すれ違い ~サユリ~

辛口聖希

1st

先週、スクールで舞台でやる主演・選抜のオーディションがあった。緊張したけど思うようにやれたしいいんじゃないか。心の中で一人呟く。

 今日はオーディションも終わり、普通のメニューだ。

 スクールの行道一人そんなことを考えながら歩いていた。途中で一緒にスクールに通っているサユリと合流し一緒に歩いていた。

 サユリとは幼馴染で小さいころからよく一緒に遊んでいたのを覚えている。高校生になったのにも関わらず記憶に新しい。小学校から高校までずっと一緒である。よく、二人で笑っているのだが友達以上恋人未満、そんな関係である。傍から見れば付き合っているのじゃないかというくらいだそうだ。お互い、そんなに意識はしていないはず。その、はず。

 「ねぇ。オーディションどうかな?緊張するー…あんまり上手くできなかったし、台詞は所々詰まるし…」サユリが伏し目がちに言った。その顔はいつものサユリの自信に満ちた表情ではなく不満の色に染まっていた。

 「大丈夫だよ。きっと、合格してるよ。」励ますように声を掛けた。自分でもこれくらいが精一杯だった。人を励ますのも得意じゃないし、あまり余計な口を叩くのもそれはそれで余計にサユリを傷つけることだけは避けたかった。

 「でも、ヒジキ君は先生に褒められていたし、周りから主演の確信があったし…」

 「たまたまだよ。それに、あんなけ頑張ったじゃん。ちゃんと評価してくれるよ。」

 息が詰まるくらいに悲しさが込み上げてきた。

 確かに周りからの称賛はすごかった。だが、それは役の抜擢とは違うのではないか。そう感じていたが、サユリにとっては気になることらしい。

 そうしているうちにスクールの前まで来ていた。道のりというものは案外短いもんなんだな、と気楽に思った。横を見てみるとサユリの首はまだ曲がっていた。

 「大丈夫。万が一落ちてもまた一緒に頑張ろう。今度は先生を見返すくらいに。」

 そう言ってサユリの背中を軽く叩いた。顔を上げたサユリの顔が少し明るく見えた。

 「今度はみんなを見返すくらいに…」

 少し規模がでかくなっていた。

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