回想②

私といてつまらくはないのかと、一度蛍に尋ねたことがある。私は蛍といてとても居心地がよかったけれど、蛍にとってはどうなのか。もしかしたら何か不満なことがないのかと不安を覚えてしまったのだ。友情というものはそういうところから壊れていってしまうことを私はよく知っていた。


蛍はやれやれといった感じで首を振った。

「あのねぇ清乃。私の性格上不満があればすぐに言うってわかるでしょ?」

「いや、それはそうかもしれないけどさ…。」

まだ出会ってそれほどたってはいなくても、それくらいは分かるほどになっていた。でも、

「でも、万が一何かがあるかもしれないかな、と思って。」

「まったく。つまらなかったらいつも清乃と一緒にいるわけがないでしょ?バカねぇ。」

なんだか姉にたしなめられる妹になった気分だった。たしかにあまり褒められた行為ではないと思う。友情をあえて確認するなんて。下手をしたらこれも友情を壊す一因になるのだ。それでも怖かったから聞いてしまったし、友情を確認できたのはうれしかった。

蛍は少し困ったような顔をした。

「そんなに不安なら一つ教えてあげるよ清乃。」

「なに?」

「ホタルはね、清らかな川にしか生きられないんだよ。」

なんだそれは。私の名前が清乃だからだろうか?そんな連想にはすぐに気付いたけど、それがなんだというのだろう?

難しい顔を作ってしまったらしく、蛍はクスクス笑う。

「ごめんごめん。からかってるつもりはないんだよ?」

「意味がよくわかんないんだよ。ホタルがきれいな川でしか暮らせないことと私たちのこととの間にどんな関係があるの?」

「ふふっ。どんな関係なんだろうねえ。清乃は真面目だなー。」

「もったいぶらずに教えてほしい。」

「いやー、そんなに大した意味はないよ。清乃はまっすぐでチャーミング、ってだけ。」

まっすぐでもチャーミングでもない私は、蛍の言葉にますます混乱した。

「やっぱりよく分からない。」

「いいよ。それで。自分のことなんてゆっくりわかっていけばいいんだよ。」

蛍は微笑んでいた。いつもニコニコしている彼女にしては珍しい笑い方だった。なんだか別人みたいだった。

「そのためにも、清乃はもう少し勇気を出して他の子と関わった方がいいと思うな~。」

「う、それはおっしゃるとおりかもしれない…。」

フフフ、と笑う彼女はもういつも通りに戻っていた。

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