2nd

 一通りレッスンが終わり一同は先生に集められた。 

 「今から舞台の選抜を発表したいと思います。」

 女の先生なのだが、低くそう告げた。

 周りの空気がピンっと張り詰めた。一同が先生の口に集中する。

 「まずは、脇役から。OOO役、A。OOO役、B。OOO役、C。…」

 次々と名前が読み上げられていく。いつもの中心的な人物達の余裕の空気が無かった。何か今回は違うと感じたのか、わからないが自分は無いだろうと感じた。

 今回もまたスタッフか。いつも通り飲み物の用意、小道具、衣装などを手伝わなければならないのか。そう思うと少し胃もたれがした。

 「OOO役、Z。続いて、準主役。U村サユリ。」

 周りの沈黙がスクール生の感情の表していた。

 サユリは今まで大きな役を貰ったことが無いと聞いていた。そのサユリがいきなり準主役を勝ち取った。

 良かった。自分の名前が呼ばれるくらいに何故か緊張していたから安堵の気持ちが胸を一杯にした。サユリの努力が報われた。それだけで自分の名前が呼ばれなくても嬉しかった。

 しかし、この沈黙はまたやってき来た。

 「それでは主役を発表します。今回の舞台の主役は…S田ヒジキに務めて頂きたいと思います。」

 その場の空気が一気に極寒に晒された。

 今、自分の目の前で起きていることが不思議に思えた。自分の名前が呼ばれた。それは、とてつもない現実だった。まだ歴の浅い自分が主役に選ばれたのだ。

 一斉に皆がこちらを向いたため、恥ずかしくなり顔を伏せてしまった。

 「選抜外の皆さんは気を悪くせず裏方を頑張ってください。では、頑張って。選抜の皆さんはあとで私のところへ来てください。では、解散。」

 初めてサユリを含む選抜メンバーと一緒に先生の元へ向かった。

 「では。選抜メンバー、これ台本。毎週金曜に通し稽古するから。今回、歴の浅いS田が主役だから周りのフォローもお忘れなく。まぁ、多分完璧に仕上げてくるだろうけど。では、頑張って。あと、衣装係の方にも行ってやってくれ。それじゃ、解散。今日は終わり。皆にそう伝えて。明日は台詞から軽く合わせていくから。」

 そう言って先生は忙しそうにスクールを後にした。

 「すごいじゃん!ヒジキ!一緒に頑張ろう!バックアップは任せろ!」

 親指を立ててグットサインを作った。

 「う、うん。頑張ろう…」

 周りの目が少し怖かったが頑張ろうと思った。

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