第2話 じゅかいちほー
飛行機事故に巻き込まれ、謎の島・・・?
ジャパリなんとかのクリホクエリアにやって来た
そして、生まれた時から右腕が無いというジェンツーペンギンの
ジューンと出会う。
私は、取り敢えず人を探す為、手がかりがあると思わしき図書館へ向かうことにした。
目を覚ましてから、彼女に出会い早いものでもう黄昏時だ。
「ハァ・・・」
「...どうしたのツバサちゃん?」
「お腹空いた・・・」
この島に来てから、水しか飲んでいない。
そろそろ、空腹が襲って来た。
「うーん・・・。ボス、いないかなぁ・・・」
「ボス?」
「えっと...、青くて、サンカクの耳で、ちょこちょこ歩く...」
「これ?」
私は抱きかかえて、見せつけた。
「そうそう...。その青くて一つ目の・・・。
って、そ、それセルリアン!!」
「えっ?何?」
彼女は怯えたように後ずさりした。
「その、あの、あれ、た、食べられたら元の動物に戻るんだって・・・
だ、だから、フレンズは、た、倒す・・・」
しどろもどろな言い方で私に説明した。
「ボスじゃないの?」
「ち、違うよ!」
「なんだ...」
期待外れだった。
セルリアンの石の部分を鷲掴みにして、
遠くの大木へ向かってぶん投げた。
飛んでいったセルリアンは、一度木にぶつかった。
重力の法則で落下すると、何かが砕ける音がした。
「ツ、ツバサちゃん・・・」
ドン引きしたような目で私を見た。
「うーん、ハンドボール投げは得意なんだよね。
なんでか知らんけど...」
軽く肩を回した。
「すごい...!私、セルリアンなんて・・・
倒したことないから・・・」
引かれたと思ったら逆に、尊敬された。
その後暫く歩いたが一向にボスとも出会えないし、
ゴールドスプレーを撒いたかの様にフレンズも現れない。
結局、日が暮れ夜になってしまった。
森の開けた場所があったので、ここで一夜を過ごそうと彼女に提案した。
(うぅ...、空腹...)
「ジューンちゃんは、お腹空かないの?」
「あんまり、食べないんだ」
俗に言う、少食なのだろうか。
私の場合は、飛行機の時間がギリギリで朝食を少なめにしてきたからかもしれない。
空を見上げ、目を閉じて寝ようとした時だった。
ガサガサッ...
「あっ、ボス」
「...!?」
その声で私の眠気はパッと吹っ飛んだ。
上半身を起こし、見た。その目線の先には、青い三角の耳に、獣の尻尾・・・
「ハジメマシテ。ボクハラッキー...」
「うわああああ・・・!神様ッ!!」
私はついボスを思いっ切り、ぬいぐるみの様に抱きしめた。
「...君ノナマエヲ、教エテクレルカナ」
「村山ツバサです!早く食べ物を...、食べ物を...」
「ワカッタカラ、チョットマッテネ。ボクヲ離シテネ...」
じゃぱりまんを籠に入れ持って来てくれた。
一先ず、飢死は避けられた。
お陰でグッスリと眠ることが出来た。
「ツバサちゃん...、よっぽど疲れたんだね...」
静かに寝息を立てるツバサの元にゆっくり腰を下ろした。
「・・・ボス?」
ピロピロと機械だけに奇怪な音を出す。
「個体異常確認...、クリホクIR-1458機ヨリ、
セントラルメインセンター...、応答セヨ...、応答セヨ...、信号ヲ、受信デキマセン...」
目を点滅させるボスの頭を、左手で撫でた。
「私の腕はどうしようもないよ。ボスでも。
それは私が一番分かってるもん...」
深く、溜め息を吐いた。
「...死のうと思ってセルリアンが多く出る海岸に来たけど、
いたのは、ヒトだった」
絵本を読み聞かせるように、小さな声でボスに語った。
「ツバサちゃんと出会わなかったら、今頃私...」
目を閉じ、意図的に瞬きをした。
