第460話 シンディ・ハーバル

自分とテレーザは、シンシアに瓜ふたつなシンディ・ハーバルを連れて家に帰ってきた。


「はぁ……今日は疲れたね」


ここ最近は今日みたいな命をかけるレベルの激戦はなかったから、心底疲れた。


「そうですね。私は途中から勝てないかと思いましたよ」


「うん、僕も魔導レーザーで無傷だった時は、終わった……と思ったよ。だけど、運が良かったのか、あの金ピカ外装自体が呪われていたみたいで、僕の【魔喰】と【深淵魔導術・地獄門】が通用して良かったなと思うよ」


【魔喰】と【深淵魔導術】は自分の切り札であり、諸刃の剣でもある。


まだ使いこなせていないし、アレで決着が付かなければ、自分達は家に帰って来れなかっただろう。


「そうよ! 【地獄門】を使ってたけど、大丈夫なの!? それに呪いも喰ったでしょ!!」


テレーザは思い出したっ!という感じで自分に詰め寄ってきた。


「うっ……」


「勝てたとしても、レイがボロボロになったら意味無いんだからね? わかる?」


「ごめん」


「ううん、レイだけが悪いわけじゃないし……私達の実力が足りなかったのが悪いのよ。はぁ……明日からまた修行のやり直しね……レイが【魔喰】と【深淵魔導術】を使わなくて良いくらいに強くならなきゃ」


「うん、そうだね。強敵に備えて準備していたものは、ほとんど使い切っちゃったし、またやり直さないとね……あ、でも明日は休みにしよう。たぶん、明日は全身ボロボロだから動けなくなりそう」


自分は【魔導の福音】効果により不死になったし、傷もあっという間に治るけど、限界を超えた治癒力を使ってしまうと、反動で次の日は動けなくなってしまうのだ。


「それは仕方ないわね……それはそうと、シンシア……じゃなくて、シンディさんをどうするの? もし戦闘になったら、今の私達じゃ勝てないかもよ?」


テレーザは、ベットに拘束具でぐるぐる巻にされている彼女を見ながら言う。


「目覚めたら話を聞いてみるけど、たぶん戦闘にはならないと思うよ。【鑑定眼】で調べた時に【脅威度】が表示されなかったから、敵意みたいなものが無いんじゃないかな」


【脅威度】は魔神族ならば確実に表示されるが、それ以外にも自分達に喧嘩を売ってきたりした者にも表示されたりするから、自分達に敵意があるか無いかを示しているんじゃ無いかなと考えていた。


「それなら安心ね……何度見てもシンシアにそっくりね。違うところと言ったら背が少し高い位かしら?」


「ああ、確かにシンシアがちょっと成長したみたいな感じだね」





戦闘が終わってから6時間後、シンディさんが目覚める。


「おはよう。僕はレイだけど、黄金の鎧を着ていた時の記憶はあるかな?」


「……」


シンディさんは、目覚めはしたが反応が無いな……それどころか天井をぼっーと見つめているだけで、まるで人形みたいな印象を受ける。


あと、目覚めた顔を見て初めて分かったが、シンディさんの瞳の色は虹色に輝いていた。


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