第446話 ジュピリアス防衛戦③

「ふぅ、まだまだ貯まらないな……」


自分とテレーザは戦場から離脱したあとは、家に戻り【時間加速装置】に魔神族から抜き取った【魔結晶】をボトボトと入れていった。


「う〜ん、メモリはまだ1割にもいってないですね」


テレーザは【時間加速装置】に取り付けてあるチャージメーターを見てガッカリする。


「かなりの数を投入したんだけど……やっぱり【魔結晶】の品質が低いからかな……」


今日だけでも倒した魔神族は20体を超えていた。


それなのにチャージメーターが全く貯まらないのは、品質のせいだろうなと考える。


【時間加速装置】5メモリを消費し、1回起動させると装置3m以内の全ての物を時間加速させる。1回の加速時間は10年。


【魔結晶】高濃度圧縮真素結晶体。圧縮比率は個体差有り。


自分はこの世界が自分達が生まれた世界よりも遥かに過去であるという事実を突き止めたので、時間を強制的に加速させる【魔導具】を作り出すのに成功させたまでは良かったのだけど、問題は時間加速させる為のエネルギーに膨大な真素が必要になり、【時間加速装置】に標準装備させた自然に漂う真素を吸収してチャージするシステムだけに頼ると、1メモリチャージするのに約50年もかかる事が判明した。


10年の時間加速させるのに50年かかるっていうのは完全な欠陥なのだが、これでもまだ成功品なんだよな……。


酷い欠陥品は300年かかるものもあった位だからな。


そんな訳で、代わりに魔神族のコアとして使われている【魔結晶】に目をつけたのだ。


この【魔結晶】は未来であった【魔結晶】と同じ名前だけど中身が全くの別物で、どうやら【鑑定眼】はその時代にあわせて鑑定結果を表示してくれるのが分かった。


18年も使っている【鑑定眼】だけど、未だに謎だらけだなと思う。


「あの魔神族でも本来なら街が決死の覚悟で挑むレベルみたいですから、あれ以上のは滅多に現れないし、それを隠れて狩るのは難しいと思うわよ……」


「そうなんだよね、今回の魔神族で脅威度は約3500~6000位だったけど、普通の冒険者や騎士団員では脅威度500程度ならソロでやっと倒せるってレベルだからな……あのサテラから【魔結晶】を抜き出してれば……今頃は目的値に達していたかもしれないのが悔やまれるね」


あの8年前に襲撃してきたサテラは予測だけど無傷状態ならば脅威度が60000は超えていただろうと予測出来た。


だけど、あの時はまだここが過去の世界だなんて知らないし、【時間加速装置】も無いから【魔結晶】を必要とすらしていなかったから仕方ないんだけどね。


「気長にやるしかないわね。何で過去に飛ばされたのかやここが何年前の過去かすら分からないしね……」


「そうだね」


ここが過去の世界って解ったのも、様々な情報を集めていたら、そもそも世界の年号が違うという根本的な違いに気づいた。


今の年号が魔導歴2341なんだけど、自分たちがいた世界の年号は正確には分からないけど獄歴1200位だった気がする。


何で年号が正確に分からないかと言うと、自分たちのいた世界では年号が普及しておらず、貴族や王族位しか気にもしないからで、元貴族のテレーザが微かに知っていたのが獄歴500位だったのだ。


だから最低でも500年以上は過去に飛ばされており、【時間加速装置】を使っても気休め程度にしかならないのは分かっていたが、何か目標は欲しかった。


そして自分とテレーザは、様々な目標を掲げて日々を頑張って生きていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る