「...もうちょっと、生きてみよっかなって」
言葉を交わさない事を知っている。
ボスに対して微笑んでみせた。
「・・・おやすみボス」
朝になり、目を覚ますと、その景色の変わりように驚いた。
「えっ・・・?何ココ、どこ?」
当りが一面霧で覆われた様に、真っ白。
右か左もわからない。
「ん...、あれ?」
ジューンも目を覚ました。
「ココハ、じゅかいちほーダヨ。
営業時間ニナルト霧ノ出ル仕掛ケデ、人気ナンダ。
ボクガ案内スルカラ、マカセテ」
二人は顔を見合わせた。
図書館を目指す為には、取り敢えずここを抜けなければいけないだろう。
(てか、じゅかいちほーって・・・)
樹海と聞いて思い浮かぶのは富士の樹海。
自殺者が多いとか、そういう不穏な噂を耳にする。
道標もないので、ボスのガイドに従うことにした。
深い霧の中を進む。
ボスはゆっくり歩く。時折、後ろをチラッと見ながら。
(本当にこっちで合ってるのかな・・・)
私は疑心暗鬼になった。
ジューンもきっと同じ気持ちだろう。
「ねぇ...、まだ抜けないの?」
「....」
私はいつまでたっても抜け出せないこの霧の森にイライラしていた。
「ツバサちゃん、落ち着こうよ。しょうがないよ...」
「んー...」
歯がゆい気持ちを感じていた時だった。
「!!、ボス、ツバサちゃん、止まって!」
ジューンが唐突に声を上げた。
「な、なに!?」
ドンッ!!
何かが落下した音が聞こえた。
「ア、イテテテ...」
声がした。その元へ近づき声を掛けた・・・
「だ、大丈夫?」
「あー、まあ、たぶん...」
自信無さげな声で答えた。
茶色と黒の髪の毛に二つの獣耳。
眠たそうに目を半開きにしている。
「あの、あなたは...」
「ヤマネダネ。木ノ上ニ住ム、動物デ、夜行性ダカラ昼ハ眠ッテイルヨ。
尻尾ヲ強ク掴ムト、体毛ト皮膚ガ抜ケ落チテ、骨ダケニナルンダ。
外敵ニオソワレタ時ニ、役立ツト、考エラレテイルヨ」
「あー、ボスが喋る...。珍しいなぁ...。たぶん...。
あぁ、自分ヤマネって言います...、恐らく」
ポリポリと頭を掻いた。
気の入らない、ふにゃふにゃした奴だ。
「わ、私は村山ツバサ...。ツバサでいいよ」
「ジェンツーペンギンのジューンです...」
「うーん...」
意識がハッキリしていない様だ。
「ふぁあ~・・・」
大きな欠伸をする。
「ツバサちゃん?って、フレンズ?」
「いや...」
「そっかぁ・・・」
消化不良でスッキリしない。
「あの、ヤマネさん。
迷ってしまったんですけど、道を知りませんか?」
ジューンが尋ねると、腕を組み、うーんと言いながら上を見上げた。
「・・・・」
「・・・・」
口が開くのを待つが、回答が来ない。
もしかしたらと思い、私はヤマネに顔を近づけた。
「クゥー...、クゥー...」
「寝るなっ!!!」
つい、大声で叫んでしまった。
「あっ...、スミマセン...。
道を知りたいんですよね...、たぶん...。
それなら、ウサギコウモリちゃんが詳しいハズですね...。たぶん...」
「ウサギコウモリさん?ってどこにいるんですか」
ジューンは引き続き尋ねた。
「あの子は昼間この森をパトロールするから、たぶん...
あっ、確か、呼びたいときは音を立ててって・・・
言ってたよーな・・・」
「音?どんな音なの?」
「何かを三回叩くんだよぉ...。なんだったかなぁ...」
また、腕を組んで天を仰ぐ。
「ねぇ、また寝ちゃ...、ハッ」
「どうしたの?ツバサちゃん」
顔を覗き込む。
「一つ...、試してみたい事が」
私は、再度ヤマネに顔を近付け、寝ていることを確かめる。
そして・・・
バシッ!バシッ!バシッ!
