第2話 後編

春香の家で、春香の母親が手料理でもてなしてくれる。

食卓にならんだのは、生前に春香が好きだったものばかりだ・・・


「春香はしめっぽいのは嫌いだったから」

おじさん、おばさん共に、明るく話してくる。


俺も出来る限り、明るく話すが・・・

やはり悲しみは隠しきれない・・・

おじさん、おばさんなら、なおだろう・・・


春香に兄弟はいない・・・


春香の部屋で寝てくれと言われたが、さすがにそれは断った・・・

だが、「どうしても」というので、お言葉に甘えた・・・


春香の部屋は、まさしく年頃の女の子という感じだった・・・

ぬいぐるみが、所せましと配列されていた・・・


春歌の机のは、日記が置いてあった・・・

悪いとは思いつつも、読んでしまった・・・


「自殺の手掛かりがあるかも・・・」

そう思い読んだのだが・・・

3日しか、書かれていなかった・・・

(そういや、三日坊主だったな・・・)

少し笑みがこぼれた・・・


春香が使っていたベットに入る・・・

いつの間にか、深い眠りへと、落ちて行った・・・


「・・・くん、秋介くん」

その言葉に目が覚める・・・

そこには、春香の姿があった・・・


記憶の中よりも、とても女っぽかった・・・


「春香?」

「久しぶり、来てくれたんだ」

「どうして?」

俺は気になった・・・


「春香、なぜ自ら命をたった・・・」

「超級だね・・・」

「まあな」

春香は笑顔を見せる・・・


「わかった・・・教えてあげるね・・・」

本当に死んだとは、思えないほどにこやかだ・・・


「本当はね、自殺じゃないの・・・

「えっ」

「・・・事故なの・・・」

「事故?」

衝撃の事実に驚いた・・・


「で、犯人は?」

「わからない・・・でも・・・」

「でも?」

「恨んでないよ・・・それが私の運命だったもの・・・」

「でも。何で自殺と・・・」

春香は一呼吸置いて、答えた・・・


「この村には、悪人はいない・・・って、話は知ってるね」

「うん」

「村の人たちが、その鉄則を守りたかったんだと思う」

「でも、それじゃあ・・・」

「この村は、出て行った人全ての、よりどころ・・・

そうでなくては、ダメなの・・・」

「春香・・・」

「秋介くん」

「えっ」

「だから、お願い・・・この村を嫌いにならないで・・・」

春香は顔は笑っていた・・・

でも、目は泣いていた・・・


このことは村のみんなも、当然春香のご両親も知っているだろう・・・

だから、追及はしないでおこう・・・


「でも大丈夫だよ」

「何が?」

「また、秋介くんとは会えるから・・・」

「・・・いつ・・・」

「60年は先がいいな・・・」

春香は、いたずらっぽく笑う・・・


「じゃあ、またね」


・・・目が覚めた・・・


数日後、春香の埋葬が行われた・・・

春香は、穏やかだった・・・

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春のかおり 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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