第439話 絶望からの絶望

「はっ!?」


自分は目覚めると、定まらない視点の中、真っ白な天井が見えていた……。


ここは何処だ?


遂にあの監禁から解放されたのか?


自分は真っ白な天井から視点をずらし、周りに移してみると、どうやら此処は個室の病室らしい。


何だか古臭い雰囲気はあるが、個室で広く、どことなく豪華な部屋な気もする。


あれから何年が経ったんだ……?


自分は状況を確認する為に身体を動かそうとしたが、少し腕を動かそうとしたしただけで激痛が走った……


「イッ……」


やっぱり何十年も身体を動かさなかったから、神経とか駄目になったのか?


しかし、何故か絶望感は無く、全能感と枯渇することは無い復讐心があった。


自分達をこんなにしたやつらに復讐するためには、まずは身体を治さないとな……


そして、今が西暦何年なのかを確認しなくちゃな。


病室の中には時計や変な絵などはあるけれど、カレンダーが無かった。


しかし、病室には点滴や医療機器みたいなものも無いし、身体が動かないにしては、治療中という雰囲気でもないから、自分がどういう状況なのかが不思議だった。


何か手がかりになるものは無いのかな……


自分は眼球の動く範囲内のものは隅々までチェックしていると……


ピコンッ!


ふぁあ!?


【魔導の眼の熟練度が0.1上がりました】


ん?


自分の視界より少し手前に半透明なパネルが表示され、魔導の眼の熟練度が上がったって書いてあった。


自分に魔導の眼が?


魔導については師匠からある程度の指導は受けていて、魔導の眼に関しても教わっていたが、自分が魔導の眼を持っているという事実を素直には受け入れる事は出来なかった。


魔導の眼とは、魔導継承者が持っている魔導を扱う為に必須とされるものだが、師匠の話では世界に一人しか持つことが出来ないもので、それはもう師匠がいないという意味で……


そしたら、ここは過去では無いのか?


分からないな……


時間にしたら短いのかもしれないが、放心状態のまま時間が過ぎていった。





自分は放心状態のまま天井を見つめていた……


すると、次第に白い天井に黒いモヤのようなものが見えているのに気がついた。


ピコンッ!


【魔導の眼の熟練度が0.1上がりました】



それに突然現れた半透明なパネルは何なんだ?


触りたくても身体が動かせないからどうにも出来ないぞ。


あっ、もしかしたらこれが覚醒者の言っていたゲームみたいなものなのか?


しかし、自分は覚醒者ではなく、能力者の筈なんだけど……監禁されている極限状態で覚醒者にもなったのか?


とりあえず、覚醒者ならばステータス表が出る筈だ……


自分はステータス表がでろ!と強く念じた。


ピコンッ!


ーーーーーーーーーーーーー


 名前・麻藤 深夜(3歳)

 状態・魔力過剰症

 属性・深淵

 クラス・アベンジャー

 種族・人族

 能力値 力 3 器用8 速さ3 

     知力8 魔力80 呪力7

     魔導力3

 カルマ値・0

 ジョブ値・4/10000

 パッシブ・復讐、??の呪い

 アクティブ・魔導術、呪殺術

 ユニーク・魔導の眼、久遠の欠片

 称号・??の使徒、????の弟子

    輪廻転生者、時空超越者

    復讐者、獄罪人、深淵適性者

    AS接続者


 ーーーーーーーーーーーーー



「は?」


ステータス表が出たのは良いけど、何だ?このステータスは。


突っ込み処が多過ぎるが、今一番気になるのは……3歳?


40代で拉致監禁されてから数十年は経過している印象だったから、年齢は50代後半以上にはなっていると覚悟していたのに、何で若返るんだ?


しかも、3歳って!?


それに魔力過剰症か……。


魔力過剰症とは、覚醒者やダンジョンなどがこの世界に現れたのと同時期に現れた病気で、一般人が魔力を過剰に体内に溜め込んでしまうもので、普通の人ならば空気みたいに勝手に体内を通過するので、問題にはならないが、魔力過剰症の人には魔力は必要なものだと身体が間違えで、魔力を体内に蓄積し、限界を超えた時点で身体が痺れたり意識を失ったりする病気だ。


そして、魔力過剰症を治すには覚醒者になるか、ダンジョンで取れる吸魔系のアイテムか、それに類するスキルを使うことだから、治そうと思えば不可能では無いが……治す手段に対して、魔力過剰症の人が多すぎて、自分が拉致される前は1億人以上はいると言われていて、覚醒者以外の人なら年齢問わず、不意に発症する恐ろしい病気だった。


さっきから身体が全く動かないのは、魔力過剰症の末期症状だからなのか……?

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