「ツバサちゃん!?!?!?」
ジューンが声を上げて驚く。
「ああああああああああああああッ!!!!!」
ヤマネは鼓膜が破れそうな声を上げた。
「うるさっ!!」
私も耳を咄嗟に塞いだ。
「ちょっと、フレンズに暴力はダメだよ!!」
「だって、しゃあねえよ!」
山形訛りで突っ込んだ。
「痛いよおー・・・、いきなりー・・・」
少し強く叩き過ぎたかもしれない。
「ごめんごめん...、でも、これでウサギコウモリがやってくるかもしれないし...
アナタだって、尾を強く掴まれるよりはマシでしょ?」
「そういう問題じゃないよぉ...」
頬を何度かヤマネは摩った。
「なんでしゅか!!あの声は!!大地を引き裂くような、大声は!!」
「おっ、噂をすればなんとやらね」
上空から、声が微かに聞こえたので私は空を見上げた。
「ツ、ツバサちゃん・・・、手荒過ぎるよ・・・」
「アワ...アワワワ...」
何故かボスが狼狽していた。
上空からウサギコウモリが木の上からぶら下がった。
器用な曲芸師みたいだ。
「ヤマネちゃん!?っと、だれでしゅか?」
「私は村山ツバサ。ちょっとこの霧でさあ、
出口まで案内してもらないですか」
「ウサコー聞いてよお...、このヒトがぶっ」
ジューンは左手でヤマネの口を塞いだ。
「あは・・・、あはは・・・」
愛想笑いを浮かべて、ウサギコウモリを見た。
これで自分も共犯者の一人だ。
「まー・・・、いいでしゅけど...、変なコ達でしゅね・・・」
困惑した顔を浮かべた。
まあ、無理もない。
ヤマネにお詫びと別れを告げた後、
私はボスを抱きかかえ、ウサギコウモリの先導に従った。
ジューンもその後について行った。
歩いている途中。
「・・・そういえば、ジューンさん?」
「は、はい?」
「右の手・・・」
私はその質問を聞いて、不安に思った。
彼女にとってはあんまり、突っ込んでほしくない所、
はぐらかした方がいいのだろうかと、迷った。
「あっ...、ちょっと、私他のフレンズと違うんです。
だから、何か治す方法がないかなーって、図書館に向かってたんです」
と、ジューンは自分の口から説明した。
「大変そうでしゅね...。図書館に行くのなら、しつげんを通って行った方が近いでしゅ。後もう少しで抜けるでしゅよ」
コウモリは超音波で自身の居場所を確かめるとかなんとか、聞いた事がある。
フレンズ化してもその能力は健在なのだろう。
「そう言えば、ツバサさんは何のフレンズでしゅ?」
「あー・・・、フレンズじゃなくてヒトなんだよね」
「はぁ・・・。ヒト?」
また腑に落ちない様な言い方をされた。
「ヒトっていないんですか?」
「聞いた事ないでしゅ...。長らくパトロールをやってましゅが、
ヒトはアナタが初めてでしゅ」
「ふーん...」
やはり、ここにヒトはいないのだろうか。
そんな疑問を抱えたまま、霧の森を抜けた。
「どうも、ありがとうございます」
ジューンは頭を下げた。
「迷うコは偶にいましゅから。この先も気を付けるのでしゅ」
そう言って、ウサギコウモリは深い霧の森へと戻って行った。
「私達って変なコンビだよね」
ふと、思ったことを口にした。
「えっ?」
「唯一のヒトと、右腕の無いペンギン」
「そうだね」
彼女は笑ってくれた。
その顔を見て、私も笑い返した。
お互い軽く息を吐き、変人コンビは図書館へ向けて歩き始めたのだった。
「んー?何だろうこれ・・・」
長方形の物体を拾った。
色々触ると、モニターが付いた。
「わー...、すごい!すごいなぁ!!
・・・、でも誰のだろう?」
鼻を近付け匂いを嗅ぐ。
「・・・こっちかな!」
彼女は尻尾を振りながら、そのモノの持ち主を追った。
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