第50話
「ねぇ、こんなのあったけどどう?」
加奈子が差し出したのはスマホのアプリだった。難解クイズ、と書かれているそのアプリは単純なもので、時間制限の中でクイズを何問正解できるか、という内容だった。10問成功者には一万円のプリペイドカードと書かれている。
企業とのタイアップアプリで期間限定のそれは非常に難解に出来ているらしく正解率1パーセントとでかでかと書かれていた。浩二はごくりと唾を飲む。どんなに難しくても浩二には出来る。
この能力は頭とネットが直接繋がっている。つまり普通のパソコンのようにキーボードで打ち込む必要がない分ノータイムで検索することが出来た。頭自体がネットであるのだ、脳が得た情報がそのままネットにプールされ自動的に検索出来る状態になっているので時間はかからなかった。
「やってみよう」
浩二は加奈子の携帯を受け取り操作を始めた。勿論自分の脳内でやることもできたが、こっちの方がやはり現実感があってわかりやすいのでスマホを使うことにした。
開始ボタンを押しクイズが始まる。タイマーが動き出し、クイズが写し出される。四択問題になっているそれは、確かに調べている暇はないほど制限時間が少なく、浩二でないと調べ切れないだろう問題だった。
一問一問をしっかりと選択して10問が終わる。終了画面には、おめでとうございます!全問正解!と書かれていた。その後、プリペイドカードの送り先入力画面にうつる。
横から画面を眺めていた加奈子は手を叩いて喜び、すごいじゃん!と叫んだ。
嬉しそうに笑い、浩二のスマホを持っていない方の手をぶんぶんと振り回す。
「浩二すごい!本当に出来ちゃった!」
「ま、まぁこのくらい余裕だよ」
「たったこれだけで一万円だよ?めっちゃすごくない?」
加奈子は本当に嬉しそうに浩二に笑いかけた。加奈子は元からこういう人間だった。どんな小さなことでも浩二が何かするとすごいと褒めてくれた。そんな彼女の優しさが好きで一緒にいる部分もある。それだけじゃなく自分のことのように喜んでくれる彼女の性格が可愛らしくて好きだった。
目の前にいる加奈子は嬉しそうに小さく飛び跳ね満面の笑みを浮かべている。
細身で小柄な体格の彼女は嬉しそうにすると本当に幸せそうに見えるので良かった。
「一万円ゲットしたし、明日は焼肉でも行こうか」
「いいね、それ!」
浩二は隣で子供のように喜ぶ加奈子が愛らしくなって思わず抱きしめた。
「ちょっと何浩二〜」
「いいじゃん少しだけ」
「もーなんか恥ずかしい」
照れる姿もまた可愛いと思ってしまった。浩二はかなり重症な加奈子溺愛者かもしれないと思う。
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