禍台子

第61話

浩二は驚きで口をあんぐりさせていた。俺がクイズ番組に、なんて思いもよらないことだった。しかし夏川の話はどんどん進んでいく。

「出演するかどうかは海野さんに決めてもらってかまいません。ただ是非出て見て欲しいです！一回でいいのでクイズ番組の楽しさを知ってもらえればいいなと思います。もし、出演して頂けるならプロデューサーに海野を紹介して話を進めさせてもらいますけど、どうしますか？」

「ちょ、ちょっと待ってください。急な話すぎて頭が追い付かないので一旦保留にさせてもらってもいいですか？」

「ええ、もちろん！でも、いいお返事待ってます。海野さんにはお礼がしたいので、是非クイズ番組に出るチャンスを活かして欲しいです」

「わかりました。決まったらまた連絡します」

浩二は一呼吸置いて電話を切った。

加奈子が不思議そうな顔でこちらを覗いてくる。

「どうしたの？なんか焦ってたけど誰から？」

「俳優の夏川健人さんからなんだけど」

「えっ！？夏川健人？なんで？知り合いなの？」

加奈子が飛び上がって驚く。それもそのはずだ。今までずっと俺のことを知っていて普通の一般人であることをよく分かっている加奈子が、急に俺に芸能人の友達がいるなんて分かったらそれは驚くはずだ。

浩二は夏川との出会いのことから加奈子に詳しく話した。話を聞いている間、加奈子は終始驚きっぱなしで、目が飛び出そうなくらいに目を丸くしていた。

「そんなことがあったんだ！知らなかったー！」

加奈子は驚きで口を押さえて小さく叫んだ。たしか加奈子は夏川健人が結構好きだったはずだ。それは興奮するわけだ。

「それでそれで、その夏川健人さんからなんで電話があったの？」

「なんかあのクイズ大会を見てたんだって。それで俺にテレビのクイズ番組に出て欲しいって」

「嘘！なにそれ、すごいじゃない！出よう？絶対楽しいよ！」

「でも俺さすがに緊張するかも」

「大丈夫だって、浩二の能力なら出来る、私たちでまた練習しよう？そしたら完璧だよ！」

「そうだな、うん」

加奈子は目を輝かせて浩二の腕を揺すった。おもちゃをせがむ子供のように願う加奈子は確かに可愛かった。浩二は心に決める。クイズ番組に出よう。上手くいくかはわからないが、俺の能力ならなんとかなるはずだ。

浩二はこの喜びを誰かと分かち合いたかった。そしてふと思い出す。あの神社で願ったのが能力として現れたのだとしたら他にも能力を得られた人がいるかもしれない。探して話してみよう。

そうして浩二は神社についての掲示板を探し当てるのだった。