第1話

私の住んでいるところの近くにはホタルを見ることができる場所が少ない。だから、少し山奥に入らなければならない。そこにしかホタルを見ることができる川がないのだ。その場所に行くためにわざわざ電車とバスに乗り継ぐ必要があった。面倒だけども仕方がない。

何度も確認をした道順で行けるよう慎重に切符を買って電車に乗った。平日の夕方だからか、電車の中には高校生がパラパラといたけれど、座る場所がなくなるほどではなかった。この駅から30分くらい乗っていなければならないのだ。ずっと立っていたくない。よかった。車両の真ん中の空いている席に座る。すぐに「閉まるドアにご注意ください」とアナウンスが流れ、ドアが閉まった。列車が発車する。

ぼんやりと窓の外を見る。夕焼けがきれいだった。「きれい」以外の感想しかなくて申し訳がなくなるほどだ。この分なら今夜は大丈夫だろう。

さあ、ホタルを見に行こう。蛍はいないけど。私一人で。

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