第465話 ジョブホッパー⑤

「それで麻藤深夜はどうなったの?」


自分と麻藤深夜が同じ人間だったという感覚は全くないけど、何故か麻藤深夜がその後、どうなったのか気になっていた。


「……ここからの話は私が直接知っている訳ではなく、後々に調べて分かった事なのですが……お兄様は生まれつき魔眼という地球上には微かにしか存在しない【魔力】が見える特殊体質だったらしく、他人が見えない何かが見えていたらしいです。そしてその事を父親に話した事により気味が悪いと言われ、そのショックで誰にも魔眼の事を言わなくなったらしいです」


「地球に【魔力】があったのにもびっくりだけど、魔眼もあったなんて、ますます僕と同じだな」


それにしても、麻藤深夜の父親はとんでもない人だな。


自分と似てはいるけど、両親が全く違う点は大きいだろうな。


自分の両親は、自分に魔眼があると分かったら、魔眼の師匠を連れてきてくれたくらいだし、今思うと自分のやりたい事をやらしてくれていた気がする。


……なんか、両親にあって話がしたくなったな。


それで感謝を伝えたい。


「レイさんのルーツでもありますからね。それから、お兄様は12歳までは誰にも魔眼の事は言わなかったのですが、【魔力】が見えてしまうとやはり動きが普通の人とは違っていたので、変な子供と言われていたらしいです」


無能の次は変な子供か、可哀想に思えてきたな……。


「それから12歳の時、師匠となるシンディさんと出会い、【魔導術】を学んで一時は明るくなりました」


「ここでシンディさん? それにシンディさんが【魔導術】を? 【魔導】ってなんなのかな」


小さい頃から【魔導】を使っているけど、未だに【魔導】を使える人がいなかったので、謎スキルだったが、シンディさんが【魔導術】ってのを使えるのには驚きである。


「ああ、レイさんは【魔導】についてあまり知らないんですね」


「はい、周りに【魔導】を知っている人が全く居なかったので分からないです。僕以外では【魔導】関係を図書館などで調べた感じだと過去に【魔導王】という人が居たらしいんですけど、僕が生きていた時代には居たのかどうかは不明なんですよね」


「【魔導王】……? 【魔導】とは何なのか分からないという事は、私にもレイには説明する事が出来ない理由があるので、すいません……ですが、【魔導】とは異世界転生者のみが使えるとだけ伝えておきます」


「異世界転生者のみ……って異世界転生者は結構いるんですか?」


「レイさんの生きていた時代の事は分かりませんが、今の時代には一定数います。私も異世界転生者ですし、シンディさんは広い括りでは異世界転生者とも言えますからね。但し理由はこれも説明する事は出来ません」


「なるほど」


【魔導王】は絶対に異世界転生だとは思っていたけど、過去には異世界転生者が一定数いたのか。


まあ、もしかしたら自分がまだ世界について知らなかったからかもしれないけど。


「それで【魔導術】を覚えたお兄様は……ガッ、ガッ……ごめんなさい」


ん?


どうしたんだ?


突然、声が割れたというか、雑音が入った様な声になったぞ。


「どうしました?」


「どうやら、この身体を使うのも限界みたいです。この話の続きは私の本体がある【セントラルタワー】に行きたいのですが、どうですか?」

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