推理編 消えた凶器
「えっ、うそぉ!? さっきキョースケが持ってたの見たよ」
「絶対持ってたよね」
目撃者二人は強固に主張する。
五人で理科室の中をくまなく探したけれど、棒らしきものは見つからなかった。
「おかしいっ!」
「どこかに隠したんだ」
メイちゃん、ナツキちゃんが理科室前を離れたのはせいぜい二、三分。
俺たち五人が廊下を曲がった時には、すでにキョースケ君とタケル君は理科室前の廊下にいた。それ以降は視界に入っていたから、おかしな動きをしていないのも分かっている。
窓から投げ捨てた可能性もあるけれど、今は二十分休みだから真下の校庭では大勢の子供たちが遊んでいる。そんな所へ棒を投げ捨てたら、今頃は大騒ぎになっているはずだ。
「棒じゃなくて、何か振り回していたんじゃないかな。紐のようなものとか」
朋華も一緒に推理をしている。
「もしそうだとしても、かなり長いものだね。
教室の天井高さは三メートル以上と法律で決まってるから、あの照明を割るには背が高いキョースケ君でも百二十センチ以上の長さがあるものじゃないと」
「さすが、詳しいね」
「まあな」
これも昔の仕事が役に立っただけのことだ。
彼女と話をしながら、推理を練っていく。
「あっ、階段に隠してあるのかも!」
理科室よりさらに奥には階段があるのみ。確かに、そこへ隠している可能性もあるけれど……。
メイちゃんとナツキちゃんは階段へと駆け出して行った。
理科室の中では、朋華とリンちゃんが紐のようなものを探している。
「ねぇ、もう見当がついてるんじゃないの?」
探し物が見つからず、あきらめた朋華が顔を覗き込むようにして聞いてきた。
「うん、まぁ……」
「えっ、おじぃ分かってるんだ」
だから、
そう思いながら、黙って廊下へ出てみるとすぐに見つかった。
やっぱりな。
でも、どうやって……。
逃げることもせず、廊下で黙って立っている二人を見ていたら方法も思いついた。
たぶん、これで正解だろう。
そこへ階段の捜査を終えた二人が、肩で息をしながら戻ってきた。
「見つからなかったぁ……」
がっかりしている二人へ、朋華が言う。
「おじさんには隠し場所が分かったみたいよ」
水飲み場の前に七人が集まった。
「理科室の照明を割ってしまったのは、メイちゃんたちが見ていた通り、キョースケ君とタケル君だと思う」
「ほらー、絶対そうだもん。二人がやったんだよ」
ナツキちゃんが口をとがらせている。
男の子二人は相変わらず黙ったままだ。
「で、割った時に使っていた棒はどこに行ってしまったのか。
正解の場所を教える前に、ちょっとだけ話を聞いてくれるかな」
「では突然ですが、人が歩いている時、どの辺を見ているかわかる?」
「えー、何それ。前じゃないの?」
メイちゃんは、当然といった感じで答えた。
「そう、前を見ているよね。
けれど、まっすぐ前ではなくて少し下の方を見てるんだ。
立ち止まっている時でも、
「そうなんだぁ……。言われてみれば、そうかも」
朋華は目の高さに真っ直ぐ腕を伸ばしながら、確かめている。
「つまり、みんな無意識のうちに下の方を見ているんだ」
「だから?」
リンちゃんの声を聞きながら彼らに目をやると、観念したかのように
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