第463話 ジョブホッパー③

「玲奈がこれから来るから、話してくれ」


シンディさんが玲奈って名前の人と交信出来るって言ってから数分間、黙り始めたと自分とテレーザは見守っていたら、突然話だした。


このシンディさんは、人ではないからなのか表情がほとんど変化しないので、何を考えているのかさっぱり分からない。


シンシアとは眼以外は全く同じなのに、表情が違うだけで全くの別人なんだなと分かる。


「これから来るからって、近くに居るんですか?」


「いや、すぐだ……」


「え? すぐ?」


そんなに近くに玲奈って人がいたのか?


自分とテレーザは、この街に長年住み着いており、街全てを知ってる訳ではないが、近所にどんな人達が居るのか位は把握していたつもりだったけど、どうやら違ったみたいだな……と思っていたら、またシンディさんに変化が起きた。


「お兄様、お久しぶりです。玲奈です」


「え? シンディさん? え? 玲奈って?」


シンディさんの表情が先程の機械的な無表情から一転、人間味のある表情に変わったかと思ったら、今度は突然に自分の事をお兄様と呼びながらお辞儀して来た。


しかも、玲奈って名乗ったのだ。


「あれ? シンディさんは何も説明してないのですか?」


目の前のシンディさんは首を少し傾けながら聞いてきた。


そして、数秒のやり取りだが、今話しているのはシンディさんではなく、玲奈さんって人なんだなと理解した。


原理は分からないけど、イタコみたいな感じで玲奈って人がシンディさんの中に入ってきているんだなと思った。


「はい、すぐに玲奈って人が来るから宜しくとだけ……」


「はぁ〜、なるほど……分かりました。それでお兄様は私の事が分かりますか?」


「いや、全く……それに何でお兄様って読んでいるかすら分からない」


「ああ……そんな状態なんですね……という事は……なるほど……」


玲奈さんは一人で頷きながらブツブツと話し始めた。


「レイ……彼女は変わった人みたいですね……」


テレーザがヒソヒソと話してきた。


「うん、それは僕も分かったよ」


「ふふ、私はよく変わってるとは言われましたが、お兄様にも言われるとは思いませんでした……あ、今は名前が違うのですよね? 名前を聞いても良いですか? 私は麻藤玲奈……麻藤深夜の妹です」


「あ、僕はレイ。こっちはテレーザです」


「レイさんにテレーザさんですね。宜しくお願いします。それでは、何から話しますか……」


「あの、それで何で僕がお兄様なんですか?」


「それは、レイさんの前世……というよりも地球でのレイさんがお兄様だったのです。レイさん的には遥か昔の出来事ですから、記憶には無いかもしれないですが……」


「なるほど……確かに僕には地球での記憶は知識しか無いんだけど……玲奈さんには記憶があるのに、僕にはないのは何でだろ? それに遥か昔って言っても、18年位前の話じゃ?」


こっちに転生してから18年だから、兄弟を忘れる筈は……あれ?


そう言えば、転生直後から家族や知り合いの記憶とか、何をしていたかとか忘れていなかったか?


「その辺は【ジョブホッパー】のスキルに関わってくるので……そうですね、私やお兄様の話から始めましょうか」


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