第51話

日常に変化が訪れたのは数日後だった。

プリペイドカードが無事届き、何に使おうかと考えている頃携帯に電話がかかってきた。

知らない番号に首を傾げながら電話を取る。


「お忙しい中失礼します。私◯◯株式会社のクイズアプリ担当者でございます。先日は全問正解おめでとうございました」

「ああ、ありがとうございます」

「それで今回お電話差し上げた件なんですが、海野様のクイズの解答時間の成績が上位でございました、よろしければ今度オンライン生放送で放送するクイズ大会にご出演頂けないかと思いまして」

「クイズ大会ですか?」

「はい、10名にご参加頂き、優勝者には現金30万が贈られます。顔出しが嫌ならマスクや仮面をしていただいても結構ですので、いかがですか?」


浩二は一瞬迷ったが、賞金に惹かれるものがあった。さらにこの話を加奈子にしたら絶対参加するというに決まっていた。面白いことが大好きな性格だ。こんな滅多にない機会もったいないと言うに違いなかった。


「じゃあ参加します」

「本当ですか?ありがとうございます!それでは詳細をお話し致しますね」


クイズは早押し形式で10人が並んで四択問題を解き、ポイント先取で優勝を決めるというものだった。問題の先読みをしなければいけないなら難しかったが、四択の選択肢を選ぶだけというなら自信が持てた。

早速加奈子にクイズ大会に出ることになった旨をメッセージで送る。しばらくすると、すごいすごい!という返事と共に喜んでいる可愛いスタンプが送られてきた。

加奈子が本当に喜んでいる時に使うものだ。

浩二はそれを見て微笑んで仕事に出かけたのだった。



仕事の休憩時間、一緒だった先輩社員にクイズ大会のことを話す。先輩を驚かせたいと思ったからだ。


「鳥塚さん、俺今度クイズ大会出るんですよ」

「は?クイズ大会?」

「そうです、賞金30万ですよ」

「えっそういうガチのクイズ大会なの?」

「企業タイアップのクイズ大会です」

「え?何めっちゃすごいじゃん。海野クイズ得意だったっけ」

「いや、そういう訳ではないんですけど、目覚めたんですよ」

「目覚めたって何だよ。何にせよすごいな、賞金取ったら飯おごってくれよ」

「取れたらいいですよ、取れるか全然分かりませんけど」

「いやお前そういうの運良さそうだから信じるよ」

「ありがとうございます」


鳥塚は浩二の背中をばしっと叩いて激励した。浩二は鳥塚のさっぱりとした性格が好きだった。嫌味なく素直に受け止めてくれる。そんな所が先輩として自分もそうなりたいと尊敬している部分だった。

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