第437話 深夜の決意

「私達と覚醒者……ううん、この世界の人達とは似ているようで全てが違うの」


「すべてが違う?」


師匠はたまによく分からない言い方をしたりするんだよな。


自分や師匠は特殊だって意味なのかな?


「この世界で魔導は異質であって、交じる筈のなかった世界、魔導は償いであり罪を乗り越えた証、そして深淵に馴染み、無限の輪廻を課せられた使徒……って、意味が分からないよね。いつか深夜にも解る時が来るよ」


「解る時が来るんですかね?」


何一つ分からないんだけど……


師匠はいつも自分に何かを教えようとしている時があるんだけど、自分の理解力が無いからなのか、さっぱりなんだよな。


「そう言えば、深夜くんはこのあと予定ある?」


「予定というか、貴志の家族に会ってこようかなと思っていますけど……」


貴志の家族には長い事会ってないが、親友として何か手伝える事は無いかなと考えていた。


「あ〜、あの家には貴志くんの依頼で家族を護る結界とか監視が付いてるんだけど……」


師匠がなんだか歯切れの悪い感じだけど、何か問題があるのかな?


「何かあったんですか?」


「……貴志くんの息子は見た事あるよね?」


「はい……とは言っても10年位前ですけどね。名前は龍二くんで……今は18歳位ですかね?」


「うん、その龍二くんなんだけど、性格にちょっと問題があってね。貴志くんが厳しかったからか、家族の前では良い顔していたんだけど……裏ではかなり問題を起こしていたんだよね。そこに加えて世間では貴志くんが裏切者みたいな感じにされてるのを利用して、貴志くんから虐待されていたとか言って世間から同情を集め、祖父の後継者になろうとしてるらしいよ」


小さい頃は真面目そうな可愛い子供だったのに……


「そんな感じに成長してるんですか……なら俺が行って……」


「今は行かないほうが良いと思うよ。ただでさえ龍二くんから嫌われてたのに」


「えっ、なんで嫌われるんですか?」


そんな嫌われる事をしたかな?


「う〜ん、龍二くんは典型的な覚醒者上位種主義でね、覚醒者ではない人を下に見る傾向があってね、深夜くんは覚醒者でも無いのに貴志くんと仲がいいのが嫌だったらしいよ」


「そうなんですか……」


「行くにしても時間を少し開けたほうが良さそうだよ」


覚醒者上位種主義は覚醒者の中にかなりの数がいるらしくて、普通の未覚醒者を無能者と蔑んでるんだよな。


師匠の話を聞く限りは、行かないほうが良いらしいけど、どうしようかな。


「師匠の言う通り、時間を少し開けてからにします」




4ヶ月後……



ドゴッ!


バギッ!


「ぐっ……」


いったい何なんだよ……


俺は仕事から帰宅中、何者かに拉致され、頭に頭陀袋を被らされ、どこか分からない場所に監禁され、何を言ってるのか分からない言葉で暴行を受けていた……


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