ君が呟いた。
ヒジキ君はいつも優しくてすぐに甘えてしまう。ここは、自分で何とかしないと演技が伸びないと分かったからヒジキ君とは距離を置かなくてはならない。極力、ヒジキ君に頼りたくなかった。この行動が裏目に出ていないだろうか。少し、先生の心配した目が気になった。
別れ際、少しだけヒジキ君に相談をして別れた。その際、ヒジキ君は少し悲しそうな顔をしていたのを感じた。
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