第3話RPGでのありがちなパターン その1

ザッ ザッ ザッ


樹海の中からどう考えても生物の出すことのできない遠間隔の足音が鳴り響いていた。その音の正体は、神様からの身体強化を施された相良伊織だ。一歩一歩の音の大きさに比例してジャンプ力も上がっているのだ。




「フキの奴、何が身体強化が微々たるものだよ。明らかに人間離れしてるだろ、コレ」


確かに神様からしたらこの程度の身体強化は微々たるものなのだろう。しかし人間サイズで表すと軽いパンチでも近代兵器に、それが本気ともなれば核兵器に近い威力になってしまうのだ。その事もあって、身体強化とはとても扱いづらい能力なのである。




「まさか身体強化での手加減を覚えるだけで三時間も掛かるとはな、、、」


余りに扱いにくい能力の練習を思いだし、苦笑しながら呟いた。




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それからしばらく進んでいたその時、伊織の耳に普段聞き慣れない悲鳴が聞こえた。その声に伊織は昔流行っていたゲームのストーリーが思い浮かんだ。


「何かデジャヴを感じるな~、、、」


若干このあとの展開に想像しつつ、その声の方向に向かって跳躍した。




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「は~、、、やっぱりこうなるよね」


その視線の先では、見た感じ貴族の乗っているらしい馬車が山賊らしき集団に襲われていた。




「悲鳴を聞いて駆けつけたら山賊に襲われてたっていつの時代のゲームだよ。もしかして悲鳴ってフラグの1つだったりするのか?」


木の上で1人愚痴りながらその光景を静観していた。本当は助けた方がいいんだろうけど死んだら即終了+相手は曲刀や斧を持った十数人の男達というコンボだ。いくら身体強化の特訓をしたとはいえ、手加減出来なかった場合を想像すると容易に手を出せないでいた。




まてよ?あいつらを倒すだけなら身体強化じゃなくてア・レ・の練習に使えるんじゃないか?


伊織の言うアレとは防具の説明を受けたときにフキから教えてもらったことだ。




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「そういえば伊織君言い忘れていたんだけど、この世界には魔法が存在する。まぁ一口に魔法といっても実際は二種類あるんだけどね。1つは適性さえあれば誰でも使える詠唱魔法、もう1つは数少ない人間だけが持っている特殊な固有魔力を使って発動する固有魔法。君には固有魔法を付けておいた。これはボクがもっと楽しめるようにチート級にしてた。ズバリ、君の固有魔法は【模倣コピー】だ!!」


ドヤ顔でそう言ったフキに、なに言ってんだこいつ、という視線を送る。




「【模倣コピー】がチートってどー言うことよ、要するに他人の真似が出来るってだけだろ」


その言葉に、フキもなに言ってんだこいつ、という視線を返してくる。そしてやれやれと言った感じで説明を始めた。




「確かに【模倣コピー】っていうものはただの猿真似だよ。でもそれが魔力を使った【模倣コピー】となると話は別だ。魔力を使う【模倣コピー】は相手の全ての動きを完璧に真似る事ができる。それが例え個人特有の武術や魔法でもね。それこそがこの魔法がチート級である所以だよ」




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しかし、剣術や武術の心得など皆無な現代っ子の伊織が剣術を覚えるには一度剣を持った敵と相対しなくてはならない。つまり一度経験皆無の状態で矢面に立たなければならないのだ。




が、そこは神様クオリティーちゃんとサポートもしてくれていた。身体強化による肉体の強化に加え、視覚、聴覚、嗅覚、反射速度の強化もしてくれていた。つまり、常人離れした視覚で剣筋を捉え、そこから強化された条件反射と肉体で避ける事が出来るという、ある意味コレもチートなのだが、空気を読んで口に出さなかった。




とりあえず生きていく上でいつかは問題になる経験不足をここで補っておこう。伊織はそう考えたのだ。それと貴族を助けたともなればある程度の補償は出るだろう。今は金もないからそれも優先事項だ。




「とりあえずどうやってあいつらを倒すかなー」


頭をガリガリと掻きながら作戦を立てている伊織をよそに、山賊達は既に馬車に襲いかかろうとしていた。

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