第438話 輪廻

拉致されてから何日が経過したのだろう……


両手は後ろで何かに縛られ、足も金属みたいなもので拘束され、頭には常に隠されているので何日が経過してるのかよく分からなかった。


食べるのは与えられず、変な味の飲み物だけを袋越しに飲まされるだけだった。



ドゴッ!


バギッ!


そして、定期的に殴られたり蹴られたりしていた。



「も、目的はなんなんだよ……」


拉致したやつらは俺に何かを聞きたいとかは無く、ただ拘束しながら暴行するだけなので、俺が拉致された理由がさっぱり分からなかった。


考えられるとしたら、玲奈を脅迫する為か?


それなら考えられるけど、今までこんな事は一度もなかったのに、何故今更?





更に数日が経過した……


相変わらず食事は貰えず、変な味の飲み物だけを飲まされていた。


お腹が空き過ぎて何も考えられなくなってきた……


人間って水分だけで何日も生きていけるって本当だったんだな……


最近では身体を動かす体力も無いので、1日中ずっと身動き1つ取らず、ただ息をしているだけの状態になってきたので、流石に暴行してくる事は無くなっていた。




おかしい……


多分、監禁されてから1ヶ月以上経過しているのに、相変わらず変な味の飲み物だけで生きている。


長く監禁され過ぎて頭がおかしくなったのか?


そして、数日前から空腹感は無くなり、妙に思考がクリアになってきた気がする。


例えるなら、自分ではない人格が苦しんでいるが、もう一人の自分はその状況を客観的に見ていたりする感覚で、自分であって自分ではない感じだ。


それにしても、自分を監禁しているやつは何が目的で、誰なんだ……


思考がクリアになった事により、自分を監禁しているやつがどんどんと憎くなっている。


もし、この状況から抜け出せたら絶対に復讐をしてやる!





更に3か月以上が経過した。


もう、あの怪しげな飲み物すら飲まなくても死なないし、喉の乾きも薄れて来たので、変な味の飲み物を飲むのを拒否した。


自分の身体はいったいどうなってしまったのだろうか?


水分や食べ物を摂取しなくても全く平気になってきた。


まあ、手足は縛られ、数カ月動いていない状態は異常な状態ではあるが……


そう言えば、仙人は霞を食べて生きていけるんだっけ?


しかし、今の自分は仙人とはかけ離れた精神状態で、復讐心が全てになっていた。


こんな状況にさせられているのは、全て拉致監禁した奴なのだから、抜け出す事さえ出来れば全てをなげうってでも何十倍にして復讐してやると考えていた。






あれからどれ位の時間が過ぎたのか分からない。


身体も既に動くかすら分からない。


思考だけが存在している感じだろうか。


無限に思えるまっ暗闇……


なんでこんな事になったのかばかり考えてしまう。


そして、この考えの行き着く先は、必ずこの元凶に復讐してやるということだ。


貴志の濡れ衣をきせたやつ、エリを襲ったやつ、自分を監禁しているやつは、この短い間隔で起きた事件にはなにかしらの関連はある筈だ。


ならば、復讐するやつらも似たようなやつらになるだろう。





……復讐してやる。

……復讐してやる。

……復讐してやる。

……復讐してやる。


……してやる。




【復讐心に耐えきれず、久遠の欠片が覚醒状態になります】


【久遠の欠片はASへの侵食を開始します……】


【ASに妨害されました……】


【2回目のASへの侵食を開始……】






【9547308回目のASへの侵食を開始……】


【ASへの侵食に一部成功……】


【多次元時空魔導の使用が可能になりました】


【久遠の欠片はターニングポイントを検索中……】


【該当ポイントが1568ヶ所……最適ポイントを計算中……】


【……より強制介入を感知……抵抗不可……】


【……】


【……最適ターニングポイントへ再輪廻開始】






「はっ!?」


自分は目覚めると、定まらない視点の中、真っ白な天井が見えていた……。


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