第52話

それから浩二はクイズ大会まで練習をすることにした。毎日仕事終わりに加奈子に問題を出して貰う。それに出来るだけ早く正解する。それだけのことだったが毎日繰り返すだけの価値があった。それまで皆無だったクイズ能力が少し上がり、問題の予測をすることができるようになった。クイズの知識も増え、多少はネットに頼らなくても分かるのだろうというくらいにはなった。勿論試していないのでわからないのだが。


クイズというのは案外面白いものだ。今までテレビのクイズ番組をたまに見る程度しかなかったが、実際にやってみると奥が深いと感じられるものだった。勿論知識があれば解けるというのが当たり前だったが、様々な問題があり、国語、歴史、芸術、芸能など分野は様々に分かれていた。全く分野が違う為使う知識も全く違い、検索するのも随分一転して感じた。脳みそとネットが繋がっているので問題はないが、もし普通に検索とするとなれば大分仕様が変わってくるだろう。

加奈子の方も大分進化していた。問題を出題するにつれて、クイズ大会に出てきそうなひねり問題を入れてきたり、早押しに対応できるような画像問題を入れてきたりした。画像というのは一つの課題だったが、今の時代画像検索もできるのでひとまず問題ないようだった。心配なのは目に入った画像の情報と、調べたい画像の情報を一致できるほどしっかり観察出来るかという所だったが、練習するにつれ精度は上がり、画像をつぶさに見る、ということをしっかり出来るようになっていた。


今日は何をしようか。仕事は休みだし加奈子は夜勤に向けて就寝中だ。とりあえずご飯でも食べようと駅前を目指して出掛ける。家の扉をくぐると生暖かい風がぬるりと首の周りとすり抜けていくのを感じた。もう春も過ぎ夏になろうという頃だ。季節の変わり目の微妙な時期の匂いがした。

スニーカーがコンクリートを叩く小さな音が踊る。休日の嬉しさで足取りの軽い軽快なステップの音がする。通り過ぎる人々も心なしか嬉しそうに見えた。

日常もクイズ問題を作ろうと思えばいくらでもふんだんに出来た。あの猫はキジトラ猫。似たような模様はリビアヤマネコにある。

あの電信柱はだいたい12m。そんなことを考えながら歩く道のりは情報が豊富で楽しく思えた。

ネットというのは便利なもので顔を見ればその人の情報を得ることも出来た。SNSにのっている顔写真と照らし合わせて画像検索すればうまくいけば名前や情報を知ることが出来た。顔の向きや、写真の顔の隠し度によっては調べられない人もいたが、3割くらいは本名まで知ることが出来た。

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