春のかおり

勝利だギューちゃん

第1話 前編

中学卒業後、俺は村を出た・・・

この村にも、高校はある・・・


でも、都会に出たかった・・・

どの道、殆どの若者は高校を出れば、

都会に出る・・・


なら少しでも、早い方がいい・・・


そう考えたからだ・・・


でも、わずか2年後に、この村に戻ってきた・・・

出戻りではない・・・


葬儀のためだ・・・


小中学と仲良しだった、女の子・・・


武藤春香(むとう はるか)


天真爛漫で、誰からも好かれていた・・・

周りに溶け込めなかった俺にも、声を掛けてきた。

最初はうざく思っていたが、だんだんと引き込まれていった・・・


恋とは違う・・・強いて挙げれば恩人・・・


その春香が、旅立った・・・

自らの意思で、あの世へと逝った・・・


その知らせを聞いて、俺はすぐに電車に飛び乗った・・・

知らせをしてきたのは、小中学校の、俺と春奈の共通の友人・・・


古川夏雄(ふるかわ なつお)


とても、ノリのいい性格で、友達が多かった・・・

力は強かったが、弱い者いじめはしなかった・・・

ただ、少し冗談がひどかった・・・


今度の事も、夏雄の冗談であってほしいと願った・・・

だが・・・春香の死は本当だった・・・


駅に降り立つと、夏雄が出迎えてくれた・・・

「久しぶり、元気だったか・・・」

「どうにか・・・な・・・」

前と同じように、明るく出迎えてくれたが、

やはり・・・寂しそうだった・・・


自殺の理由を訊いた・・・

この村には、いじめをするような人はいない・・・

失恋なんかで死ぬような、春奈は弱い子ではない・・・


すると何なのか・・・


春奈の家では、葬儀が行われていた・・・

みんな悲しそうな顔をして、泣いている・・・


みんな、俺の事を覚えていてくれた・・・

春香の両親も、礼を言ってくれた・・・


この村は、古くからのしきたりで、

今でも、土葬が行われている・・・


春香の遺体が埋葬されるまでの間、

春香のそばにいて欲しいとの、両親の申し出で、

春香の家に、厄介になることとなった・・・


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